映画『コロニー/群体』の第39回東京国際 映画祭クロージング上映舞台挨拶が11月4日、東京・丸の内ピカデリー2で行われた。ヨン・サンホ監督、プロデューサーのヤン・ユミン氏、出演するク・ギョファンが来日し、日本語吹替版キャストの奈緒、梶 裕貴とともに登壇。日本初上映を前に、作品への思いや製作の舞台裏を明かした。

ク・ギョファン、出演決定に「片思いがかなったような気持ち」

 『新感染 ファイナル・エクスプレス』を手がけたヨン監督は、今年、日本で『顔 -かお-』やNetflixシリーズ「ガス人間」を紹介できたことに触れたうえで、「『コロニー/群体』は多くの国で公開されていますが、日本で公開される瞬間は本当に特別だなと思っています」と新作の日本初上映を喜んだ。

製作でこだわった点について、ヤンは「やはりゾンビの表現」と回答。建物に閉じ込められた生存者の恐怖を観客がどう体験するかを考え、アクションからサウンドまで気を配ったと振り返り、「新しいゾンビの形がこの映画で見られます」と注目を促した。

 物語の鍵を握る生物学者ソ・ヨンチョルを演じたクは、企画段階であらすじを聞いてからは「どんな役でもご一緒したい」と願っていたという。脚本完成後に役を提案されたときは「奇跡のようなことだと思った。そして、片思いがかなったような気持ちでした」と回想した。役に向き合う中では「演技したというよりは、隣で彼(ソ・ヨンチョル)を見守っていた気分でした」といい、演じながら恐怖を覚えたこともあったそうだ。一方、ヨンチョルが問題のある人物になった背景に思いを馳せると、「心が辛くなったりもしました。なおさら皆さんの感想が気になっています」と、観客の反応にも関心を寄せた。

 ヨン監督も、ヨンチョルを「つかみどころのない、非凡な人物」と表現したうえで、「非凡な俳優が演じるべきだと思い、すぐにクさんにこのキャラクターをオファーしました」と明かした。

 奈緒が韓国語で感謝 梶 裕貴は「僕だけ置いてけぼりかなって」

 チョン・ジヒョン演じるクォン・セジョンの日本語吹替を担当した奈緒は、初めて作品を観た際、「新しいゾンビが誕生したと、とても感動しました」と振り返った。ヨンチョル役の吹替を務めた梶は、感染者の素早く迫力ある動きと対照的な、クの繊細な芝居に言及。「顔の表情の微妙な動き、息遣いまで注目いただけると、ヨンチョルのキャラクター性を感じられると思う」と見どころを挙げ、「大きなスクリーンで、ク・ギョファンさんの表情を隅から隅まで見ていただければ」と呼び掛けた。

 本作が日本語吹替初挑戦となった奈緒。「(ヨン監督と)このような形でご一緒できるんだと、不思議な多幸感に包まれておりました。初めて挑戦した日本語吹替がこの『コロニー/群体』という作品で、本当に幸せです」と喜びを噛み締め、韓国語でも直接思いを伝えた。ヨン監督とクは日本語で「ありがとうございます……!」と頭を下げ、その言葉を受け止めた。

 クからは「もし奈緒さんが出演された作品が韓国で公開されることになったら、ぜひ奈緒さんの声を吹替でやらせていただきたい。その気持ちは梶さんに対しても同じです」と申し出があり、梶も「カムサハムニダ」と韓国語で返した。

 ヨン監督は、日本で『顔 -かお-』が特別上映された際、偶然にも奈緒と会って話をしたエピソードを紹介。その後、奈緒が本作の日本語吹替を務めることが決まり、「不思議な縁だなって思います」と感慨をにじませた。自身が手がけるNetflix作品では日本語吹替版も観ているそうで、「こちらについても、日本語吹替版を観てみたいなって思います」と期待を口にした。

 ここで司会者が通訳の方へ、奈緒の韓国語のメッセージを日本語でも紹介するよう促すと、梶が「僕だけ置いてけぼりかなって。みんな楽しそうだなって……!」とそれまでの心境を打ち明け、観客を笑わせた。奈緒は「そうですよね……! 私が日本語で言いますね」と応じた。通訳が訳を書いたボードを借りると、クがボードを一緒に持って支える気遣いも見せた。奈緒は改めて「皆さん、日本に来ていただき、ありがとうございます。初めての日本語吹替のお仕事がこの 映画で、とても幸せです。初めてだったので不安も大きかったんですが、セジョン役のチョン・ジヒョンさんの演技に、すごく勇気をいただきながら、収録させていただきました。また一緒にお仕事できるように頑張ります!」と、日本語でメッセージを伝えた。

日本の漫画・アニメへの思いで意気投合 梶は“新幹線で『新感染』”を鑑賞

 話題は、ヨン監督の原点でもあるアニメーションへ。「日本の漫画、アニメーションをとてもたくさん観ながら育ってきた」と、影響を受けた人物に辰巳ヨシヒロの名を挙げ、「この方は、日本において劇画漫画の創始者といわれている方です」と紹介した。また、大好きな監督である押井 守の新作『装甲騎兵ボトムズ 灰色の魔女』にも期待を寄せた。すると梶が、今月公開される同作に自身も出演していると明かし、「よければそちらもご覧いただきたいですが、今日は『コロニー/群体』の舞台挨拶です(笑)」とひと言。日本のアニメーションに携わる立場から、監督の言葉を喜んだ。

 さらにこの日監督に会うにあたり、前日の大阪遠征で乗った新幹線の車内で『新感染 ファイナル・エクスプレス』を観たエピソードも披露。「臨場感がすごかったので、おすすめです」と、作品の舞台と重なる環境での鑑賞を勧めた。「話はそれましたが(笑)」と話を戻し、「監督の映画からは、日本のアニメーションに通ずる魅力といいますか、アニメーションにしても絶対に面白いんだろうなという世界観を感じております」と作品への思いを語った。「進撃の巨人」にも触れ、「僕のご縁のある荒木哲郎監督の世界観とすごく合うんじゃないかと思うので、どこかで対談してほしいなと思いました」と期待を膨らませた。

 最後にクは、鑑賞後の帰り道にも触れ、観客に向けて「歩いて『コロニー/群体』についてお話しするのもいいのかなと思います」と提案した。さらに「この作品は本当に楽しい 映画です。それと同時に、たくさんのことを考えさせてくれる作品でもあります。どうか皆さん、楽しい時間をお過ごしください」と観客へ呼び掛けた。

 この日のクは、トーク中も客席へ手を振り、ファンサービスを欠かさなかった。フォトセッションでは、ファンが持っていたヨン監督の顔写真入りメッセージボードを自ら受け取りに行き、ボードを手に撮影に応じた。さらに一度退場した後、出口とは反対側の客席へ駆け寄り、メッセージカードを受け取る姿も。最後までファンとの交流を大切にし、イベントを盛り上げていた。

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