俳優の岸井ゆきのが6月1日、都内で行われた『第35回日本映画批評家大賞』授賞式に登壇。主演女優賞を受賞した。

映画『佐藤さんと佐藤さん』は、岸井ゆきの宮沢氷魚がダブル主演を務め、天野千尋が監督を担当したオリジナル作品である。本作は、「夫婦」という普遍的なテーマを軸に、人と人との関係性を繊細かつ現実的に描いている。

物語は、同じ「佐藤」という苗字を持つサチ(岸井ゆきの)とタモツ(宮沢氷魚)の15年間の歩みを追う。二人は交際、結婚、出産といった人生の節目を経験しながら、夫婦としての関係を築いていく。苗字は変わらなくとも、夫婦という関係性は常に変化し、ときに衝突や葛藤を伴いながら揺れ動く。本作は、その過程を丁寧に描くことで、現代における夫婦のリアルな姿や、多様な夫婦のあり方に迫る作品となっている。

本作で幅広い年代のサチを演じた岸井ゆきのは、「それぞれの年齢を描く時間は限られているものの、その短い場面の中に豊かな情報量と高い表現力が凝縮されていた」と評価され、受賞を果たした。受賞に際し、岸井は監督やスタッフへの感謝を述べるとともに、作品への思いを語った。

撮影を振り返った岸井は、「限られたシーンの中で、年齢を重ねる変化をどのように表現するかを常に意識していた」と明かし、ワークショップなどを通じて試行錯誤を重ねたという。また、「断片的に描かれるサチの人生だからこそ、一つひとつの場面により深みを持たせたいと考えながら演じていた」と語った。

さらに、エンディングシーンにまつわるエピソードとして、当初は自身が一人で歌う予定だったものの、演出上の理由から実現しなかったことを説明。その結果、一部に宮沢氷魚の歌声が用いられたという。岸井は、この場面について「さまざまな感情があふれ出る印象的なシーン」と振り返り、完成した映像を見た際には「映像ならではの不思議な力を感じた」と感銘を受けたことを明かした。

■『第35回日本映画批評家大賞』結果(※複数受賞は五十音順で表記)
◆作品賞:『愚か者の身分』(永田琴監督)
◆監督賞:永田琴監督『愚か者の身分』
◆主演男優賞:北村匠海『愚か者の身分』/吉沢亮『国宝』
◆主演女優賞:岸井ゆきの『佐藤さんと佐藤さん』
◆助演男優賞:横浜流星『国宝』
◆助演女優賞:二階堂ふみ『遠い山なみの光』
◆ドキュメンタリー賞:『みらいのうた』(エリザベス宮地監督)
◆アニメーション作品賞:『ChaO』(青木康浩監督)
◆新人監督賞:小島央大監督『火の華』
◆新人男優賞(南俊子賞):林裕太『愚か者の身分』
◆新人女優賞(小森和子賞):南琴奈『ミーツ・ザ・ワールド』
◆脚本賞:熊谷まどか・天野千尋『佐藤さんと佐藤さん』
◆編集賞(浦岡敬一賞):大川景子『旅と日々』
◆松永文庫賞(特別賞):NPO法人メディア・アクセス・サポートセンター
◆ゴールデン・グローリー賞(水野晴郎賞):田中泯『国宝』
◆ダイヤモンド大賞(淀川長治賞):長塚京三『敵』

『第35回日本映画批評家大賞』
各受賞タイトル・受賞者決定!6月1日(月)授賞式開催

1991年に水野晴郎が発起人となり、淀川長治、小森和子といった当時第一線で活躍した映画批評家たちによって設立された、映画人が映画人に贈る賞として日本では他に類を見ない映画賞「日本映画批評家大賞」。2025年公開の⽇本映画作品の中から、映画批評家たち選考員の独自の視点によって厳密に選定した、今年の日本映画批評家大賞の各タイトル・受賞者が決定した。

今年もバラエティ豊かな日本映画作品のなかから、映画のプロの目線で厳密に選定された日本映画批評家大賞の各タイトル。2025年公開作品の中で最も優れた映画作品におくられる「作品賞」、すぐれた演技で見る者を魅了した俳優におくられる「主演男優・女優賞」および「助演男優・女優賞」、日本映画の未来を担う俳優におくられる「新人賞」、卓越した映画技術が光った各「技術賞」や、作品・個人のみならず映画に貢献する映画事業から劇場や文化拠点まで幅広く授与対象とする「特別賞」、往年の功績を称えるとともに、さらなる活躍を期待する「ゴールデン・グローリー賞」、「ダイヤモンド⼤賞」など、本年度は16賞17組に授与する。

今年の第35回日本映画批評家大賞のテーマは、「問うたびに、深くなる輝き。」で、キービジュアルが完成した。

日本映画批評家大賞タイトルには、女流映画評論家の第一人者である南俊子賞(新人男優賞)、小森和子賞(新人女優賞)、編集技師の名匠・浦岡敬一賞(編集賞)、北九州市の映画・芸能資料館設立者である松永武氏の名前を冠した松永文庫賞(特別賞)、日本映画の伝道師・水野晴郎賞(ゴールデン・グローリー賞)、日本映画批評家界の巨匠・淀川長治賞(ダイヤモンド⼤賞)、など、賞タイトルに名前を冠し、映画を愛し貢献した映画人を表敬している。