『兄を持ち運べるサイズに』ティーチイン上映会
ティーチイン上映会
日時:12月20日(土)
場所:TOHOシネマズ 日比谷
登壇:満島ひかり、中野量太監督
中野量太監督が脚本・監督を務めた最新作は、作家・村井理子氏が実際に体験した数日間をまとめたノンフィクションエッセイ「兄の終い」をもとに映画化した『兄を持ち運べるサイズに』。
疎遠状態にあった実の兄の突然の訃報から始まる家族のてんてこまいな4日間の物語が11月28日(金)より全国公開中です。
11月28日(金)より公開中の映画『兄を持ち運べるサイズに』の公開を記念して、兄の元妻・加奈子役を演じた満島ひかりと中野量太監督のティーチイン上映会が開催されました!
公開4週目に監督からの熱望で実現したという、満島ひかりと中野監督のティーチイン上映会。TOHOシネマズ日比谷の劇場には、映画を見終えたばかりで興奮冷めやらぬ満席のお客様が集まり、二人のレアな舞台挨拶の始まりを見守った。
最初の挨拶で満島は、「ティーチインする機会がなかなかないので色々お話できたらなと思います!よろしくお願いいたします。」とコメント。

続いて、中野監督が、「公開4週目を迎えて、こうして満席のお客様の前に立てるのは嬉しいです。そして、満島さんはティーチインが多分好きだと思うので、二人でティーチインするのは念願でした。」と語りかけると、満島は、「好きだと思います!一人一人とお話したいくらい」と答えていた。

ティーチインのトップバッターは、なんと中野監督自身。「現場で集中力がすごいなと思っていて、役づくりへのアプローチの仕方を教えてほしい」と満島に質問すると、満島は、「最近色々な人と話している中で、人と違うのかなと思うのは、解釈が深くなるので、脚本は結末から登場人物全員の最後のシーン・最後の台詞からさらっと読むところです。」と、独自の脚本の読み解き方を明かす。さらに、「そのあと頭からじっくりと、本当に自分がその場にいるような気持ちでしっかりと読みます。そのあとはほぼ読まずに、台本から感じたなにかを、撮影までになじませていく作業になります。例えば、今回は、多賀城に着いた後は、街をたくさん歩いてこんなところに看板があるのかとか感じながらなじませていきます。」と答え、そのアプローチに中野監督も驚いた様子を見せた。
その後、お客様からのティーチインがはじまり、本作をこの日初めて見た男性から、「良一と一緒に骨を拾うシーンと、良一に一緒に暮らそうというシーンが好きだったが、どんな気持ちで演じましたか?」と質問が飛ぶと満島は、「良一君とのシーンはどれもとても難しくて、特に骨を拾うのは日本独特の文化だそうで、世界の色々な人から不思議だと質問を受けました。」と振り返る。さらに、「(骨を拾う際に良一の箸の持ち方を直すシーンにおいて)監督も箸の持ち方にこだわっていて、自分が育てきれなかった子供に箸の持ち方を教えていいのかどうかの葛藤が一瞬あるだろうなと思いつつ、良一が一番好きだったはずのお父さんの最期だからちゃんと教えなきゃとも思ったり。でもあの場面は、味元くん(良一役)が良一そのままで立ってくれていた場面なので味元君と作り上げました。」と、その時の心境を明かした。
続けて、「良一にもう一度一緒に暮らそうというシーンは、私は台本を全部ゼロにして現場に臨むタイプで、泣こうと思っていたわけでもなかったのですが、彼の顔を見ているだけで涙があふれてきてしまって。実は、味元君は泣くシーンではなかったけれど、味元君も泣いてしまって。」と答えると、中野監督は、「あのシーンの集中力はすごかったです。なのであんまりテストもしなくて」と振り返り、それに対して満島は、「私は23歳ぐらいから母親の役をやってきて、子供たちはいつもピュアにまっすぐ向かってくるので、いつも助けられています」と答えた。
次の質問は満島にあこがれてお芝居をしているという女性から、「満島さんがお芝居をするうえで、一番大切にしているものを教えてください」と質問。「ありがとう!」と返した満島は、「役者も映画もお芝居も大好きですが、明日違う仕事になってしまっても仕方ないかという仕事でもあるので、そのあたりの覚悟は小さいころから持っていて、その時に後悔したくないので『昨日まで楽しかったな』と思える役者でいたいと思っています。11歳で初めて映画の現場に足を踏み入れた時に、こんな生き生きした大人たちがいるんだと。エンタメに触れることで誰かの生活が一歩でも1ミリでも動くことにかけている人たちがこんなにもいるということに毎回感動しています。ピュアでいること、でしょうか。ですので、現場でたくさん水を飲んで体の中の水分をきれいにして、人の声を聞こえなくならないようにしようとも思ってます。でも難しいな…」と、言葉を探す満島に、中野監督が、「僕は満島さんはお芝居の力を疑っていないと感じていました。こうすることがいい、と信じている強さがある。」と答えると、満島も、「目の前にいる人に感動したり、スタッフに感動したりすることを毎日見つけると、この人たちと一緒にやってるから大丈夫でしょ、と思えてくる。あとは、見た人が感じたことないことをつつかれて泣いてしまったり、『救われている?』と感じたり、本人が知らない感情を引き出したいとも思ってます。」と、俳優としての思いを語った。
お客様からの質問は続き、「本作での印象的だったシーンを」聞かれた満島は、「現場でも見ていて思ったのですが、スクリーンで観た柴咲さんやオダギリさんが『映画俳優』として存在していて、特にオダギリさんが理子に無防備な笑顔でカメラの前に、あんな優しい顔で立てるってすごいなと。映画への信頼感が尋常ではないなと。本当に映画が好きなんだなと感じました。」と、称賛。柴咲についても、「みんなの前でトライ&エラーができることや現場にとにかく自然にいるその立ち振る舞いもすごいなと思いましたし、すっぴんで鏡の前に立つシーンも、ありのままで立たれていてお客様みんなに柴咲コウという人生を見せている気がして、そんな二人の姿に感動して、映画に関わるうえでのとても大切なものを見せてくださったと感じていました。」と語った。

オダギリとの現場でのエピソードについて、「一緒にお芝居していると似ているところがあるのかラクチンで、(2作目となる)現場で逢うとホッとする俳優さんです。『いい役者さんとお芝居できるぞ』という嬉しさがあります。」と満島が答えると、中野監督が、「ガウン姿のオダギリさんが駅で走るシーンを撮影していたときに、休みだった満島さんが…」と話を振ると、満島が、「仙台に牛タン食べに行っていて、帰ってきたらオダギリさんがホームでガウンを着て撮影していたんです。」と撮影中の驚きのエピソードを明かした。お客様からは絶えず多く質問の手が上がる、作品の雰囲気が伝わるようなティーチインは、予定時間を少し超えるほど盛り上がりをみせた。
最後の挨拶で満島は、「皆さんのお話をもっと聞きたかったですが、本当に良い機会いただきました。現場にいる人が大好きで、映画への愛情を深まってきたなというのを感じていて。老若男女で色々な感性で映画を作れる現場にいるのはラッキーだと感じていて、今回は特にこれまでにないくらい、レビューをしこたま読んでいて、感想は様々で、その中にいくつか『満島さんの今までの役の中で1番好き』という感想もあり、自分が映画に対する緊張がほぐれてきた時期に、柴咲さんやオダギリさんたちをはじめとした先輩や中野監督と出会えてよかったなと思っています。ありがとうございました。」と話し、中野監督が、「いいタイミングで3人がそろってくれたのは本当に幸せな監督でした。現場もこれまでの自分の現場の中で一番コミュニケーションがとれていたのではと思います。作品にも自信を持っていて、色々な人の心に届くと思っているので、もっと広がってくれるといいなと思います。」と締めくくり、大きな拍手の中、ティーチイン上映会は終了した。
原作:「兄の終い」村井理子(CEメディアハウス刊)
脚本・監督:中野量太
キャスト:柴咲コウ オダギリジョー 満島ひかり 青山姫乃 味元耀大
制作プロダクション:ブリッジヘッド/パイプライン
公開表記: 11月28日(金)公開
製作幹事:カルチュア・エンタテインメント
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
©2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会





