『幕末ヒポクラテスたち』公開記念舞台挨拶
公開記念舞台挨拶
日時:5月9日(土)
場所:丸の内ピカデリー
登壇:佐々木蔵之介、内藤剛志、藤原季節、緒方 明監督、coba
映画『幕末ヒポクラテスたち』公開記念舞台挨拶が、5月9日(土)、丸の内ピカデリーにて開催され、主演を務める佐々木蔵之介をはじめ、内藤剛志、藤原季節、緒方 明監督、そしてスペシャルゲストとして、本作の音楽を担当したアコーディオニスト・作曲家のcobaが登壇した。
本作は、大森一樹監督が、手がけた映画 ふんどし医者 をもとに、長年映像化を目指していた企画だった。しかし、2022年に大森監督が逝去。その遺志を受け継ぎ、かつて助監督を務めていた緒方明監督が演出を担当することとなった。
佐々木は「公開記念舞台挨拶に来ていただきまして、ありがとうございます。皆様とお会いできることを本当に楽しみにしていました。ゴールデンウィークの本当の最後の午前中から観ていただきまして、嬉しいです」と笑顔を見せると、内藤は「僕たちは監督の『ヨーイ、スタート』という掛け声とともに芝居をして『カット』となって、それを何度も何度も繰り返して映画を撮っていくんですけれども、やはりこうやって皆さんに観ていただいた時が本当の完成だと思っております」と呼び掛け、感謝を口にする。
緒方監督は「その後、大森さんは病に倒れ、旅立たれてしまいましたが、撮影期間中には何度も夢の中に現れて、“緒方、蔵之介の演技はあれで大丈夫か?”とか、“内藤は相変わらず賑やかやな”などと話しかけてくるような気がしていました」と、故人との不思議なつながりを明かした。
そして、「きっと今日もこの会場のどこかで見守ってくれていると思います。ようやく作品を完成させることができました。皆さんの温かい拍手と笑顔こそが、大森さんにとっても一番嬉しいことだと思います」と語り、映画公開への深い思いをにじませていた。
佐々木は「“大森さんが強い思いを込めていた映画で、一度は頓挫しかけたものの、何とか形にしたい”と声をかけていただきました」と振り返った。
その上で、「とても光栄なお話である一方、責任の重さも感じました。ただ、それ以上に京都の撮影所で、自分が普段使っている京都の言葉で演じられることが本当に魅力的でしたし、長年お世話になってきた場所でもあったので、“ぜひ参加させていただきたいです”とお伝えしました」と、喜びをにじませながら語っていた。
内藤にとっても、本作との縁は非常に印象深いものだった。
「45年前、『ヒポクラテスたち』という大森監督の作品に出演していました」と語り始め、「当時、僕はまだ25歳でした。そして先ほど改めて気づいたんですが、このマリオンの場所には昔、朝日新聞の本社があったんです。実は僕、そこでアルバイトをしていて、その時に大森一樹監督から直接電話をいただいたんです」と当時を回想した。
さらに、「電話口で“内藤、映画を撮るから京都へ来い”と言われましてね。その出来事がまさにこの場所で起きたんです」と、運命を感じさせるエピソードをしみじみと明かしていた。

今回、初めて東映京都撮影所で撮影に臨んだ藤原も、特別な思いを胸に作品へ参加していた。
藤原は「ご縁があって新左役に起用していただき、このような貴重な経験をさせてもらえたことを本当にありがたく感じています」と感謝を口にした。
また、「私は大森監督に直接お会いしたことはありません。ただ、勝手な想像ではありますが、監督は“映画館”という場所をとても大事にされていた方なのではないかと思っています」と語り、「時代が変わり続ける中でも、映画館という存在を大切に守り続けていきたいと、改めて感じました」と、映画への深い愛情をにじませていた。
話題が過酷だった京都での撮影秘話に及ぶと、佐々木は当時をユーモアたっぷりに振り返った。
「京都は本当に寒くて、撮影セットの中もかなり冷え込んでいました。季節さんは刺青の特殊メイクに毎回3時間ほどかかっていて、その間ずっと裸の状態だったんです。“寒くない?”と聞いたら、“寒いです”って答えていて」と撮影時の苦労を明かした。
さらに、「手術のシーンでは、現代みたいに照明を上から当てるのではなく、映画の演出として大量のろうそくを使っていたんです。そうすると、溶けた蝋が彼の体に落ちて、“熱い!熱い!”となる。でも同時に寒さにも震えていて、“寒い!”とも言うんですよ。こっちは“結局どっちなんや!”って(笑)。そのやり取りがおかしくて仕方なかったですね」と、現場の和やかな空気を語っていた。
一方、そのエピソードを受けた藤原も、「シーン自体はかなり張り詰めた空気感だったんですが、撮影は本当に楽しかったです。京都の撮影所で映画を撮ることは以前からの夢だったので」と、笑顔で撮影の日々を振り返っていた。
藤原は、撮影の約1年前に東映京都撮影所の見学ツアーへ参加していたことを振り返った。
「その時、俳優会館にも案内していただいて、“ここは高倉健さんが使っていたトレーニングルームです”と説明を受けたんです。それを聞いて思わず感動してしまって」と当時の心境を語った。
さらに、「その場で思わず手を合わせて、“いつかこの東映京都撮影所で作品に参加できますように”とお願いしたんです。そうしたら、その後にこの映画のお話をいただいて。本当に不思議なご縁を感じました」と、まるで運命のようなエピソードを明かしていた。
その話を聞いた内藤は、「それは本当に素敵な話ですね」と感心した様子を見せ、自身と東映京都撮影所との深い関わりについて語った。
「僕自身も20代の頃から東映の撮影所に通っていて、まさに“東映で育った”と言ってもいいくらいなんです」と振り返り、「京都の撮影所には独特の空気があって、“東京でどれだけ有名でも、京都では一から”という厳しさがありました。だからこそ、ここで認めてもらうことが役者として大きな意味を持っていたんです」と明かした。
さらに、「そうした環境の中で育ててもらえたことを、本当にありがたく思っています。そして僕より上の世代には、里見浩太朗さんや北大路欣也さんといった素晴らしい先輩方がいました。東映京都撮影所は、日本映画を支える俳優たちを育成してきた、とても大切な場所なんです」と、映画界における撮影所の存在意義を力強く語っていた。
イベントの中盤には、スペシャルゲストとして本作の音楽を手がけたアコーディオニスト兼作曲家のcobaが登場した。
cobaは、「この素晴らしい作品の音楽を担当できたことを心から光栄に思っています」と感謝を述べ、「制作中は、限られた予算や時間との戦いでもありましたし、監督から求められるハイレベルなオーダーに応える日々でもありました」と振り返った。
その一方で、「『蘭方医のテーマ』が完成した瞬間、“これでいける”という確かな手応えを感じました」と語り、「監督からは“まるでパリの裏路地が浮かぶような音楽にしてほしい”と言われていて、とても難しい挑戦でしたが、全力で取り組みました」と笑顔を見せた。

さらに会場では、本作のメインテーマを織り交ぜながら、Libertango(リベルタンゴ)の一節をアコーディオンで生演奏。迫力ある演奏に、会場からは大きな拍手が送られていた。
美しい旋律に聴き入った緒方監督は、「大森さんが深く愛していたのは、1960〜70年代のフランス映画でした」と切り出し、「撮影を重ねる中で、蔵さんを見ていると“これはまるでジャン=ポール・ベルモンドのようだ”と感じるようになったんです」と、音楽に込めたイメージの背景を明かした。
一方で佐々木は、「ひとりの観客としてその音楽を聴いていました」と語り、「パリの裏通りを思わせるような空気が一気に広がって、胸がいっぱいになって涙が出そうになるほどでした。本当にありがたい気持ちでいっぱいです」と、深い感動を伝えていた。
イベントの終盤には、大ヒット祈願として登壇者と観客が一体となり、威勢の良い掛け声とともに鏡開きが行われた。その後、大森監督の思いを継承する監督やキャストたちが、それぞれの胸の内を語った。

緒方監督は、「大森さんが40年以上前に手がけた『ヒポクラテスたち』は、とても幸福感に満ちた作品でした」と切り出し、「すでにこの世を去られた方々も多くいらっしゃいますが、この映画もまた、そうした思いを受け継いで“幸福な作品”になってほしいと願っています」と語った。
藤原は初日に映画館で本作を鑑賞したことを明かし、「今は映画館で飲み物を持ち込む・持ち込まないといった議論がSNSでも話題になりますが、その賛否は別として、他者への視線が少し厳しくなったり、便利さを求める流れの中で、映画館そのものが以前より足を運びにくい場所になってしまっているように感じていて、少し寂しさがありました」と率直な思いを語った。
そのうえで、「でも、その気持ちを抱えながらも実際に座席に座り、室井滋さんのナレーションが始まり、cobaさんの音楽が流れた瞬間に、“この映画館に来て本当によかった”と心から思いましたし、とても楽しい時間でした」と感動を振り返った。
最後に、「だからこそ、この作品はぜひ映画館で体験してほしいです」と力強く呼びかけ、観客に向けて熱いメッセージを送っていた。
内藤は、「皆さんには先ほど、この映画のエンドマークをご覧いただいたと思います」と切り出し、「冒頭でもお話ししましたが、僕たちの仕事はひとまずここで一区切りを迎えます。ただ、その先は観てくださった皆さん一人ひとりに委ねられていくものなんです」と語った。
続けて、「少し例えが変かもしれませんが、僕たちは皆さんに“種”や“球根”のようなものをお渡ししている感覚なんです。それがどんな花として咲くかは、それぞれの受け取り方次第でいい。違う形の花が咲いてくれたら、それが一番嬉しいです」と、観客へ思いを託していた。
そして佐々木は、「映画というのは企画が立ち上がっても簡単に通るものではありませんし、制作が始まっても途中で止まってしまうこともあります。公開直前になって話がなくなることもあれば、完成しても世に出られない作品もある。そうした現実がある中で、昨日無事に初日を迎え、今日こうして皆さんとお会いできたこと自体が本当に奇跡のように感じています」と語った。
さらに、「劇中にもある『人生は短し、術の道は長し』という言葉の通り、大森監督の思いを、緒方監督をはじめとする先輩方、そして私たち、さらに次の世代へと繋いでいくことができたのではないかと思います。きっと監督にも喜んでいただけるのではないかと感じています」と、作品への誇りと感謝を込めて締めくくっていた。






