映画『本当にあった話(の話)』公開御礼 ティーチイン
公開御礼 ティーチイン
日時: 10月10日(土)
場所: テアトル新宿
登壇:水上恒司、武井佑吏監督
映画『本当にあった話(の話)』の公開を記念して10月10日(土)、テアトル新宿(東京・新宿)にてティーチイン付き舞台挨拶が開催! 主演の水上恒司と武井佑吏監督が映画を観終えた観客からの質問に答えた。
公開後の反響について尋ねられた武井監督は「10分おきくらいにSNSを見てます!」と明かし、水上から「依存症じゃないですか(笑)!」と突っ込まれる。武井監督は、印象的だった感想として、あるサタニスト(悪魔信仰者)を名乗る観客からの声を紹介。「その方は『良い映画だけど、信仰上の理由で私は評価できない』という感想で、マリリン・マンソンのように悪魔にとり憑かれて、その人が輝いていく姿を見たいので、最後の終わり方――夛田の仮面がはがされ、ハシゴを降ろされる終わり方は納得できないということでした。それは、僕の意見とかなり近いものがあって、面白かったです。夛田という存在が、どんどん神々しく、美しく輝いていくように見えるところがあって、皆さんの感想を見ると夛田について『気持ち悪い』とか『毒々しい』というのが多いんですけど、僕は美しいものとして夛田を見ていました。やっていることはアンモラルだし、他人の言うこと聞かない。人間は普通、相手の言動を見て自分の振る舞いや言動を変えていくものだけど、夛田はひとつのことしか見えてなくて、自分の考えを押し通していく。そういう人に憧れるし、まばゆい美しさがあると思って僕は撮っていました」と明かす。
一方、水上は「僕は、まじめに生きていれば良い目を見るし、悪い人間は最後に必ず足元をひっくり返されると信じているので、そういう意味で、この最後の展開は大好きです。でも、 映画だからこそ、悪い面、汚い部分にも美しさあるって表現は必要だと思うので、(監督の意見に)『なるほど』と思いました」とうなずく。
武井監督は「あんまり『(夛田が)美しい』という感想はいただかなくて、その人が初めてでした。もうひとりだけ、同じ感想を言った人がいて、それは原作者の鴻池留衣さんで、その感想は嬉しかったです」と明かした。
観客からの質問で、本作では“手”が官能的なものとして描かれているが、水上自身、手に対して“官能的”だと感じるか?という問いに、「手に対して官能的なことを感じる感性は僕もありますね。要は切り取り方で、どんな人間でも、どんな事象でも、いろんな側面があり、手ひとつに対して、どういう側面から監督が切り取ろうとし、役者がどう表現しようとするかで意味が変わってくると思うんですが、今回の映画で、また手に対しての感性が増えているのではないかと思いました。いろんな作品を観ていて、僕はすごく手に品性を感じます。『ハウス・オブ・カード』のケビン・スペイシーの手の所作が好きで、男性だけど色気を感じるところがあるんです。今回の夛田にケビン・スペイシー味はないんですいけど、いろんな作品に(その要素を)入れたりしています」と明かした。
また、別の観客からは、夛田について「最初は気持ち悪いと思ったけど、本当は純粋で自分を認めてもらいたい、分かってほしいという思いを持った方だなと思いました」という感想が寄せられ、「水上さんの中に、夛田という人間が何%くらいありますか?」という質問が。
水上は「僕は芝居をする前、作品に入る前、次の日の撮影のために作戦を練るんです。(芝居の)道筋を作戦として捉えて、その道筋をたどるために何が必要かを考えるんですが、やはり夛田は、僕の記憶とか感性を引っ張り出してつくり上げることしかできないというのが僕のやり方であり、でも『あれは僕ではなく“夛田鉄郎”なんだ』と捉えているので、僕でもあり、僕でもない――どれくらい占めているのか?と言えば『100%僕ですし、100%僕ではない』という答えになると思います」と語る。
そんな水上に対し、武井監督は「現場で見ていたり、水上さんが楽屋でされるいろんなことに対しての提言を言ったり、そうやっていろんなお話しされる時、『夛田だな』と思って聞いています」と明かす。
ちなみに、今回の 映画でも、水上は、役者の“前髪”に対し、熱い思いをもって、提言をしたという。水上は「前髪が好きな方って、この世にたくさんいると思うんですけど、僕はかゆいですし、おでこを出したいなと思うし、一番は、坊主頭で過ごした期間が長すぎて、前髪をつくったらかゆくてしょうがないんです(苦笑)。今回のこだわりも、日本のいまの役者の方々で、前髪がある役、キャラクターってたくさんいるからこそ、差別化を図るという意味で、これまでの僕の作品との差別化も含めて『今回、前髪は絶対につくりません』と事前にお話ししました。それがきっと“夛田味”を感じるんだと思います(笑)」とふり返った。
また、武井監督は今回の映画の中で、“舞台”をつくる過程が描かれている点について、なぜ映画ではなく舞台なのか?という質問に、前提として原作でそのように描かれている点に触れつつ、「演劇の現場をいろいろ取材してみて、あの小さな稽古場とかハコの中に閉じ込められて、そこで何かをつくっていくということは、やはり映画よりも、どんどんおかしな空間になっていくという感覚はありました。イヤな空気も含めて、演技に対する密度みたいなものが煮詰まっていく空間だなと思っていて、それはひょっとしたら映画よりも強い熱量なんじゃないかと撮りながら思っていました。そういう意味では、夛田という人がおかしくなっていく空間として、演劇が適切だったのかなと思います」と語った。
イベントの最後に水上は「こうしてお話ができる機会をもてて楽しかったです。僕は、武井さんの次回作が楽しみでなりません! 僕も次回作に呼ばれるように願っています。今日はありがとうございました」と語り、武井監督も話し足りなかったのか「SNSでいろいろ質問していただけたら、全部返信しますんで!」と呼びかけ、温かい拍手の中、舞台挨拶は幕を閉じた。
水上恒司 黒木華 山下美月 大東駿介 山本浩司 / 小池栄子 / 佐々木蔵之介原作 鴻池留衣『本当にあった話(の話)』(文藝春秋)
音楽 Maika Loubté監督・脚本・編集 武井佑吏製作 石井紹良 岸善幸 髙橋紀行 太田和宏 プロデュース 中村優子 企画・プロデューサー 杉田浩光
撮影・編集 渡邊雅紀 照明 志村昭裕 録音 豊田真一 美術・装飾 遠藤善人
製作委員会 murmur テレビマンユニオン KDDI 東京テアトル 制作プロダクション テレビマンユニオン 配給 東京テアトル/murmur
©️鴻池留衣/文藝春秋/2026「本当にあった話(の話)」製作委員会





