映画

『宝島』東京キャラバン公開後舞台挨拶

東京キャラバン公開後舞台挨拶
日付:10月2日(木)
会場:新宿バルト9
登壇:妻夫木聡、大友啓史(監督)、真藤順丈(原作者)

混沌とした時代を、自由を求めて全力で駆け抜けた若者たちの姿を、圧倒的熱量と壮大なスケールで描く衝撃と感動のエンターテインメント超大作『宝島』。歴史の陰に埋もれたアメリカ統治下の沖縄の真実を描き切った真藤順丈氏の直木賞受賞作を、二度の撮影延期の危機を乗り越えながら完成させた魂のプロジェクト、映画『宝島』が9月19日(金)より全国公開中!

10月2日(木)、記念すべき全国キャラバン30都市目となる『宝島』東京キャラバンが開催!
主演の妻夫木聡、大友啓史監督、原作者・真藤順丈が登壇し、たぎる想いを胸に本作への情熱を伝え続ける全国行脚について、そして公開後から連日満員、異例の大反響を巻き起こしている沖縄への熱い感謝などを語り尽くした。
妻夫木は、「公開を迎えてようやく始まった気持ちです。『宝島』と共に歩んでいきたい」と感慨深げに挨拶し、登壇者全員で感謝の言葉を伝えた。

映画公開から2週間が経ち、全国の劇場では観客から熱のこもった感想やメッセージが寄せられている。SNSを中心に戦後の沖縄を描く試みに関する多様な意見が交わされる中、物語の舞台である沖縄の劇場では連日満席が続き、通常の約10倍の動員を記録する館も出ている。多くの劇場で2週連続の週末動員ランキング1位となるなど、大きな反響を呼んでいるという。妻夫木は「沖縄出身ではない自分にとって大きな責任を感じていたが、先人や現地の方々の想いを背負う覚悟で臨んだ」と語り、過去の主演作『涙そうそう』(2006年)から続く沖縄への強い思い入れを明かした。

また、「今まで見たことのない沖縄を映像で表現してくれて感謝しています」「この映画は『生きる力』を伝える作品だと感じました」「『なんくるないさ』という言葉の重みを改めて教えてくれた」など、沖縄から寄せられた感想が紹介されると、会場は温かな拍手に包まれた。妻夫木も「沖縄の方々に届いているのが嬉しい」と笑顔を見せた。大友監督も公開後に沖縄を再訪したことを明かし、「作品を通して何を届けようとしたのかを改めて確認できた」と振り返った。

さらに監督は「沖縄の歴史には、流れる時間が突然断ち切られるような出来事が多くあった。そうしたことを伝えたいと思ってこの映画を作った」と語り、作品に込めた思いを改めて説明した。

トークでは観客から寄せられた感想や疑問に応じる形で進行し、まず上映時間191分について話題が及んだ。原作者の真藤は「小説の刊行当時も賛否両論があったが、それも健全な受け止め方だと考えている。無関心が一番悲しいので、映画でも議論が生まれているのは喜ばしい」と振り返った。

この発言に共感した大友監督は「沖縄で感じた豊かな時間や歴史の厚みを表現するには、表面的な描写では足りない。編集段階では上映時間や構成について何度も議論を重ねたが、作品の本質を伝えるために削ることはできなかった」と語った。妻夫木も「演じている時は役として日々を生きることに集中していたが、完成した映画を初めて観たときは時間を忘れ、観終えた後もしばらく席を立てなかった」と感想を述べた。

続いて、作品が描く「統治下の沖縄」という題材についても話が及んだ。真藤は、小説執筆にあたり徹底的な取材や時代考証を行った経緯を紹介し、「当初は主人公グスクを東京から沖縄に渡ってきた人物として描く構想もあったが、その視点では書けないと感じ、現地に生きる人物として設定した。沖縄出身ではない自分が歴史を生きた人々にどこまで近づけるかは大きな課題だった」と当時を振り返った。さらに「大友監督が“映画で描きたい”と言ってくださったことに大きな挑戦心を感じた。監督が目指す“追体験”という姿勢は、執筆時に自分が大切にしていたこととも重なり、ぜひ託したいと思った」と映画化の経緯を語った。

一方、妻夫木は「この映画をきっかけに初めて知る事実も多かった」と述べた。その上で、「過去の出来事を過去だけのものにせず、未来へと繋げていくことが大切だと感じた。痛みを知ることで『同じ過ちを繰り返さない』という思いにつながるのではないか」と語り、学び続ける姿勢の重要性を強調した。

さらに「戦争によって失われた命は戻らない。そのような時代が二度と訪れてほしくない」と述べ、自身も親となった立場から「次の世代に平和な未来を残したい」と率直な思いを伝えた。壇上では感情がこみ上げ、言葉を詰まらせながらも真摯に語る姿に、会場からは温かい拍手が送られた。

イベント後半には、妻夫木が演じるグスクの役作りにおいて大きな影響を与えた佐喜眞美術館館長・佐喜眞道夫氏からの手紙が紹介されるサプライズもあった。

手紙では、沖縄戦や米軍基地問題への言及とともに、戦果アギヤーと呼ばれる若者たちへの敬意、そして作品の中で描かれたコザ暴動の迫力への感想が綴られていた。また、妻夫木が美術館を何度も訪れ、「沖縄戦の図」の前に立っていたことへの感謝や、映像を通して伝わった人々の強さと共同体への愛情への思いも記されていた。

「沖縄戦で地上のすべてを吹き飛ばされた沖縄には80年たった今なお巨大な米軍基地が居すわってます。その圧倒的な不条理に果敢に飛び込んでいった沖縄のニーニー(兄貴)達、戦果アギヤーは、少年だった私にとって英雄でした。コザ暴動のシーンは圧巻でした。私も中に入って車をひっくり返したい思いになりました。妻夫木さんが役作りのために何回もご来館され、丸木位里・丸木俊の『沖縄戦の図』の前に立たれていたと伺い、しみじみとありがたさを感じています。そんな妻夫木さんが演じられた、リアルに描かれた映像を通してみると、その壮絶さに少しうろたえました。しかし、そんな中で真っ直ぐに生きようとする青年たちの姿に感動しました。困難を乗りこえるために突っ込んでいった人々の心の根底に何があったのか。忘れていた共同体と人々への深い愛情を思い出させてくれました。 佐喜眞 道夫 佐喜眞美術館 館長」

MCによる代読を真剣に聞き入った妻夫木は、言葉を噛みしめながら手紙を受け止めた様子で、「佐喜眞美術館で出会った『沖縄戦の図』は、『宝島』と向き合ううえで自分にとって大きな支えとなった。これからの人生においても大切な拠りどころになると思う」と述べた。

さらに、「この作品を通して自分の死生観が変わった」とも語り、コロナ禍で祖母を亡くした経験に触れながら、「当時は何もできなかったことが悔しかったが、『宝島』を通して前向きに受け止められるようになった」と心境を明かした。そのうえで、「作品を通して多くの宝を見つけられた。観てくださった皆さんにも、それぞれの宝を見つけてほしい」とメッセージを送った。

舞台挨拶の最後にはフォトセッションが行われ、観客とともに掛け声を上げてイベントを締めくくった。

『宝島』©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

出演:妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太
監督:大友啓史
原作:真藤順丈『宝島』(講談社文庫)
配給:東映/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

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