川上未映子の小説をもとにした本作は、人との関わりを拒み孤独に生きてきたフリーの校閲者・入江冬子(ふゆこ)が、ひょんなことから年上の物理教師・三束(みつつか)と出会い、交流を深めていく中で自らの孤独や感情と向き合っていく恋愛物語。岸井が主人公の冬子、浅野が三束をそれぞれ演じた。

イラストレーターの中村佑介は「これは冬子さんによる私小説。誤字も脱字も校閲者の手の届かない、この世でたった1冊の勇敢な光の軌跡です」と表現し、声優の梶裕貴は「真夜中にしか見えない光がある。その光を、映画館で見つめていただけたらと思います」と呼びかける。お笑い芸人・弁護士のこたけ正義感は「小説の中で響いていた音楽が、煌めいていた光が、心の揺らぎが、とても誠実に映し出されていた。見終わった後、うまく息ができなくて、目を瞑ってあなたの名前を呼んだ」と振り返った。そのほかのコメントは記事後半に掲載している。

「すべて真夜中の恋人たち」場面写真。左から浅野忠信演じる三束、岸井ゆきの演じる冬子「すべて真夜中の恋人たち」場面写真。左から浅野忠信演じる三束、岸井ゆきの演じる冬子

YouTubeで公開された映像で見られるのは、冬子が森田扮する仕事相手・石川聖(ひじり)と会話するシーン。恋人ではない男性とサムイ島へ旅行に行った聖の話を聞く冬子は、2人の関係について「どうして付き合わないの?」などと問いかける。しかし聖から訝しげに「こういう話に乗ってくるの珍しいね。何かあった?」と聞かれると、何事もなかったかのように「ううん」と目を逸らすのだった。

誰にでも物怖じせずに自分の意見を言い、恋人未満の相手が複数いる聖は、冬子とは正反対な人物だ。過去に手がけた「あのこは貴族」でも対となる女性2人の関係性を描いた岨手。キャスティングについて「聖役は彼女の多面性を切実に表現できる方がいいと思い、森田さんにお願いしました」と振り返りつつ、「上司に突っかかったり、冬子に甘えてみたり、恋人ではない男を冬子に会わせたり、壊れるまで愛を試したり……。聖は登場するたびに違う面を演じなければならない難役ですが、森田さんは露悪的になることなく繊細に演じてくださいました。さすがです」と称賛の言葉を送っている。

「すべて真夜中の恋人たち」場面写真。森田望智演じる冬子の友人・聖

「すべて真夜中の恋人たち」場面写真。森田望智演じる冬子の友人・聖 [高画質で見る]

「すべて真夜中の恋人たち」は11月13日より東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国でロードショー。深川麻衣、塩野瑛久、中村優子、長井短、祷キララ、中井友望、林裕太もキャストに名を連ね、松坂桃李が語りを担った。

濱口竜介(映画監督)コメント

孤独によって切り出された欲望の結晶を煌めかせる、岸井ゆきのの瞳。
その欲望の投射されるスクリーンであり続ける、浅野忠信の佇まい。
両者が圧倒的に素晴らしい。
しかし「光」についての映画をつくってしまう岨手由貴子の繊細なる剛腕に、何より驚嘆した。

中村佑介(イラストレーター)コメント

これは冬子さんによる私小説。
誤字も脱字も校閲者の手の届かない、
この世でたった1冊の勇敢な光の軌跡です。

ラブリーサマーちゃん(ミュージシャン)コメント

私たちの本当の恋愛映画。
であると同時に、本当の仕事映画。
どんな恋をしても日々仕事があります。事に仕えると書いて、仕事です。
そのことがどんな薬になるか。
仕事も恋も散々やりまくります。
そういう人生を愛してます。

梶裕貴(声優)コメント

誰かを想うとき、孤独は消えるのだろうか。
それとも輪郭を変えて、そこにあり続けるのだろうか。
真夜中にしか見えない光がある。
その光を、映画館で見つめていただけたらと思います。

蛙亭 イワクラ(お笑い芸人)コメント

大人の素敵な恋を観させてもらえるものだと思って観たら全く違いました。同世代の女性以外にも、冬子のような男性にも観て欲しいです。冬子に自分を重ねてしまう男性としか私は仲良くなれないです。

たかはしほのか(リーガルリリー)コメント

目を瞑ったときに、闇からのぞく光に顔色があるきがした。
かなしみも、すべてやさしそうな笑顔に見えた。
映画を観たあと、
じぶんの歩幅で、近所の夜道を散歩してみようと思った。

安堂ホセ(小説家)コメント

光という、それについて知ったところでおよそ救いも収穫もない何かについて
それでも知りたいと望む好奇心こそが「恋愛」であるという川上未映子の仮定は、
いつしか日本人の原風景としてフィルムに定着した。

こたけ正義感(お笑い芸人 / 弁護士)コメント

小説の中で響いていた音楽が、煌めいていた光が、心の揺らぎが、とても誠実に映し出されていた。
見終わった後、うまく息ができなくて、目を瞑ってあなたの名前を呼んだ。

絶対に終電を逃さない女(文筆家)コメント

なぜか自分だけが傘を持っていないみたいな世界で、引きこもって生きてきたけれど、
あなたに会うためなら雨に降られてもいい。
そうして外へ踏み出すかけがえのない一歩を描いた映画。

朱喜哲(哲学者)コメント

ウィトゲンシュタインがさまよった迷宮の、その出口へと導く微かな「光」が、ここにはある。
バラバラな世界で、借り物の言葉で生きるほかない私たち皆にとって導きの糸になるだろう傑作。
「究極のラブストーリー」とは、すなわち他者論なのだ。

宮木あや子(小説家「校閲ガール」)コメント

文章を読んではならない、その先の世界とは繋がれない「ただ存在するだけの文字たち」に溺れるような彼女の孤独の中、一筋の光が射しこんだと思ったのに。

椹木野衣(美術批評家)コメント

原作に灯された目に見えない光が、見事に可視化された。

牟田都子(校正者)コメント

言葉は不自由なもので、私たちの間にあるへだたりを埋めてはくれない。それでも、どうにかしてもっと近づきたいともがくように言葉を口にするときの気持ちを、思い出さずにはいられなかった。

芦澤明子(撮影監督)コメント

16ミリフイルムのざらつきと柔らかさが、作品の血肉に加わって、
表現がすごく豊かになっている。
冬子の髪の毛一本一本、爪の先までいとおしくおもえる。

岸井ゆきの 浅野忠信
森田望智 深川麻衣 塩野瑛久
中村優子 長井短 祷キララ 中井友望 林裕太
語り:松坂桃李監督・脚本:岨手由貴子
原作:川上未映子「すべて真夜中の恋人たち」(講談社文庫)
製作:『すべて真夜中の恋人たち』製作委員会
製作幹事・配給:ビターズ・エンド 制作プロダクション:C&Iエンタテインメント
2026/日本/カラー/DCP/5.1ch/1.85:1/139分/G
©2026『すべて真夜中の恋人たち』製作委員会