初日舞台あいさつ
日時:2月6日(金)
場所:テアトル新宿
登壇:寛一郎、岡本玲、松尾翠、中村旺士郎、中野翠咲、監督河瀨直美氏

俳優の寛一郎が6日、都内で行われた映画『たしかにあった幻』(河瀨直美監督)の初日舞台あいさつに登壇した。

本作は、「愛のかたち」と「命のつながり」をモチーフにして、日本の失踪者と心臓移植の現実を重ねて描く珠玉の人間ドラマ。『ファントム・スレッド』(2017)、『蜘蛛の巣を払う女』(18)などで知られるルクセンブルク出身のヴィッキー・クリープスが主人公・コリーを演じている。

河瀨組初参加で、コリーが屋久島で運命的に出会う謎めいた青年・迅を演じた寛一郎は、撮影を振り返り「この仕事を始めて今年で10年くらいになるのですが、デビュー作のような、自分が10年で培ってきたものを捨てなきゃいけないときもありました。裸のまま出るじゃないですけど、デビュー作のような気持ちで挑ませていただきました」と感慨深げに語った。

河瀨監督が「三國連太郎さんが見たらどう思うかな?」と尋ねると、「どう思うんですかね。そのむちゃぶり難しいですね」と苦笑。「浩市が見たら、どうかな?」という質問には、「親父が見たら、『大変だったな』くらいじゃないですかね」と答えを振り絞った。

また河瀨監督は、寛一郎について「初めてお会いした時に佐藤浩市さんに似ているなと思いました。仕草とか言葉を出されるときの雰囲気が似ているなと思ったんですけど、まったく違うものを持っている。この人にかけてみようと思いました」と言及。「例えば英語を即興的にネイティブに近いような形で出せる器用さを持っていたり、フランス語も含めて、音楽的な言語のセンスみたいなものが出せる人だと思っています」と称賛した。

中村は「この作品は、せりふがある役をいただいた初めての作品。僕にとって特別な作品の特別な日に、皆さんの前でごあいさつできること、とてもうれしく思います」と堂々とあいさつ。「そして、この機会をプレゼントしてくれた河瀨直美監督、スタッフの皆さん、本当にありがとうございます」と話すと、完璧なあいさつに会場からはどよめきが起こった。

中野も「明るい瞳(役名)がどんな思いを持って闘病しているかを想像しながら撮影に取り組んできました」とはっきりとした口調であいさつ。「病気を持っている子なので、不安や辛いことがたくさんあったと思う。それを周りには見せたくない子なので、それを隠しながらも、辛い気持ちも表現できたらいいなと思った。自分が病気をもっていたらどういう気持ちなのかを考えながらやりました」と、自身の演技を振り返ると、司会からは「(撮影時)9歳でそこまで考えているの?」と思わず感嘆の表情を浮かべた。  大人顔負けのあいさつをした2人に、河瀨監督は「言わせてないですからね?すごいです。尾野真千子を軽く超えてるでしょ?」と、自身が見出した大女優の名を挙げ絶賛した。

心臓病を患う少年・久志の母親・由美を演じた岡本は、役作りの一環としていわゆる「役積み」を経験したという。撮影前には久志役の中村とともに動物園を訪れ、観覧車に乗って写真を撮影した。その写真は思い出として撮ったものだったが、後に劇中の病室に飾られることになったという。撮影前から二人で過ごす時間を多く持つことができたと振り返っている。
一方の中村も、その写真を現在は自宅で額に入れて飾っていると明かし、岡本とは親しく交流し、撮影期間中も一緒に過ごすことが多かったと語った。

松尾は、中野翠咲が演じた心臓病で長く入院している石山瞳の母・裕子を演じた。「この作品の持つメッセージ性だったり力強さ、優しさ、光…私も撮影し、編集した、この形を今日、初めて見させて頂く。この場所にいさせて頂く事が奇跡」と感慨を口にした。