再上映記念イベント
日時:8月22日(土)
場所:テアトル新宿
登壇:中村義洋監督
MC:SYO(映画ライター)

売れないパンクバンド、気弱な大学生、シージャックに遭遇した正義のヒーローになりたい男と高校生ある一つの歌が、生きた時代も場所も異なる人々をつなぎ、世界を救う!

2009年に公開された映画『フィッシュストーリー』の17年ぶりの再上映を記念して8月22日(土)、東京・新宿のテアトル新宿にて舞台挨拶が開催。中村義洋監督が登壇し、撮影当時の思い出などを語り、劇場に詰めかけた観客の質問に答えた。
『フィッシュストーリー』再上映記念

再上映記念イベント
日時:8月22日(土)
場所:テアトル新宿
登壇:中村義洋監督
MC:SYO(映画ライター)

中村監督にとって『フィッシュストーリー』は、『アヒルと鴨のコインロッカー』に続く伊坂幸太郎による小説の映画化となったが、個人的にも非常に思い入れの強い作品のようで「自分の中で、好きな作品という意味で、いつも三本の指には確実に入っていますね」と語る。
『フィッシュストーリー』再上映記念
今回、17年ぶりに再上映されることを知った時の気持ちについて、昨年6月に公開された自身の監督作『見える子ちゃん』が、残念ながら興行的には成功とは言えない結果に終わったことに言及し「本当に頑張って、やりたいこと、描きたいこと、伝えたいことをつめ込んだんですけど、これが驚くほど厳しくて…(苦笑)。『国宝』と同じ日の公開だったんですけど(笑)。悔しいからエゴサーチしたら、観た人はすごく褒めてくれているんです。『届くんだな』と。それで、ヒットじゃなくても、誰かに届けばいい――やりたいこと、届けたいことは伝わるんだな、思ったんです」とまさに『フィッシュストーリー』の劇中のパンクバンド「逆鱗」と同じ心境になっていたことを明かす。「そうしたら(再上映の)お知らせがきたんです。これを『やりたい』と言ってくれた最初のひとりの方がいるということに、本当にありがたいと思いました」と感謝を述べた。

今だから言える“撮影ウラ話”

本作を観て、驚かされるのはキャストの豪華さ! 伊藤淳史、高良健吾、多部未華子、濱田岳、森山未來、大森南朋、眞島秀和、江口のりこ、滝藤賢一…などなど、人気実力派俳優陣が顔をそろえている。中村監督はキャスティングについて「これの前に『ルート225』という映画で多部ちゃん、『アヒルと鴨のコインロッカー』で濱田岳と一緒に仕事していたけど、他はほぼ初めてのみなさんでした」と振り返り、「プロデューサーと多部ちゃんと岳の4人でご飯に行って、作品の話をして、“気の弱い大学生”の話が出たら、岳が『あ、僕、それだ!』って言いました」と明かす。滝藤さんは、本作を皮切りに『見える子ちゃん』に至るまで中村作品に何本も出演することになるが「こんなに何本もやることになるとは思わなかったです。(本作の)暴漢役から…。この前、本人も言ってました。『暴漢からスタートした俺が…』って」と感慨深げに語る。
また、パンクバンド「逆鱗」のボーカルを演じた高良さんに関しては「17年も経ったので言えますけど…歌に課題があったんです。音程は合ってるんだけど、パンクとは真逆のなめらかな優しい歌い方だったんです。クランクインして、シージャックのシーンを撮って帰ってきたら、切なく激しい歌声になっていて、それはもう本当にびっくりしました。別人みたいで、それは鮮明に覚えています」と短期間での驚きの変化を明かした。
劇中、監督なりに名作へのオマージュを詰め込んだシーンも多いようで「濱田くんたちのやりとりは、『ふぞろいの林檎たち』の丸々パクリです。登場人物のセリフから配役までそのまま。(濱田さんの役は)柳沢慎吾さん的な(笑)」と楽しそうに語る。
また、森山さんが劇中で見せる華麗なアクションについて、現場で目の当たりにして「見とれていました」と述懐。アクションの中に、監督が好きだというプロレスの要素を入れたことも明かされた。

伊坂作品の映像化について

伊坂幸太郎作品の中で、なぜ『フィッシュストーリー』を映画化することになったのか? という観客からの質問に、中村監督は、まずその前に映画化された『アヒルと鴨のコインロッカー』の存在が非常に大きかったと語る。それまで伊坂作品を読んだことはなかったが「プロデューサーから『アヒルと鴨のコインロッカー』を渡されて読んだ時に、『これは勝負しないと!』と思いました。物語が伝えたいことや世界観が、こんなに自分と合う作家さんがいたんだ! と思い、気合を入れてやりました。仕上げの作業中、プロデューサーから何本か別の伊坂さんの作品の話をいただいたんですが、『アヒルと鴨〜』を伊坂さんが気に入っていただけなければ2本目はないだろうと思っていました。初号を見て伊坂さんが気に入ってくださって、次の企画を考えたんですが、僕が『やりたい』と思っていた作品は全部、すでに映画化権が押さえられていたんです。そうしたら『まだ『小説新潮』に載っただけで本になってない短編がありますよ』とおっしゃってくださったのが、『フィッシュストーリー』だったんです。読んで、『これはいい!』と思いました」と映画化の経緯を明かした。
『フィッシュストーリー』再上映記念
また、もともと伊坂作品が好きで、中村監督の映画を見るようになったという観客からの「原作の小説を映画化するにあたって、『ここは外せない』、『大事にしたい』と思う要素は?」という質問には、中村監督は「物語の“核”というのは自分で勝手につくるものではないし、それがない場合は僕は映画化は出来ないので、お断りすることが多いんです。伊坂さんの場合はそれがあるし、おそらく伝えたいこと、思っていることは一緒だろうというのが強いので、世界観のブレもなくやれているんだと思います」分析。特に『フィッシュストーリー』において、大切にした部分としては「やっぱりラストですね。曲に合わせて、いままで起きたことを律儀に、ちゃんとやるということ。それは強く言っていました。当時30代後半で、(劇中のセリフにある)『本当に届くのか?』という思いは僕にも切実にあって、そこに共感してもらいたいという気持ちはすごくありました」と作品に自身の状況を重ね合わせ、思いを伝えようと必死だったと明かした。
伊坂作品の特徴とも言える、あちこちに散りばめられた伏線が、終盤にきれいに回収されていく描写に関して、ある観客から「監督は、観客にどこまで気がついてもらおうという意識でつくられているんですか?」という質問が。中村監督は「もちろん、(観客を)ビックリさせようと思っていますが、気持ちの良いビックリは『感づけたかもしれない』、『推理できたかもしれない』というものだと思います。ノーヒントで『こうでした!』とやっても、首をかしげて終わっちゃうんですね。だから、バレないように…でもヒントは多めにバラまいておいて『あぁ、それってそういうことだったんだ!』と思ってもらえるようにしています」と微妙なさじ加減について明かしてくれた。

最後に

中村監督は、来月に新作の撮影が控えていることを明かし「ジャンルは全然違うんですが、『フィッシュストーリー』とすごく似ているんです。それも含めてこの再上映は感慨深いですし、撮影の直前にこういう体験をすると、やる気に満ちて、撮影に臨めます。本当に今日はお暑い中、ありがとうございました!」と語り、会場は温かい拍手に包まれた。

自分が生きている毎日は、どこかで未来につながっているー
何気ない日常の愛おしさと、パズルが組み合わさるかのような極上な爽快感を、ぜひ劇場で体験してほしい!

フィッシュストーリー/デジタル版ポスター

監督:中村義洋
原作:伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』(新潮社刊「フィッシュストーリー」所収)
音楽プロデュース:斉藤和義
出演:伊藤淳史 高良健吾 多部未華子 濱田 岳 森山未來 大森南朋
渋川清彦 大川内利充 眞島秀和 江口のりこ 山中 崇 波岡一喜 高橋真唯 石丸謙二郎
中村有志 芦川 誠 野仲イサオ 恩田括 大谷英子 田村圭生 草村礼子 上田耕一
プロデューサー:宇田川寧、遠藤日登思
脚本:林民夫 撮影:小松高志 照明:松岡泰彦 録音:高野泰雄 美術:仲前智治
企画協力:新潮社 制作:ダブ 製作:「フィッシュストーリー」製作委員会 配給:ショウゲート
2009年/日本/カラー/ビスタ/ドルビーデジタル/112分
(c)2009「フィッシュストーリー」製作委員会

公式サイト:https://theaterlist.jp/?dir=fishstory