東京国際映画祭舞台挨拶
日時:11月1日(日)
会場:丸の内ピカデリー2
登壇:岸井ゆきの、浅野忠信、森田望智、岨手由貴子監督、川上未映子(原作者)
MC:安田祐子

この度、岨手由貴子監督がメガホンを取り、岸井ゆきのを主演に迎えた川上未映子による同名小説の映画化『すべて真夜中の恋人たち』が11月13日(金)より公開となります。

原作は、川上未映子による初の恋愛小説「すべて真夜中の恋人たち」(講談社文庫)。2011年に発行され、全米批評家協会賞小説部門に日本人初ノミネート、米「TIME」誌の〈2022年の必読書100冊〉にも選出されるなど、海外でも人気を博し、国内累計発行部数40万部を突破している。人との関わりを拒み孤独に生きてきたフリーの校閲者・入江冬子(ふゆこ)が主人公。ひょんなことから年上の物理教師・三束(みつつか)と出会い、交流を深めていく中で、自らの孤独や感情と向き合っていく恋愛物語。本年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品、さらにエジプトのエルグーナ映画祭で準グランプリにあたるシルバー・スター賞を受賞した。川上にとって初となる長編小説の映像化作品の監督・脚本を担ったのは『あのこは貴族』以来約5年ぶりの長編映画となる岨手由貴子。主人公・冬子役は岸井ゆきの、三束役は浅野忠信が務め、その他には森田望智、深川麻衣、塩野瑛久ら実力派俳優が名を連ねる。さらに松坂桃李が語り役として声のみの出演を果たし、物語に奥行きを与えている。

現在開催中の第39回東京国際映画祭ガラ・セレクション部門に選出された本作のジャパンプレミアが11月1日に実施され、上映後に出演の岸井ゆきの、浅野忠信、森田望智、監督の岨手由貴子、そして原作者の川上未映子の5名が登壇し、映画の魅力を熱く語りました。
『すべて真夜中の恋人たち』@TIFF

日本初となった上映後、観客からの温かな拍手で迎えられた5名。
岸井をはじめ冒頭の挨拶では「映画祭で多くの作品が上映されている中、本作を観て下さってありがとうございます」と自然と感謝の言葉が漏れる。

主人公・冬子を演じた岸井は、もともと原作小説の大ファン。映画化のオファーが届いたときの感想を、「原作小説が大好きだったので、ただなぞって再現するだけでは映画として立ち上がらないと思いました。この作品が生まれた時に読んで、一回では済まなくて何度も読み返していた作品だったばかりに、自分の中で冬子という歴史ができあがってしまっていたことに台本を読んでから気付きました。頭の中では整理がつかなくなってしまい、岨手監督といろいろお話しながら、映画で描く新しい冬子を一緒に考えていきました。立ち上げていくまでが本当に大変な作品でした」と小説への愛があるからこそ、役作りに苦労したことを明かす。
『すべて真夜中の恋人たち』@TIFF

冬子が恋に落ちる物理教師、三束(みつつか)役を演じた浅野。
MCから「映画でみる浅野さんと、今目の前にいらっしゃる浅野さんとは別人すぎてどきどきします」という言葉が飛び出るほど、映画ではオーラを消し去って冴えない中年男性を演じているがその役作りについて「具体的に何をというのは、今となってはあまり思い出せないのですが……、最初に台本をいただいて、どういう風に自分が読んだのか、噛み砕いたのか、そして役について躓いた部分もあったので、その点の乗り越え方について監督といろいろお話させていただいたことを覚えています」と振り返る。
『すべて真夜中の恋人たち』@TIFF
冬子の友人でもあり仕事相手でもある聖(ひじり)役を演じた森田には、岸井との共演についての話が振られ「以前に共演したドラマも放送されたのですが、ゆきのちゃんに初めてお会いしたのはこの作品でした。本当に集中して現場で佇んでいらっしゃったので、自分の世界を持っている冬子にぴったりだなと思っていたんです。その1~2か月後ぐらいにドラマの現場でお会いした時、冬子とは違う明るいオーラを発していて『あれ?私の見ていたゆきのちゃんじゃない1』とすごく驚きました(笑)。それだけ作品を背負って、作品の色に染まって、役のことをずっと考えていらっしゃる方なんだなととても尊敬しますし、でもゆきのちゃん自身の芯はぶれずにそこに色がついていくみたいな感じで、単純に、すごい役者さんだなと感じました」と大絶賛。
『すべて真夜中の恋人たち』@TIFF
対して岸井は「望智ちゃんは逆にずっとフラットで、いつも望智ちゃんでいてくださる。私は一つの作品に入ると集中してしまうんですが、望智ちゃんはどんな役を演じても影響されることがなさそうで、いつも自分と役を行き来しているんだろうなと思いました。いつ会っても望智ちゃんでいてくれることに私はとても尊敬していますし、嬉しい、そして安心します」とリスペクトを贈った。

そんな3人のキャストの魅力を聞かれた岨手監督は、「冬子が登場しないシーンがほぼないので、岸井さんとはずっと一緒にいました。準備段階からそれが続いていたのでもう戦友のようです。岸井さんは映画がとても好きで、俳優さんというよりは、“俳優部のチーフ”というスタッフの立ち位置でずっと現場にいてくれました。浅野さんは、これまでたくさんの出演作を拝見してきたので自分が観たことのない浅野さんを演出できるか不安がありましたが、とても新鮮な佇まいでカメラの前に立ってくださったので、毎シーン毎シーン驚かされました。編集中には同じテイクを100回くらい目にするのですが、全然飽きない。スクリーンに映るために生まれてこられたんだなと感じさせてくださった、強烈な体験でした。森田さんは、今日の様子をご覧になった方には伝わると思うんですが、性格が良すぎるんです。お願いした聖は、複雑でこんがらがった野良猫のようなキャラクター。罵倒する芝居は露悪的になってしまいがちですが、全身全霊で自分が傷ついていることを伝えてくださり、森田さんじゃなかったら愛しにくいキャラクターになってしまっていたかもしれません。森田さんの誠実さがスクリーンに映っていると思います」と三者三様の魅力を伝えた。
本作が初の長編小説映像化となった原作者の川上は、「映画を拝見して、映像化というのは原作にとって本当に美しい翻訳の一つなんだなと思いました。書くだけでも読むだけでも分からない物語というのが小説にはあって、それに気づくという体験をさせていただき、大変感動いたしました。作品に関わられた皆さんのご経験や時間、それを持ち寄って全力で、今回の映画だったら光というものに向かっていかれる。映画にはその手触りが残っていて、全くの幸運に与ったなと感激しております」と作品の出来栄えとチームワークを称賛した。
『すべて真夜中の恋人たち』@TIFF

また本作では“語り”という形で、俳優・松坂桃李によるナレーションが入るが、このことについて岨手監督は「一人称のナレーションの扱いは本当に難しいのですが、原作の言葉の美しさを取り入れたいなと思いました。主人公と距離をとることが重要になるので、語りは男性の声でと決めました」と起用の理由を明かす。この決断を川上は「男性の声が一体この映画のなかでどのように位置づけられるのか、どういう響き方をするのかというのは、それぞれの受け取り方があると思いますが、この映画に通じる孤独とか夜とか、そういったものと深いところで響き合っていてとても美しいと思いました」と満足気な表情を見せた。

イベント最後に
一言を求められた岸井は「本日が日本での初上映でしたので、とても緊張していました。映画の公開って本当に緊張するんです。今日を選んで観に来てくださりありがとうございます。本作は11月13日から公開となります。映画って、最初の3日間が大事なんですね。3日間でいっぱい見ていただけるといいことが起きるんです。もし今日面白かったな、好きだなと感じてくださったなら、いろんな人にお伝えしてくださると、私たち本当に喜びます!この映画を末永くよろしくお願いいたします!」と再来週からの公開に向けて茶目っ気たっぷりにアピールし会場を沸かせた。岨手監督も重ねて「この作品は分かりやすく『泣ける』とか『共感できる』という物語ではないかもしれないけれど、スクリーンで観ていただくために撮った映画です。観ないともったいない、と自分で言ってしまえるくらい自信を持ってここに立たせていただいているので、応援いただけると嬉しいです!」と声を揃えて呼びかけた。
『すべて真夜中の恋人たち』@TIFF

岸井ゆきの 浅野忠信
森田望智 深川麻衣 塩野瑛久
中村優子 長井短 祷キララ 中井友望 林裕太
語り:松坂桃李監督・脚本:岨手由貴子
原作:川上未映子「すべて真夜中の恋人たち」(講談社文庫)
製作:『すべて真夜中の恋人たち』製作委員会
製作幹事・配給:ビターズ・エンド 制作プロダクション:C&Iエンタテインメント
2026/日本/カラー/DCP/5.1ch/1.85:1/139分/G
©2026『すべて真夜中の恋人たち』製作委員会
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