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「第34回日本映画批評家大賞授賞式」新人男優賞に 齋藤潤 本山力 新人女優賞 長澤樹が受賞

第34回日本映画批評家大賞において、新人男優賞は、17歳の齋藤潤と55歳の本山力さんの2人に贈られた。会場からは温かい拍手が送られ。

齋藤は「このたびは、名誉ある賞をいただき、本当に光栄に思っています。ありがとうございます」と感謝を述べた齋藤さんは、撮影を振り返りながら「当時は分からないことばかりでしたが、主演の綾野剛さんをはじめ、キャストやスタッフの皆さんに支えられて、ここまで来ることができました」と語った。そのうえで、「この賞は自分には大きすぎると感じますが、明日からまた、この経験を糧にして、全身全霊で作品づくりに向き合っていきたいです」と、前向きな思いを述べた。

芝居についても高い評価を受けており、それに対しては「本当にうれしいです。自分の力だけでは到底できなかったこと」と謙虚に振り返り、「オーディションの時から、山下敦弘監督や野木亜紀子さん、綾野剛さんをはじめ、関係者の皆さんが引っ張ってくださっていて、大きな安心感の中で楽しくお芝居ができました」と、周囲への感謝を繰り返した。

役作りに関しては、「オーディションで役をいただいてから撮影まで少し時間があったので、まずは合唱部の部長という役に向けて歌の練習をしました。また、大阪出身の設定だったので、関西弁の練習も行いました」と準備の様子を紹介。さらに「台本を読んだとき、自分の思いがまっすぐに相手に届けばいいなと感じ、それを大切にして取り組みました」と役への向き合い方を語った。

共演した綾野剛さんについては、「役が決まってからも、そして現場でも毎日のように体調を気遣ってくださったり、『朝ご飯は何食べた?』『元気?』と声をかけてくださったりして、とてもあたたかい環境を作ってくださいました」と感謝の気持ちを述べた。さらに、「綾野さん自身が、僕が楽しく演じられるような現場づくりを目指してくださっていたということを後から知り、本当にありがたかった」と、現場でのサポートに感謝を寄せた。

方や紋付袴姿で登壇した本山さんは、受賞の喜びとこれまでの歩みを振り返りながら、感謝の気持ちを語りました。

本山は22歳でエキストラ専門の事務所に所属し、40歳で東映剣会に入会。以降、時代劇を中心に“斬られ役”などを務め、長年にわたり地道な活動を続けてきました。2014年には「侍タイムスリッパー」(第48回日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞作)にも出演。草彅剛さん主演の映画『碁盤斬り』で白石和彌監督と出会ったことをきっかけに、山田孝之さんと仲野太賀さんが主演を務める『十一人の賊軍』で主要キャストに抜擢され、爺っつぁん役を演じました。

授賞式では、トロフィーを受け取ると客席に向かって何度も頭を下げ、「今年で56になりますが、このような新人賞をいただけるとは思ってもいませんでした。ご推薦くださった皆さまに、心から感謝しています」と語りました。さらに「これまでの人生で賞をいただいたことがなかったので、本当にうれしいです」と率直な気持ちを口にしました。

選考理由について、審査員からは「“我々は見てますよ”ということをお伝えしたくて、この賞を贈らせていただきました」との説明がありました。それを受け、本山さんは「誰かに見られようと思って演じているわけではありません。ただ一生懸命にやってきただけです。でも、そうした努力をどこかで誰かが見てくれていたのだと、今回改めて感じました」と、これまでの誠実な姿勢をにじませるように語りました。

新人女優賞には、映画『愛のゆくえ』に出演した長澤樹が選ばれた。作中では、孤独を抱える少年少女の一人として、窪塚愛流とともに繊細な演技を見せた。

今回が自身初の受賞となった長澤は、手にしたトロフィーの重みをかみしめるように、「この賞に恥じない女優を目指して、これからも努力を続けていきたいです。今後とも応援よろしくお願いします」と真摯な思いを語った。

■『第33回日本映画批評家大賞』結果
・作品賞:『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(呉美保監督)
・監督賞:入江悠監督『あんのこと』
・主演男優賞:吉沢亮『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
・主演女優賞:河合優実『あんのこと』
・助演男優賞:綾野剛『まる』、森優作『ミッシング』
・助演女優賞:忍足亜希子『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
・ドキュメンタリー賞:『大きな家』(竹林亮監督)
・アニメーション作品賞:『ルックバック』(押山清高監督)
・新人監督賞:山中瑶子監督『ナミビアの砂漠』
・新人男優賞(南俊子賞):齋藤潤『カラオケ行こ!』、本山力『十一人の賊軍』
・新人女優賞(小森和子賞):長澤樹『愛のゆくえ』
・脚本賞:甲斐さやか『徒花 -ADABANA-』
・編集賞(浦岡敬一賞):田端華子『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
・松永文庫賞(特別賞):東映剣会
・ゴールデン・グローリー賞(水野晴郎賞):根岸季衣『サユリ』
・ダイヤモンド大賞(淀川長治賞):草笛光子『九十歳。何がめでたい』

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