『インビジブル・ビューティー ランウェイの革命』公開記念舞台挨拶

【日時】 10月10日(土) 【場所】 シネマリス/アップリンク吉祥寺

【登壇者】ベサン・ハーディソン、フレデリック・チェン監督

ファッション業界の人種的多様性の扉を開き、「美」の価値観を変えてきたベサン・ハーディソンの知られざる人生に迫るドキュメンタリー映画『インビジブル・ビューティー ランウェイの革命』が、10月9日(金)より全国順次公開中。

 本作の公開を記念して、主役であり共同監督も務めたベサン・ハーディソンと、共同監督のフレデリック・チェンが来日し、公開記念舞台挨拶を開催した。観客から溢れんばかりの拍手で迎えられた二人が、映画制作の舞台裏や、現代社会にも通じる多様性への熱い想いを語った。

 大きな拍手に包まれてステージに登壇したベサン・ハーディソンは、「今日こうして皆さんの前でお話しできることを、本当に嬉しく、ワクワクしています」と満面の笑みで挨拶。

 続けて本作について、「この映画は、単なる『ファッション業界の映画』ではありません。ファッションの歴史だけでなく、女性の生き方や市民権をめぐる闘いなど、さまざまなレイヤー(層)が重なり合っている作品です。それらを監督のフレデリックがどう見つめ、切り取ったのかという視点も見どころの一つだと思います。実は先日、日本に到着した際、すでに胸がいっぱいになってしまいました。こうして再び日本に来られたことを、心から嬉しく思っています」と、作品に込めた深いテーマと来日の喜びを語った。

 続いて、共同監督を務めたフレデリック・チェン監督が登壇。「この映画は、ベサンと二人で文字通り膝を突き合わせ、何ヵ月も対話を重ねながら一緒に作り上げた作品です。僕たちの対話は、映画が完成した今もずっと続いています。サンダンス 映画祭をはじめ、世界中のさまざまな場所にこの映画と一緒に旅をして、現地の観客の皆さんと交流してきました。そして今回、日本の観客の皆さんがこの作品をどう受け止め、何を感じられたのか、そのご意見を伺えることを何より楽しみにしています」と語り、日本での反響へ大きな期待を寄せた。

 フレデリック・チェン監督は制作初期を振り返り、「実は、この映画の最初の編集(ファーストカット)は、なんと7時間もあったんです。映画で描かれているのは、ベサンの極めてカラフルで濃密な人生の、ほんの一部、一つの側面に過ぎません。彼女の人生は本当にリッチで、常に多くの出来事が起きているため、それを2時間に凝縮するのは至難の業でした。編集者と一緒にどうにか4時間にまで縮めた段階で、一度ベサンに見せたのですが、その時の彼女の反応は今でも忘れられません」と語った。

 ベサンは、「最初のうちは『私ではなく、他の人たちを主役にして撮って』とフレデリックに頼んでいたんです。でも、送られてきた4時間バージョンを観た時、生まれて初めて『自分のこれまでの歩みを信じていいんだ、誇っていいんだ』と思わされました。こうして一本の作品にまとまったものを客観的に観た時、私自身が、自分という人間について深く学ばされた気がしたのです。それほどこの映画が愛おしくなり、思わず彼に『これ、シリーズ化しましょうよ!』と言ってしまったくらいです」と笑顔で振り返った。

 会場の観客からの質問に答えるトークセッションでは、かつて業界の偏見に立ち向かった姿勢について深い哲学が語られた。ベサンは「私は当時、デザイナーたちを『人種差別主義者(レイシスト)』だとは思っていませんでした。彼らはただ『無知(イグノラント)』だったのです。そして、悪意のある差別よりも、無知であることのほうが、私にとってはよっぽど深刻で、厄介な問題でした」と指摘。さらに、「だからこそ、私は彼らを糾弾するのではなく、粘り強く、そして多くの方が言ってくださるように“優美さ(グレース)”を持って、優しく訴えかけるアプローチをとりました。声を荒らげて闘うのではなく、エレガントに、しかし本質を突く形でアプローチしたからこそ、メディアが私の味方になり、業界の意識を一気に変えることができたのです」と力強く語った。

 最後に日本の観客へ向けて、ベサンは「このアプローチは、皆さんがそれぞれのコミュニティや日常の中で、何かを変えようとする時にもきっと役に立つはずです。偏見や格差に直面した時、闘うのではなく、対話を通じて相手の無知を解消していくこと。これは人間関係やコミュニティ、文化のあり方を変えるための、一つのヒントになるのではないかと思っています」と、温かいメッセージを送り、舞台挨拶を締めくくった。

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配給:オープンセサミ、フルモテルモ
10月9日(金)よりアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開