『左利きの少女』一般試写会舞台挨拶
『左利きの少女』一般試写会舞台挨拶
日付:8月4日(火)
場所:ヒューマントラストシネマ渋谷
登壇:ツォウ・シーチン監督
MC:伊藤さとり
第77回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールに輝き、米・アカデミー賞作品賞など5部門を受賞した『ANORA アノーラ』(24)でインディーズ映画界を熱狂させ、時代の寵児となったショーン・ベイカー。その彼と大学生時代に出会い、『テイクアウト』(04)で共同監督デビュー、以降はプロデューサーとして『タンジェリン』(15)、『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(17)、『レッド・ロケット』(21)などで彼を支えてきたのが、本作で満を持して単独監督デビューを飾った台湾出身のツォウ・シーチンだ。
第98回アカデミー賞®︎国際長編映画賞<台湾代表>に選出され、同賞の最終候補15作品にリストイン、第26回東京フィルメックスでは観客賞を、第20回ローマ国際映画祭では最高賞を受賞するなど、世界でも広く支持を集めた。
この度、本作の日本公開を記念して、ツォウ・シーチン監督が来日。一般の観客を対象とした試写会の上映後に登壇し、舞台挨拶を実施いたしました。
監督の実体験から制作された本作ですが、ショーン・ベイカーと20年以上温めていた構想だったお話や彼との出会い、これまでのコラボレーションについて、実際にある台湾の夜市をはじめ全編iPhone で撮影した制作秘話などたっぷりお話しいただきました。
本作の出発点は、監督自身の実体験に基づくものだというが、その点について質問されたツォウ監督は「わたしが幼い頃に左利きでナイフを使っていた時に、祖父から左利きは悪魔の手だから使うなと言われたことがあったんです。その経験、その記憶のかけらが残っていたので、ショーン・ベイカー監督にその話をしたら、それは映画のアイデアになるんじゃないかと言われてはじまりました」とそのきっかけを明かした。

2004年にショーン・ベイカーとの共同監督作『テイクアウト』を発表して以来、本作がツォウ監督にとって初の単独監督作品となったが、「もちろん監督の道のりはトライしてきましたが、『テイクアウト』をショーンと共同監督した後は、ショーンの作品の製作に携わっていたんです。ですがやはりアメリカでは、外国映画への出資にはなかなか興味を持ってもらえることはなかったんですけど、『レッド・ロケット』でカンヌに行った時に、配給の方が興味を持ってくれて今回、形になりました」と続けた。
また本作で脚本、編集、製作にクレジットされているショーン・ベイカー監督の役割について「まずこのアイデアを思いついた2001年に一緒に台湾に来てもらいました。その時は、自分の記憶から映画がつくれるのかと模索していたのですが、まだふたりとも映画経験が浅かったので、まだ形にする方法を見出せなかったんです。その後、『テイクアウト』を共同監督して、2010年の段階であらためて台北に渡りました。ふたりで一カ月滞在して、脚本を書こうとしたんです。そこで、夜市を舞台にしようと決めました」と語った。
本作は全編iPhoneで撮影されているが、実はかつて 映画『タンジェリン』でショーン・ベイカー監督にiPhoneでの撮影を勧めたのはツォウ監督だったという。iPhoneでの撮影が本作にもたらした効果について、「もともと今回の作品をリアルな台湾の夜市で撮りたいと思っていたけど、まわりから夜市での撮影は無理だよと言われたんです。夜市で撮影をする場合、セットを建て込まないといけないし、エキストラも用意しないといけない。でも『タンジェリン』を撮った時からiPhoneも進化していますから、iPhoneで撮れるのは分かっていました。普通のカメラで撮影すると、野次馬も集まってくるけど、iPhoneなら、みんなが持っているものだから、まさか映画を撮っているなんて思いもしないのでただ通り過ぎるだけ。だから夜市をiPhoneで撮ることができたんです」と解説した。
さらに「iPhoneだからこそ、さまざまなアングルで撮ることができたのがアドバンテージ。夜市をさまよう、イージンの子どもの目線から観ることができたんです。また、お姉さん役のマー・シーユエンさんは演技経験がなかったので、大きなカメラだと脅威に感じてしまったかもしれないけど、iPhoneだったので、演技をしている感覚はなかったかもしれないですね」と付け加えた。
また臨場感あふれる作風について「それはショーンとわたしがそういったタイプの作品にインスピレーションを受けているからです。ちょうどわたしとショーンが出会ったのが1999年頃だったと思いますけど、当時、デンマークのフィルムメーカーの間でドグマ95という映画のムーブメントがあって。リアルなロケ、音楽を使わないというようなドキュメンタリーに近いタイプの作品群に感銘を受けました。そうした作品に興味があってのこのスタイルなんです」と語った。
本作は、男性優位社会に生きる女性たちの物語が描かれているが、「この作品のキャラクター、出来事は、自分の人生がそのまま反映されていることが多いんですが、やはり台湾社会ではいまだに息子(男児)を大事にしてしまう、という傾向が強いんです。それはいろんな方と話をしていても、残念ながら男性優位の空気を感じざるを得ませんでした。だからこそ、私は男性優位の社会を描きたいと思ったのです」と明かした。
そんなイベントもいよいよ終盤。最後に来場者へのメッセージとして「もし 映画を気に入ってくださったら、家族、友人を連れて観に来てください!SNSにも感想を書いてくれたらうれしいです。次回作のアイデアとしては、違う国に行くたびにいろいろと感じることがあるので、それを全部書きためたりしているんです。やはり26年間住んだニューヨークという街を舞台にした作品をつくりたいと思っているので、次回作はそれになりそうかなと思っています」とコメント。盛大な拍手の中、舞台挨拶は幕を閉じた。
物語
台北、夜市・麺屋台。5歳のイージン(ニーナ・イエ)は、借金を背負ったシングル・マザーのシューフェン(ジャネル・ツァイ)とハイティーンの姉イーアン(マー・シーユエン)と共に生活を立て直すべく田舎町から舞い戻る。ある日、昔気質の祖父に利き手である左手を“悪魔の手”とそしられ、罪悪感を抱きはじめたイージン。その悪魔の手は図らずも、家族それぞれがひた隠しにする《罪》をあぶり出していく――。
監督:ツォウ・シーチン
脚本:ツォウ・シーチン、ショーン・ベイカー
製作/編集:ショーン・ベイカー
出演:ニーナ・イエ、マー・シーユエン、ジャネル・ツァイ
原題:左撇子女孩/英題:LEFT-HANDED GIRL/2025年/台・仏・米・英/中国語/5.1ch/スコープ/108分
日本語字幕:神部明世 提供:スターキャット 配給:スターキャットアルバトロス・フィルム 後援:台北駐日経済文化代表処台湾文化センター 映倫区分:G
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