この度、リム・カーワイ監督のデビュー作『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』デジタル・リマスター版が、2025年11月29日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開となり、リム・カーワイ監督による舞台挨拶が開催されました。舞台挨拶には、初日は主演の大塚匡将さん、2日目はアーティスト、ドラァグクイーンのヴィヴィアン佐藤さんも駆け付けました。
初日舞台挨拶

日程:11月29日(土)
場所:シアター・イメージフォーラム
登壇:大塚匡将(ア・ジェ役)、リム・カーワイ(監督)
2日目舞台挨拶
日程:11月30日(日)
場所:シアター・イメージフォーラム
登壇:ヴィヴィアン佐藤(アーティスト・ドラァグクイーン)、リム・カーワイ(監督)
インディペンデント映画界の名匠リム・カーワイ監督、
幻のデビュー作が15年ぶりにスクリーンに蘇る!連続舞台挨拶絶賛開催中!
映画『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』が、11月29日(土)にシアター・イメージフォーラムにて公開初日を迎えた。リム・カーワイ監督と、初日は主演の大塚匡将さん、2日目はアーティスト、ドラァグクイーンのヴィヴィアン佐藤さんが登壇し、舞台挨拶が行われた。
大阪を拠点に、香港、中国、バルカン半島などで映画を製作し、どこにも属さず彷徨う“シネマドリフター(映画流れ者)”を自称する映画監督リム・カーワイ。その原点となる『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』がデジタル・リマスター版として、15年の時を経てスクリーンに蘇った。
近年は東京国際映画祭コンペティション部門に『カム・アンド・ゴー』(2020)がノミネートされ、バルカン半島三部作『どこでもない、ここしかない』(2018) 『いつか、どこかで』(2019) 『すべて、至るところにある』(2023)、初のドキュメンタリー映画『ディス・マジック・モーメント』(2023)が公開され、映画監督として精力的に活動するも、2024年に突然の休業宣言をしたリム・カーワイ監督。
国境と言葉を超えて映画を作り続ける、旅する映画監督“cinema drifter”リム・カーワイ監督の原点となるのが、『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』だ。2000年代の自由で混沌とした中国で、国境を越えたインディペンデント映画人たちの情熱が凝縮した奇跡の作品。自分の存在が消失する恐怖、日常からの逃避を2部構成で、虚構と現実を行き来するふたつの世界が、映画的構造美の中でゆらめき、観客を白昼夢に突き落とす。

香港国際映画祭でリム監督が連れてきたおじさんは、なんとアンソニー・ウォン!
「今日は僕のデビュー作『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』で主演ア・ジェを演じてくれた、大塚匡将さんをお迎えして舞台挨拶を行います」と、リム・カーワイ監督が盟友大塚匡将さんを紹介すると会場は大きな拍手に包まれた。
「香港映画に憧れて香港で俳優になりたいと思った時に、友人からこれからは中国がおもしろくなると勧められて北京電影学院に行ったんです。2005年の北京はまさに人種のるつぼ。リムともそこで知り合って、長編映画を撮るというから「頑張って!」と言ったら、主役を頼まれたんです」と、リム監督との出会いを語った。当時、まだあまり中国語が得意ではなかった大塚さんは、「ネイティブにセリフを読んでもらって練習してたんですが、『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』の脚本を渡したら、「僕にこれは読めない。だって意味が分からなさすぎる。どう感情をこめたらいいかわからない」って、断られたんです(笑)。今日、15年ぶりにスクリーンで観て、当時はどういう感情で演じればいいのか自分も手探りだったのを思い出しました。ただ自分自身が年を重ねて観てみると、リムが伝えたかったのはこういうことだったのかなとか、少しわかった気もしますね。…いや、わかんないところもまだあるけど(笑)」と、主役に抜擢された時を回想した。
2010年、香港国際映画祭に出品されることが決まり、「大好きな香港に主演俳優として行けるのでワクワクして映画祭会場前でリムを待ってたら、なんかおじさん連れてきたんですよ。そのおじさんを「あ、こちらアンソニー・ウォンさんですね」って紹介してくれて!え?なんでそんなカジュアルにアンソニー・ウォン連れてきてんの?しかもこれから一緒に映画観るの!?」と、昔から変わらないリム監督の幅広いの人脈が大塚さんから披露され、会場にどよめきが起きた。
『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』は、2部構成で登場人物が別人として登場するなぢ、難解な映画と思われがちだが、「久々に故郷に帰ったら、誰も自分を知らない。そうした事は、誰の身にも起こりうることだと思っています。何が正しいか、何がリアルか、嘘か、夢か、現実なのか。この映画にはまだいろいろレイヤーがあるんですけれども、でも今、そういう全てのレイヤーも一つになってるんじゃないかなと僕は思うんですよね。」と、リム監督が15年ぶりに自身のデビュー作を振り返った。
「リムはものすごい情熱のひと。バルカン半島で撮影した『すべて、至るところにある』で休業宣言をしてたけど、本当に映画を撮りたいって気持ちがものすごい熱い男なので、昔から変わらず、いろいろな人がついてきてくれるのかなと思ってます」と、大塚さんがリム監督への次回作への期待を込めると、会場から大黄な拍手が起きた。
ヴィヴィアン佐藤さんが読み解く魅力とは─
リム監督が「ヴィヴィアンさんに気に入ってもらえて、コメントも頂き、今日一緒にトークすることができてうれしいです」と、ゲストのヴィヴィアン佐藤さんを紹介すると、「すばらしい、大絶賛です!」とヴィヴィアン佐藤さんが満面の笑みを浮かべ、2日目の舞台挨拶がスタートした。


「フレームに映ってるその景色とか、それからそこからそこで起きている音とか、それ以外の外のものとの関係性」にヴィヴィアンさんが言及した。本作中には鏡が何回か登場するが、「そのフレームが全部鏡だとすると、外のものと同調しているのか、していないのかが問題。それがすごく同調してる場合と、全く同調しない場合とがあって、すごく不可解で美しい映画だなと思いました」と、ヴィヴィアンさんが語ると、「鏡がよく出てきたと思うんですけれど、部屋という空間にも色々なレイヤーがあります。それは結構意図的に点在して作っていきました」と、リム監督が答えた。
映画の冒頭と最後には、AMラジオが象徴的に使用されており、「AMラジオってぴったり周波数が合わないんですよね。 ラジオをつけるといろんなノイズが聞こえてくる。 普段は聞こえない無線というか、そういったものが世の中には存在してる。 AMラジオをつけることで、そういった無数のものが急に見え出すというか。そういったものもすごくこの映画を象徴している」と、ヴィヴィアンさんが読み解いた。「鏡以外にもカメラワークもものすごく凝っていいて、すべてにおいて非常に饒舌でありながらミニマル。語るべきことが全部入ってるというか、すごくそういうのも面白い」と絶賛した。
「一番最初の作品は、映画監督に限らず、いろいろなものが詰め込まれているもの。その後に作られていく作品は、それを拡大して証明していくような、血が通うように証明していくというのもあると思う」と、ヴィヴィアンさんが語った。リム監督作品の変遷を知る上でも見逃せない1作になっている。
大塚匡将 ゴウジー(狗子) ホー・ウェンチャオ(何文超)
監督・脚本:リム・カーワイ
撮影:メイキン・フォン・ビンフェイ(馮炳輝)
録音:山下彩
編集:奥原浩志、Phillip Lin
美術:Amanda Weiss
音楽:Albert Yu
配給:Cinema Drifters
宣伝:大福
英題:After All These Years
2025/2010|マレーシア・中国・日本|モノクロ+カラー|DCP|ステレオ|98分
https://sites.google.com/view/afteralltheseyears2025/
©cinemadrifters





