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『テイク・ミー・サムウェア・ナイス』9月13日公開

エナ・センディヤレヴィッチ監督の初長編監督作品『Take Me Somewhere Nice(原題)』が、『テイク・ミー・サムウェア・ナイス』の邦題で9月13日よりシアター・イメージフォーラムほかにて全国順次公開されることが決定した。

第48回ロッテルダム国際映画祭のタイガーアワード特別賞を受賞した本作は、ボスニア・ヘルツェゴビナ出身でオランダ育ちのセンディヤレヴィッチの長編デビュー作。監督自身のルーツを主人公に色濃く投影した半自伝的な作品で、監督が心酔するジム・ジャームッシュの代表作『ストレンジャー・ザン・パラダイス』から多大なインスピレーションを受けている。

さらに、経済的格差が途方もなく大きい西欧(オランダ)と東欧(ボスニア)の文化的対立や、移民といったテーマがさりげなく織り込まれる。1992年にユーゴスラビアから独立し、激しい内戦を経験したボスニアには、今なお悲惨な紛争の傷跡が残るが、監督は主人公アルマという新たな世代のまなざしを通して、そのネガティブなイメージを刷新した。

タイトルである『テイク・ミー・サムウェア・ナイス』は、監督が愛するスコットランド出身のポストロックバンド、モグワイの楽曲名に由来している。監督自身のルーツが色濃く投影された主人公アルマは「自分はどこに属しているのか」「本当の居場所はどこなのか」を問い続ける女の子。監督曰く、アルマというキャラクターを「カフカ的な旅に出る現代の『不思議の国のアリス』」と表現し、その複雑で曲がりくねった旅路を、撮影、美術、衣装などの映像的なディテールにこだわり抜いて描いた。

少女アルマは、オランダ生まれのボスニア人。両親は戦火に揺れた祖国を離れ、オランダで彼女を育ててきた。やがて父はひとり祖国へ戻り、消息は遠ざかっていた。そんな父が入院したという知らせが届き、母に言われるまま、アルマはたったひとりでボスニアへと向かうのだった。出迎えたのは、終始ぶっきらぼうで何の手助けもしてくれない従兄のエミル。部屋に置き去りにされ、キャリーケースは壊れ、荷物も取り出せず、居場所のない空間に身を持て余す。そんな時、アパートの扉の前で眠り込んでいた彼女に声をかけたのは、エミルの“インターン”を名乗るデニスだった。彼だけが、彼女の話に耳を傾けてくれるのだが……。ようやく父のいる町を目指し、小さなキャリーケースを引いてバスに乗り込むが、休憩の間にバスは彼女を置き去りにし、荷物だけを乗せたまま走り去ってしまうのだった。

世間知らずで気まぐれ、ふてぶてしくも繊細なアルマ役を演じるのはサラ・ルナ・ゾリッチ。旅の道連れとなるエミル役をエルナド・プルニャヴォラツ、デニス役をラザ・ドラゴイェヴィッチがそれぞれ演じた。

■公開情報
『テイク・ミー・サムウェア・ナイス』
9月13日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
出演:サラ・ルナ・ゾリッチ、エルナド・プルニャヴォラツ、ラザ・ドラゴイェヴィッチ
監督・脚本:エナ・センディヤレヴィッチ
撮影:エモ・ウィームホフ
編集:ロット・ロスマーク
衣装:ネダ・ナゲル
音響:ヴィンセント・シンセレッティ
音楽: エラ・ファン・デル・ワウデ
提供:クレプスキュール フィルム、シネマ サクセション
配給:クレプスキュール フィルム
2019年/オランダ・ボスニア/オランダ語・ボスニア語/カラー/4:3/91分/原題:Take Me Somewhere Nice/日本語字幕:上條葉月
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