映画『OCHI! -オチ-』ストーリーボード解説動画&監督描き下ろし日本オリジナルポスター解禁
A24初の本格ファンタジーとなる『OCHI!-オチ-』の監督を務めたのは、グリズリーベアの『Knife』やビョークの『Wanderlust』をはじめとする著名アーティストのミュージックビデオを手掛け、手作業へのこだわりと美学を築いてきた映像作家アイザイア・サクソン。21歳でノースビーチのビデオ屋の店長となったとき、ディレクターズ・ボックスセットを発見し、スパイク・ジョーンズ、ミシェル・ゴンドリー、そしてクリス・カニンガムら映像作家が手掛けたミュージック・ビデオを繰り返し観るようになったという。
そのあと数々のアーティストのミュージックビデオを手掛け、D&AD賞、英国VMA賞、アントビルMV賞やスピン誌の年間最優秀ビデオ賞など数多くの賞を受賞。その独創的な映像世界は高く評価され、ニューヨーク近代美術館(MoMA)や映像博物館において作品が展示されている。そして本作で、長編映画監督デビューを果たした。
主人公のユーリを演じるのは、2020年にポール・グリーングラス監督の『この茫漠たる荒野で』でトム・ハンクスと並んで主演を務め、ドイツ映画『システム・クラッシャー』(2019年)で高い評価を得た16歳のドイツ人俳優ヘレナ・ツェンゲル。サクソン監督は、『システム・クラッシャー』のツェンゲルの演技を観て、オーディションなしにこの役をオファーしたという。
少年らからなる狩猟隊を率い、オチ狩りに執着している父親に疑問を抱き、心を閉ざすユーリの心情を見事に表現したヘレナ。孤独だったユーリが、突然出会った幼いオチと次第に心を通わせていく姿にグッときてしまった。多くのセリフが人間の言葉ではないぶん、この役は難易度が高かったはずだが、そんなユーリという役を完璧に演じたヘレナは、今後もっと注目される俳優になっていくだろう。
オチを背負ってスーパーから逃げようとする少女ユーリ(ヘレナ・ツェンゲル)(C)2024 KURKAMART LLC AND IPR.VC FUND II KY. ALL RIGHTS RESERVED.近年は、ヨルゴス・ランティモス監督の『哀れなるものたち』(2023年)や『憐れみの3章』(2024年)、ティム・バートン監督作『ビートルジュース ビートルジュース』(2024年)に出演するなど、キャリアに甘んじることなくユニークな役に挑み続けている。本作では、厳しく子どもたちを育てながら、オチ狩りに必死な父親マキシムを好演。物語の終盤で、マキシムとユーリの間にどんな変化が訪れるのか、楽しみにしていてほしい。
筆者は、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』で長年成長を見守ってきた彼のことをフィンくんと呼び、ほかの出演作もほとんど鑑賞している。本作では、本当の父親ではないマキシムに認められようとオチ狩りに奮闘しつつ、その一方で家を飛び出したユーリを心配する優しいペトロを生き生きと演じたフィンくん。登場シーンは少ないが、圧倒的な存在感を放つペトロの活躍にも注目してもらいたい。
血のつながらない妹ユーリを心配して追いかけるペトロ(フィン・ウォルフハード)(C)2024 KURKAMART LLC AND IPR.VC FUND II KY. ALL RIGHTS RESERVED.夫のマキシムと疎遠になり、羊飼いをしながら暮らしているユーリの母ダーシャを演じたのは、1996年にラース・フォン・トリアー監督の『奇跡の海』で映画デビューし、『レッド・ドラゴン』(2002年)、『パンチドランク・ラブ』(2002年)、『戦火の馬』(2011年)、『戦場からのラブレター』(2014年)、『博士と彼女のセオリー』(2014年)などに出演するエミリー・ワトソン。近年では、キリアン・マーフィーと共演した主演作『決断するとき』(2026年)やクロエ・ジャオ監督作『ハムネット』(2026)などの注目作に出演するなど精力的に活動している。
ダーシャは、過去に起きたある出来事から、自らを罰するように家族と離れ、田舎で一人暮らしている。そんな中、ある日突然自分の元にやってきた娘に対して、不器用ながらも愛情深く接するシーンは本作の見どころの一つとなっている。

物語の冒頭、怪我をした独りぼっちの赤ちゃんオチと出会ったユーリは、言葉にならないむすびつきを感じ、オチを家族と再会させるために冒険の旅に出る。オチは猿ではないが、赤ちゃんオチが登場した瞬間に今大人気のパンチくん(市川市動植物園で飼育されている子猿)と重なり“かわいすぎる!!”と心の中で叫んでしまった。
現代では不思議な生物はCGを使って映像化するのが主流だが、なんとこの作品の赤ちゃんオチはブルースクリーンのスーツを着た複数の人形遣いがパペットを操作し、大人のオチは基本的に三人の役者が延長した四肢を付け、着ぐるみを着て演じているという。
それを知ってとても懐かしい気持ちになった。なぜなら自分が幼い頃に観た『E.T.』(1982年)や『ネバーエンディング・ストーリー』(1984年)、『グレムリン』(1984年)といった名作に登場する不思議な生物は、体や顔を動かす仕掛けを入れた人形を使って撮影していたからだ。アナログの手法で撮影された映像だからこそ、CGにはない温かみや“本当にこの世に存在しているかも!?”と思わせてくれるリアルさがある、そんな風に感じた。
ユーリとオチが次第に心を通わせていく姿にワクワクし、感情を音楽のように紡ぐオチの言葉を理解し始めたユーリが、声を使ってオチと自然にコミュニケーションを取る姿に感動させられる本作。ユーリに懐く赤ちゃんオチの愛くるしい姿は、かわいすぎて誰もが悶絶すること間違いなしだ。
ファンタジー映画好き&動物好き必見の『OCHI!-オチ-』を、ぜひ劇場で鑑賞してもらいたい。









