『白パンと独裁者』トークイベント
トークイベント
日時: 8月15日(土)
場所:ヒューマントラストシネマ有楽町
登壇:マライ・メントライン(ドイツ公共放送プロデューサー)
登壇者:マライ・メントライン(ドイツ公共放送プロデューサー
『女は二度決断する』(17)でゴールデングローブ賞外国語映画賞を受賞し、世界中を熱狂させてきたドイツの名匠・ファティ・アキン監督最新作『白パンと独裁者』がヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかにて大ヒット上映中。
この度、本作の大ヒットを記念したトークイベントにて、ドイツ公共放送プロデューサーのマライ・メントラインを迎えたトークイベントが実施された。北ドイツ出身のマライが、ファティ・アキン監督が本作を描くことの意義と終戦時の暮らしについて、家族の記憶と経験を基にたっぷり話した。
冒頭では、本作の感想と共に、マライが本作に寄せた推薦コメントの中でミヒャエル・ハネケ監督の『白いリボン』(09)に触れた理由について問われると、「『白いリボン』は第一次世界大戦直前の北ドイツの小さな村に暮らす子どもたちの物語です。静かで怖い映画なんですが、戦時下の厳しい教育を受けた子どもたちが、やがてナチスの犯罪やシステムに携わる現役世代になっていくわけです。『白パンと独裁者』に登場するナニングの両親は、まさに『白いリボン』に登場していた子どもが大人になった世代と言えるので連想しました」と説明した。
本作の中でマライが1番印象に残っているシーンは、主人公・ナニングが夢の中でテオ叔父さんと会話するシーンだという。ユダヤ人女性との結婚を認めなかった両親の衝撃の事実を知り、「僕のせいじゃないよ」というナニングに対してテオ叔父さんが「お前を見ると思い出す。否が応でもお前の親をな」と言い放つ。「字幕では字数の関係で省略されていますが、ドイツ語の台詞では“お前のせいではないけど、お前も関係ある”と言っているんです。この絶妙なニュアンスが、おそらく戦後ドイツ人が全員感じていた葛藤だと思います」と、ドイツ語監修を手掛けるマライならではの視点で、短い台詞に込められた意味を解説。また、ファティ・アキン監督について、俳優を目指していたが、トルコ人のステレオタイプな役しか来なかったため 映画監督に切り替えたというキャリアに触れ、「彼はナチスと直接関係はないけれど、ドイツでずっと生活をしているとドイツの人々と歴史との関わりが生まれます。“関係ないけど、関係がある”。このシーンをアキン監督が演出したのがすごく恰好良いと思いました」と、トルコにルーツをもつ監督が本作を撮った意義、凄さについて力説。
また、北ドイツのキール出身のマライは、本作の舞台となるアムルム島には修学旅行などで何度も訪れたことがあると言い、「実際に訪れるともっと荒々しい音がするのですが、あの島ならではの風と波の音。潮が引くと隣の島まで渡れるけど、一歩間違えると沈んでしまう。街並みや人々の暮らし見ても、都市部とは違う島のハードさを感じました」と、現地で目撃したリアルな島の暮らしについて言及した。
作中ではシュレジエン・東プロイセンから引き上げてきた人々が登場し、ナニングにも関わってくる重要な存在として描かれている。「当時のドイツは国境が激しく揺れ動き、それによって人の大移動が起きる時代でした。私の祖父母はグダニスク(現:ポーランド)に住んでいたのですが、この映画で描かれている年の1月頃に3人の子どもを抱えて北ドイツに逃げたそうです。終戦間近で当然住むところもないので馬小屋に住んだと聞きました」と自身の家族の壮絶な実体験を披露。「また、ドイツ国内にはこういった背景から自分の故郷を奪われたと感じ、現在のシリアやウクライナ難民に対して良い感情をもっていない人々もいます。“ドイツ人なのに全然助けてもらえなかった”という当時の感情が今も解消されていないのです。戦後80年以上経っていますが、この 映画の話は現在の私たちにも無関係ではないと思いました」と語った。
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最後に、「本作について日本の皆さんがどう思ったかをとても知りたいのでSNSに感想を書いて欲しい」と笑顔で客席に投げかけ、温かな雰囲気の中トークイベントは幕を閉じた。
監督:ファティ・アキン
脚本:ハーク・ボーム、ファティ・アキン
出演:ジャスパー・ビラーベック、ローラ・トンケ、リーザ・ハークマイスター、キアン・ケップケ、ダイアン・クルーガー
93 分/1:1,85/2025/ドイツ語/ドイツ/原題:AMRUM
配給:ビターズ・エンド 日本語字幕:吉川美奈子
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