『本当にあった話(の話)』完成披露上映会
完成披露上映会
日付:9月9日(水)
場所:東京・テアトル新宿
登壇:水上恒司、黒木華、小池栄子、佐々木蔵之介、武井佑吏監督
予告編の上映が終わると、キャスト陣と武井監督がステージへ登場。しかし、出演者が並ぶ中、主演を務める水上の姿だけが見当たらないという、どこか不思議な状況に。中央のスペースがぽっかりと空いたまま、舞台挨拶がスタートした。
MCから「水上さんも登壇予定ですよね?」と確認された黒木は、「そう聞いていますけど…」と戸惑った様子。小池も「見てないですね。来てないんじゃないですか?」と首をかしげ、佐々木も「機嫌が悪かったんじゃないですか? 急に雨が降って…」と冗談交じりにコメントした。さらに武井監督も「忙しい方ですからね」と応じ、主演の行方をめぐってステージ上では困惑したやり取りが続いた。
そんな中、客席のスクリーンには、本作を象徴するビジュアルの一つでもある、真っ赤な光に照らされ不気味な笑みを浮かべる水上演じる夛田(ただ)の姿が映し出されていた。
ところが、しばらくすると静止画だったはずの夛田の表情が動き始め、画面の中の水上が次々と表情を変える映像へと切り替わる。異変に気づいた観客からは、思わず笑い声が漏れた。
実はこの映像こそ、水上本人による“登壇”。ステージ裏の控室にいる水上の様子をスクリーンへリアルタイムで映し出すライブ中継だった。まさかの形で会場に姿を現した水上に、客席も大いに沸き、主演不在と思われた舞台挨拶は一転してユーモラスな展開を見せた。
スクリーン越しに姿を見せた水上は、改めて「こんばんは」と観客に呼びかけると、「いろんな仕事があるなぁと思っています」と苦笑。その後、控室から急いでステージへ向かい、会場からは改めて大きな拍手が送られた。
夛田役で見せる水上の強烈な笑顔について小池は、「ジャック・ニコルソンみたいだもんね。素晴らしい!」と称賛し、その怪演ぶりを絶賛した。
満員の客席を前に、水上は、「とにかく面白いと思いますので、笑っていただけると嬉しいです」と呼びかけ。
黒木もまた、「脚本を読んだときから、自分でも『ちょっと不思議な映画だな』と思っていたので、それがみなさんに見てもらって、どういうふうに受け取られるのか? すごく楽しみです」と笑顔でコメント。観客それぞれが本作をどのように受け止めるのか、期待を寄せていた。
小池は、「ぜひ皆さんの感想を聞いてみたいと思える作品」と紹介。続けて、「“武井ワールド”に思い切り入り込んで、物語を体験してほしい。見終わったあとに『私たちはいったい何を見せられたんだ?』と思ってもらえたらうれしい」と独特の世界観への没入を呼びかけた。
一方で、小池は、「水上くんも取材で話していましたが、どちらかというと一種のコメディ。4人とも、それぞれの人生を懸命に生きている人たちなのに、ある瞬間からその姿がすごく滑稽に映ってくる。そうした部分も含めて、この作品ならではの世界観を楽しんでいただけると思います」と作品の魅力を語った。
佐々木は、「脚本を読んだ時点で、これは簡単には理解できないぞ、と身構えました。登場人物もかなり個性的ですが、難しく考えすぎず、ぜひ思い切って笑いながら観ていただけたらと思います」と作品の楽しみ方を紹介した。
武井監督は、「出演者の皆さんからも『かなり独特な映画だ』と言っていただいていますが、自分から『ぜひ楽しんでください』と胸を張って言うには、少し躊躇してしまうような作品です」と苦笑。続けて、「ただ、この作品を面白いと思ってくださる方には、ぜひ最後までその不思議な世界に付き合っていただけたらうれしいです」と呼びかけた。型にはまらない作品を手掛けた監督らしい独特のコメントに、会場も和やかな笑いに包まれた。
黒木は、主人公・夛田と同じ俳優の世界で生きる米良役を担当。劇中で「俳優が俳優を演じる」という設定について、「自分自身も役者なので、どこまでが役で、どこからが役者なのかを考えると、なかなか複雑でした」と笑いを交えながら語った。
また、水上との共演を振り返り、「撮影に入る前は、水上さんがどんなアプローチで夛田を演じるのか想像できなかったんです。でも米良は、相手から投げられたものを受け止める立場でもあったので、こちらで決めつけず、その場で感じたものを大切にしようと思いました」と説明。さらに、「監督と水上さんが役について意見を交わしている姿も印象的で、そばで見ていてすごく興味深かったです」と、2人の役作りにも刺激を受けた様子を明かした。
一方、事件の舞台化に強いこだわりを持つ脚本家・垣内を演じた小池は、出演の決め手について「まずキャストの顔ぶれに惹かれました。それに、武井監督とは今回が初めてだったので、初対面の方と作品を作ることで、これまで自分の中になかったものを引き出してもらえるのではないかと思ったんです」と説明。「どんな自分に出会えるのか、そこへの期待が大きかった」と振り返った。
実際の撮影では、武井監督から率直な指摘を受けたことが、役を掘り下げるきっかけになったという。「最初の本読みで、『小池さんがセリフを話すと、どうしても人の良さがにじみ出てしまう。このままだと垣内という人物になっていない』と指摘されたんです。最初からそこを見抜いていただけたことが、むしろうれしかった」と述懐。そのうえで、「垣内ならこういう方向にはいかない、こうしたほうが人物として面白くなる、と具体的に一緒に考えてくださったので、自分でも試したことのない表現に挑戦できました」と、監督とのやり取りを通じて新たな役柄に挑戦できた喜びを語った。
さらに水上との芝居については、「垣内は言葉もかなり強く、自分の考えをしっかり持っている人物なので、これまでも自分の判断で物事を動かしてきた人だと思います」と人物像を分析。一方で、「ところが夛田と向き合うと、こちらの思い通りにはまったく進まない。気づけば相手のペースに引き込まれ、垣内自身が飲み込まれていく。その感覚を実際に演じながら味わえたことが、とても面白かったです」と、予想外の展開に巻き込まれていく役柄の醍醐味を振り返った。
佐々木が演じた演出家・加藤についても話が及ぶと、本人は「自分のことを分かっているつもりで、実は周囲が見えていないタイプ。かなり厄介な人物だと思います」と苦笑い。さらに、「演じている間も、ずっと『こんな人、絶対に嫌だな』と思っていました。正直、精神的にもなかなか大変な役でしたが、そこまで振り切って嫌な人物を演じていると、途中から逆におかしくなってきて、自分でも笑えてしまうようになりました」と撮影を振り返った。
そんな佐々木の演技に対し、小池は「ここまで徹底して人を不快にさせるキャラクターを演じ切っているのが、本当に素晴らしかったです。普通ならどこかに愛嬌が見えそうなのに、それすらまったく感じさせない(笑)。その振り切った存在感が、むしろすごく魅力的でした」と絶賛。佐々木の徹底した役作りを高く評価していた。
トークセッションの終盤には、作品のキャッチコピー「化けの皮、剥がれちゃってますよ?」をキーワードに、キャストが撮影現場で目撃したエピソードを披露する企画も行われた。それぞれがフリップに“現場の裏側”を記して発表するなか、水上が掲げたのは「お付き合い」の4文字。
聞き慣れない言葉に会場が反応すると、水上はその意味について説明。「撮影では、カメラに映っていない場所で、相手の芝居を成立させるために目線を送ったり、リアクションをしたりすることがあります。そういう役割を、現場では『お付き合い』と呼ぶんです」と紹介し、映画撮影ならではの業界用語を明かした。
水上は、共演した3人の姿勢にも感銘を受けたという。「僕からすると大先輩にあたる皆さんですが、撮影の合間もきちんと現場に残って、相手の芝居を支える役割を自然にされていたんです。その姿を見て、やっぱり素晴らしいなと思いました」と振り返った。
水上自身も、相手役が芝居をしている際には、カメラに映らない場所から目線やリアクションで応じることが大切だと教えられてきたそうで、「僕はそれも撮影の一部だと思ってやってきたので、現場にいるのは当然だと思っていました」と説明。その一方で、「現場によっては、相手の撮影が終わると、そのまま控室へ戻ってしまう人もいるんですよ(笑)」と、思わぬ“裏事情”を明かして笑いを誘った。
さらに本作の撮影現場について、「今回は皆さんが、撮影が終わっても『まだここにいるよ』という感じで、最後まで現場にいてくださったんです。僕にとっては、それがすごく印象に残っていますし、今でも忘れられないですね」とコメント。
さらに、撮影中に地元の人からキャストへ贈られた「勾玉」と「竹とんぼ」の行方も話題に。黒木が「撮影のときにいただいたものですが、その後、皆さんの手元に残っているのか気になっていました」と切り出すと、それぞれの“現在”が明らかになった。
小池は竹とんぼについて、「いただいたものを別の現場でも飛ばして遊んでいたら、結局どちらも壊してしまいました」と告白。一方の黒木も、「竹とんぼは私も壊れてしまったんですけど、勾玉のほうは今も車の中に置いてあります」と大切に保管していることを明かした。
佐々木は贈り物を受け取ったこと自体は覚えているものの、「もらった記憶はちゃんとあるんですが、今どこにあるのかは……ちょっと分からないです」と苦笑い。水上については、当時かなり集中力を要する撮影だったこともあり、「あの頃は大変なシーンの撮影で頭がいっぱいだったので、正直、細かいところまで覚えていない」といった様子で、思わぬ“その後”に苦笑しながら振り返った。
また、小池は「日本酒」と書かれたフリップを掲げたが、

続いて話題となったのは、佐々木から撮影チームへ贈られた日本酒のエピソード。老舗酒蔵を営む家庭に生まれた佐々木は、撮影に携わったキャストやスタッフへの感謝を込めて酒を差し入れたという。実際に味わった感想を問われると、「皆さんと一緒にいただきましたが、すごく評判もよくて、自分自身も改めておいしいお酒だなと感じました」と笑顔で振り返った。
一方、佐々木さんは「米」と書いたフリップを見せ
さらに小池から共演者たちへ贈られた“差し入れ”についても明かされた。小池が普段から米の魅力を熱く語っていたことがきっかけだったそうで、「栄子ちゃんから『お米はしっかり食べたほうがいい。炭水化物を避けるより、お米を食べるほうがいいんだよ』と力説されて、その流れでお米までいただきました」と紹介。キャスト同士の親しい関係性がうかがえるエピソードに、会場も和やかな雰囲気に包まれた。
舞台挨拶の締めくくりには、水上が観客へ向けて作品への思いを語った。「難しく考えていただく必要はなくて、まずはエンターテインメントとして気軽に受け止めてもらえたらと思います。人間って、真剣に生きているからこそ、時にすごくおかしく見える。その部分を、キャストやスタッフみんなで楽しみながら形にしました。ぜひ笑いながら観ていただけたらうれしいです」と呼びかけた。
続いて武井監督は、「作品を観た方全員に同じように楽しんでもらえるとは、最初から思っていません。たくさんの方の中から、ほんの一部でも『この映画、なんだか気になる』と心に残るものを感じてもらえたら、それだけで十分うれしいです」と率直な思いを吐露。「作品を面白いと感じることに正解や不正解があるわけではありません。ただ、自分たちなりに精いっぱい作った映画なので、誰か一人でも強く受け取ってくれる人がいたらと思っています」と続けた。監督の真摯な言葉に客席から温かな拍手が送られ、和やかな空気の中で舞台挨拶は終了した。
公開情報
『本当にあった話(の話)』
10月2日(金)テアトル新宿ほか全国公開
出演:水上恒司、黒木華、山下美月、大東駿介、山本浩司、小池栄子、佐々木蔵之介
監督:武井佑吏
原作:鴻池留衣『フェミニストのままじゃいられない』(文藝春秋)
配給:東京テアトル
©鴻池留衣/文藝春秋 /2026「本当にあった話(の話)」製作委員会
公式サイト:honbana.com
公式X(旧Twitter):@honbana_mv















