国際的な発信および新しい文化価値の醸成を目的に、恵比寿映像祭では2023年より「コミッション・プロジェクト」を継続的に実施しています。本プロジェクトは、日本を拠点に活動する新進アーティストに映像作品の制作を委嘱し、恵比寿映像祭の根源的な問いである「新たな恵比寿映像祭」のあり方を、作品を通して提示することを目的とするものです。
制作された作品は、次年度以降の恵比寿映像祭において発表され、フェスティヴァルの中核的な成果として位置づけられます。(※コミッション・プロジェクトの事業サイクル詳細は下記参照)。

このたび2月11日(水)に行われたシンポジウム「映像表現の現在地とこれからー第3回コミッション・プロジェクトに向けて」にて、5名の審査員による審査を経て決定した4名のファイナリストが発表されました。(敬称略)

第3回コミッション・プロジェクト ファイナリスト

石原海(いしはら・うみ)

岩根愛(いわね・あい)

折笠良 (おりかさ・りょう)

佐藤浩一(さとう・こういち)

ファイナリストに選出された4名は、今後それぞれ新作映像作品の制作に取り組み、完成作品は次回の恵比寿映像祭2027にて発表される予定です。また、会期中には展示作品を対象とした審査会を実施し、特別賞を決定します。特別賞受賞者には、翌年度の恵比寿映像祭2028において特別展示の機会が提供されます。

【審査コメント】

候補者8人の作品はいずれも高いテーマ性を備え、実験的かつ挑戦的であったため、選考は活発な議論を経て、最終候補の選定は容易ではありませんでしたが、ファイナリストとして、①個人の記憶と社会問題を交差させ、周縁化された人々の生活史に光を当てる石原海、②綿密な現地調査に基づき、独自の視点から歴史的・社会的テーマをとらえてきた岩根愛、③文学作品や言葉そのものをモチーフに、アニメーション制作を行う折笠良、④産業社会/消費社会と、自然環境や生物との関係のフィールドワークから作品制作を行う佐藤浩一の4名を選びました。

【ファイナリスト プロフィール】

石原海|ISHIHARA Umi

ロンドンと北九州を拠点にする映画監督/アーティスト。個人的な記憶と社会問題を交差させ、周縁化された人々の生活史を描く映像制作に取り組んでいる。身近な人々や地域住民など、プロの役者ではない生活者たちと共に作品制作を行っている。過去の作品は、東京都写真美術館、国立国際美術館、福岡市美術館、ポンピドゥー・センター、ICA ロンドン、BFIサウスバンク、サウスロンドン・ギャラリー、ルイ・ヴィトン財団美術館、ロッテルダム国際映画祭、CPH:DOC など、世界中の美術館や映画祭で上映・展示されている。2019年英国のアートアワードBloomberg New Contemporariesに選出、2021年資生堂アートエッグ選出、2024年GQグローバル・クリエイティブ・アワード受賞。パブリックコレクションとして国立国際美術館、福岡市美術館に作品を収蔵。

岩根愛|IWANE Ai

東京都出身。カリフォルニア州ペトロリア・ハイスクールにてオフグリッドの自給自足生活の中で学び、1996年より写真家として活動。無形文化や自然伝承を主題に、写真・映像作品を制作・発表している。

移民を通じたハワイと福島の関係を追った写真集『KIPUKA』(青幻舎, 2018)を上梓、第44回伊奈信男賞、第37回写真の町東川賞新人作家賞、第3回プリピクテジャパンアワード受賞。アルル国際写真祭2024、ハワイトリエンナーレ2022など国内外で発表多数。ドキュメンタリー映画『盆唄』(中江裕司監督作品、2019年テレコムスタッフ)を企画、アソシエイト・プロデューサーを務めるなど活動は多岐にわたる。著作に『キプカへの旅』(太田出版, 2019)。写真集に『A NEW RIVER』『Coho Come Home』(ともにbookshop M, 2022/2024)。

佐藤浩一|SATO Koichi

1990年東京都生まれ。産業・消費社会とその背後にある欲望が、自然環境や生物といった非人間的な存在をどのように扱ってきたのかに関心を持ち、リサーチやフィールドワークを行いながら制作を行う。映像、音、香りなど複数の要素を組み合わせたインスタレーション作品を制作している。近年は特に水環境への関心から、地元を含む地下水の汚染などについても継続的にリサーチを続けている。主な近年の展覧会に、「L’Écologie des choses(モノのエコロジー)」(パリ日本文化会館、パリ、2025年)、「水の博物館」(トーキョーアーツアンドスペース本郷、東京、2025年)、「すべてのものとダンスを踊って―共感のエコロジー」(金沢21世紀美術館、石川、2024年)など。

折笠良|ORIKASA Ryo

1986年生まれ。茨城大学教育学部、イメージフォーラム映像研究所、東京藝術大学大学院映像研究科で学ぶ。石原吉郎の詩を元に制作した『水準原点』(2015)が毎日映画コンクール大藤信郎賞、ザグレブ国際アニメーション映画祭2016ゴールデンザグレブ賞などを受賞。2023年、MIYUプロダクション(フランス)カナダ国立映画制作庁(カナダ)、NEW DEER(日本)の共同製作で、アンリ・ミショーによるメスカリン体験を描いた同名の詩画集をもとに『みじめな奇蹟』(2023)を制作。オタワ国際アニメーション映画祭2023短編部門グランプリなどを受賞。2025年、柳井イニシアティブの企画「文学ビデオ」第2弾として高柳誠の同名の詩を原作とする『落書』(2025)が完成。

【第3回コミッション・プロジェクト審査委員】

沖啓介(メディア・アーティスト)

斉藤綾子(映画研究者、明治学院大学教授)

レオナルド・バルトロメウス(山口情報芸術センター[YCAM]、Gudskul Ekosistemキュレーター)

メー・アーダードン・インカワニット(映画・メディア研究者、キュレーター、ウェストミンスター大学教授)

田坂 博子(東京都写真美術館学芸員、恵比寿映像祭キュレーター)

今回の審査では、テーマに対してメディアの拡張性をもって取り組み、多様な映像表現に挑む作家たちが選出されました。来年度の恵比寿映像祭2027では、石原海、岩根愛、折笠良、佐藤浩一に制作委嘱した新作展示を行うとともに、審査会により特別賞を決定します。映像表現の広がりと、新たな展開にどうぞご期待ください。

恵比寿映像祭は、コミッション・プロジェクトを通じて、アーティストの創造的挑戦を中長期的な視点で支援するとともに、映像表現の現在地と未来を社会に向けて発信していきます。

恵比寿映像祭2026では、第2回コミッション・プロジェクト特別賞受賞作家である小森はるかによる新作展示を行っています。本展示は、恵比寿映像祭2026の総合テーマと呼応するかたちで構成され、ドキュメンタリーの歴史を継承しながら、見過ごされがちな風景や人々の営みに丁寧に眼差しを向けてきた小森の実践を、現在進行形の映像表現として具現化するものです。会場では、これまでの活動を振り返る作品群に加えて、新作2作品を展示しています。(※別紙2参照)

第2回特別賞受賞者の特別展示開催中

第2回コミッション・プロジェクト特別賞受賞者・小森はるか(恵比寿映像祭2025シンポジウムより)

第2回で特別賞を受賞した小森はるかによる展示。総合テーマ「あなたの音に|日花聲音|Polyphonic Voices Bathed in Sunlight」と連動しています。

小森はるか《おあがりんちょ》2026 年/56分53秒[参考図版]恵比寿映像祭2026コミッション・プロジェクト特別展示 Photo:新井孝明
小森はるか《いつも茶畑で歌っていた》2026 年/37分59秒[参考図版]恵比寿映像祭2026コミッション・プロジェクト特別展示 Photo:新井孝明

恵比寿映像祭2026 「あなたの音に|日花聲音|Polyphonic Voices Bathed in Sunlight」

会  期:2026年2月6日(金)~3月22日(日)

※月曜休館

※3F展示室を除く「恵比寿映像祭2026」は2月23日まで

時  間:

10:00–20:00(2月22日まで)

10:00–18:00(2月23日以降木・金は20:00まで)

※入館は閉館の 30 分前まで

会  場:東京都写真美術館3F展示室 料金:入場無料

出品作家:恵比寿映像祭2025特別賞受賞アーティスト 小森はるか