『シンプル・アクシデント/偶然』7ヶ月間の獄中体験が映画のもとに-ジャファル・パナヒ監督インタビュー映像
第78回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞し、第98回アカデミー賞では脚本賞と国際長編映画賞にノミネートされた『シンプル・アクシデント/偶然』のジャファル・パナヒ監督のインタビュー映像が解禁されました。
かつて不当に投獄されたワヒド(ワヒド・モバシェリ)は、ある偶然の事故によって、人生を奪った残忍な看守と出会う。ワヒドは咄嗟に男を拘束、荒野に穴を掘って埋めようとするが、男は「人違いだ」と言う。実はワヒドは、看守の顔を見たことがなかった。男は、本当に復讐相手なのか?一旦復讐を中断し、看守を知る友人を訪ねるが──。
2010年、イラン政府への反体制的姿勢を理由に映画制作および海外渡航を20年間禁じられ、違反した場合は禁錮6年という有罪判決を受けていたパナヒ監督。彼が自由を取り戻して最初に手がけた本作は、2025年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門で上映され、イラン映画としては28年ぶりとなる最高賞〈パルムドール〉を受賞。本映像は、その記念すべき映画祭の場で収録されたものです。

制作前、刑務所に約7カ月間拘束されていたというパナヒ監督。「刑務所にいた間、私たちにはやることがほとんどなく、他の受刑者たちの人生や経験談を聞いたり話したりしていた」と振り返り、「釈放後も彼らとの強い絆を感じ続けていた」というその経験が本作の着想へとつながったと明かしています。本作の重要なテーマのひとつである「拷問された側が拷問者を捕まえたとき、どのような行動をとるのか」という問いにも触れつつ、「テヘランでひそかに撮影した」という制作背景についても言及。
これまでも数々の制約の中で続けてきた映画制作について「制限は撮影場所や作業量に影響を及ぼすが、それはどの作品にも共通すること」と冷静に語る場面も。そして「この物語を通じて役人の姿を知り、その声にも耳を傾ける」という視点について問われると、「映画はこの不健全な制度を非難しています。何も正常に機能していない」「このような状況に身を置く者であれば、誰であれ必然的に汚れてしまう。正常な形を成していない体制下では、次の人も同じことを繰り返すのです」と返し、「次の計画について考えていますか?」という質問には、「いつも次の計画を練っている」と、困難な状況下にあっても衰えることのない創作意欲をのぞかせています。
なお、2025年12月にはアメリカでのプロモーション活動中だったパナヒ監督に対し、イランのイスラム革命裁判所が「反体制プロパガンダ活動」を理由に欠席裁判で懲役1年を宣告。さらに2年間の渡航禁止、政治・社会団体への参加禁止といった厳しい措置が科されるなど、依然として厳しい状況が続いています。

『シンプル・アクシデント/偶然』(英題:It Was Just an Accident)
監督・脚本:ジャファル・パナヒ
出演:ワヒド・モバシェリ、マルヤム・アフシャリ、エブラヒム・アジジ、ハディス・パクバテン、マジッド・パナヒ、モハマッド・アリ・エリヤ
2025年/フランス・イラン・ルクセンブルグ/ペルシャ語/103分/日本語字幕:大西公子/字幕監修:ショーレ・ゴルパリアン
日本公開:2026年5月8日(金)、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国公開
配給:セテラ・インターナショナル
協力:ユニフランス
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