「なら国際 映画祭」は、奈良の平城遷都1300年にあたる2010年に、 映画作家・河瀨直美をエグゼクティブディレクターに迎えて始まった、2年に1回開催される映画祭です。

インターナショナルコンペティションやNARA-wave学生映画コンペティションを軸に、「ユース映画制作ワークショップ」作品、また、なら国際映画祭オフィシャルパートナーであるベルリン国際映画ジェネレーション部門からの推薦作品や、カンヌ国際映画祭の短編作品、ショートショート フィルムフェスティバル & アジアの優秀作品など、多彩な映画作品を上映してきました。

そして、9月19日(土)から9月23日(水・祝)までの5日間開催となる「なら国際映画祭2026」にて、『袖ふきかえへしても』プレミア上映が決定しました。
袖ふきかへしても
この歴史的な節目を迎えた明日香村で、世界遺産登録決定に先立つ今年2月、なら国際映画祭の若手映画作家育成プロジェクト「NARAtive Jr.」第4弾として製作された『袖ふきかえへしても』(英題:What Remains in the Wind)が撮影されていた。

袖ふきかへしても 袖ふきかへしても
袖ふきかへしても(左)脚本;美見マイア、(右)監督:梅本侑伽
袖ふきかへしても

監督を務めたのは、奈良県出身で同志社女子大学に在学する梅本侑伽、20歳。
中学・高校時代から、河瀨直美監督の直接指導も受けられる、なら国際映画祭のユース映画制作ワークショップに毎年参加し、これまでに6本の映画制作に携わってきており、20歳とはいえ、その実力は河瀨監督の折り紙付きだ。

梅本侑伽コメント
(監督)
「袖ふきかへしても」は、私にとって初めて本格的な撮影現場に参加した作品です。現場では考えなければならないことが想像以上に多く、判断の速さについていくことに必死でした。しかし、撮影期間が短かったからこそ毎日その日の反省を振り返り、翌日には一つでも実行することを心がけました。作品をつくるうえでの視点の多さにも驚き、一つ一つのこだわりに感動しました。多くの方に意見をいただき、支えてもらいながら撮影できたことも、大切な思い出です。明日香村は、人が温かく、時間がゆっくり流れているように感じられる場所です。もともと近くに住んでおり以前から散歩で訪れていた場所もあったため、初めての撮影で緊張しながらも、安心して過ごすことができました。見慣れていた景色も、作品制作をする中でどんどん新しい魅力に気づくことができました。明日香村が世界遺産に登録されたことを、心から嬉しく思います。歴史的な価値だけではなく、美しい景色や人々の温かさ、地域の方々が長い時間をかけて守ってきた暮らしや文化にも目を向けてもらえたらと思います。そのような土地で 映画を撮影できたことは、とても貴重で誇らしい経験です。

脚本;美見マイア

脚本を執筆したのは、京都府出身の22歳、美見マイア。森田想、石川瑠華、原田開が出演し、明日香村の村民の皆さんや学生インターン、プロの映画制作スタッフが参加。2月13日から17日まで、明日香村各地で撮影が行われた。

美見マイアコメント
(脚本)
今年の年明けから、監督と共に脚本制作というものに携わりました。
自分が心地良いと感じる印象を持つ言葉、それさえ連ねていればいつかは形が浮かび上がるだろうと漠然と信じ、私は大切なことをすっかり忘れたまま、制作に取り組んでいました。印象というのは人によって曖昧で、当たり前だが形を変えるということ。だからこそ、それぞれの言葉が持つ意味を理解して、扱い方を理解して、その工程を経て最後に初めて言葉を使うことができる。それに気がついた頃には、明日香村を真っ白に覆っていた雪もすっかり溶けて、撮影期間に突入していました。
やりきれない思いも残しつつ、こんな機会がなければ気付くこともなかったでしょうし、この土地でのこの経験は私にとって本当に大切な学びとなりました。
大昔の都には未だに人の呼吸があり、人間はあまり変わらないものなのだな、と思う一方、暮らしがある分、人の手の痕跡というのはどんどん新しく塗り替えられていくものだと思っていました。それがまさか飛鳥時代当時のものが今もなお残されているという、驚きと少しの安心感を覚えました。はじめてこの土地へ足を踏み入れた時の感情が、千年後またここに戻ってこられたとしても、どこかには残り続けているのではないかと思います。

なら国際 映画祭のエグゼクティブディレクターであり、本作では製作総指揮を務めた河瀨監督からコメントが到着した。

河瀨直美コメント
製作総指揮/なら国際映画祭エグゼクティブディレクター
私にとって明日香は、小学生の頃に石 舞台古墳を訪れて以来、心の奥底から惹かれ続けてきた特別な場所です。千年以上前の人々が詠んだ歌が今も残り、その歌に詠まれた山や川が目の前にある。奇妙な姿をした石や、今なお語り継がれる不思議な伝説、高松塚古墳に代表されるような壁画たち──。古代と現在が交差するこの地には、いまだ誰にも解き明かせない謎が息づき、その奥深さが私を魅了し続けています。やがて、この地で 映画を撮影する機会をいただき、歴史だけではない、人々の暮らしや営みが今も豊かに息づいていることを実感しました。その体験を通して、明日香は世界中の人々が実際に訪れ、その空気を感じてほしい場所なのだと確信しています。世界遺産への登録は、むしろ遅すぎたという印象があります。しかしそれは、明日香という土地が、一朝一夕では語り尽くせないほど豊かな歴史と文化を抱え、その価値を理解するまでに長い時間を要したからなのだとも感じています。
日本の源流がここにある。
明日香は、今なお私の心を揺さぶり続ける、日本人の故郷です。

メイキング

「なら国際映画祭2026」開催概要

開 催 日 9月19日(土)~23日(水・祝)
開催場所 奈良市 奈良市ならまちセンター市民ホール/奈良公園バスターミナルレクチャーホール
東大寺総合文化センター金鐘ホール/春日大社 感謝・共生の館 等
実施内容 インターナショナルコンペティション/NARA-wave学生映画コンペティション
カンヌ国際 映画祭招待作品上映/ベルリン映画祭スポットライトジェネレーション部門優秀作品上映
ショートショート フィルムフェスティバル & アジア優秀作品上映/NARAtive/NARAtiveJr作品上映/ユースシネマプロジェクト 等
備考 チケット予約はPeatixにて随時発売
https://niff2026main.peatix.com/

「なら国際映画祭2026」あらすじ
明日香村で暮らし始めた澪(みお)とつむぎは、名前のない関係を守ろうとする。
家に置かれた水時計・漏刻が静かに時を刻む中、ふたりの生活は言えない本音や小さなすれ違いで揺らいでいく。伝えられない思いが少しずつ積もっていくなかで、ふたりはやがて、対話を通して向き合おうとする。

袖ふきかへしても監督プロフィール
梅本侑伽(うめもと・ゆうか)
2006年生まれ、奈良県出身。同志社女子大学在学中。
なら国際映画祭のユース 映画制作ワークショップに中学・高校時代を通して毎年参加し、これまでに6本の映画制作に携わる。20歳で「NARAtive Jr.」第4弾『袖ふきかえへしても』の監督に選出された。

監督:梅本侑伽
脚本:美見マイア
W主演:森田想、石川瑠華
共演:原田開

監修:河瀨直美
撮影:岩倉具輝
録音:森 英司
照明:太田康裕
美術:塩川節子
助監督:甲斐聖太郞
プロデューサー:北條美穂

制作:組画
製作:明日香村、なら国際 映画祭

2026年/日本/33分

撮影地:奈良県明日香村
撮影期間:2026年2月13日~17日