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錦秋歌舞伎特別公演 2025 中村勘九郎 × 中村七之助 × 上田秀一郎 鼎談

2025年10月に全国5か所で開催される『中村勘九郎 中村七之助 錦秋歌舞伎特別公演 2025』に向け、中村勘九郎 × 中村七之助 × 上田秀一郎による鼎談が到着した。

――まずは、みなさんの“出会い”について教えてください。

上田秀一郎:初めてご一緒させていただいたのは2008年、ベルリンとルーマニアのシビウ、そしてシアターコクーンで行われた公演でした。『夏祭浪花鑑』に太鼓奏者として共演させていただき、歌舞伎の現場に関わるのはあれが初めてで、当時は本当に緊張の連続でしたね。

中村勘九郎:でも、最初から馴染んでいらっしゃいましたよ。全く違和感がなかったです。本当に、天性の“人たらし”なんですよね(笑)。

中村七之助:僕のことも最初から「たかちゃん」と呼んでくれていました(笑)。何度も共演を重ねているので、もっと前からの印象があるくらいですが、初対面だったのにいろんなところへ一緒に行きました。

中村勘九郎

 

――共演の中で、特に印象に残っている出来事はありますか?

中村勘九郎:やはり、2011年3月の博多座で父に代わって出演した『夏祭浪花鑑』ですね。代役というプレッシャーもありましたが、上田さんの太鼓が芝居の空気をしっかり支えてくださって、そこから新しい表現が生まれた手応えがありました。

上田秀一郎:あのときは立ち回りの音のテンポや間合いを、皆さんと一緒に試行錯誤しながら創り上げていったのが印象深いです。即興的で、まさにライブ感のある創作ができた、貴重な経験でした。

――2024年の十八世中村勘三郎十三回忌追善「三島村歌舞伎」でも共演されましたね。

中村勘九郎:あれは嵐が続いた後の、まさに“奇跡”の舞台でした。前乗りするはずが前日のフェリーが欠航となって当日入りになってしまい、サウンドチェックもできずに本番に突入したので、あっという間に過ぎていったという感覚です。ほとんど記憶がないといっても過言ではないですね。

上田秀一郎:僕らはその場で演奏することはできましたが、本物の船を使ったり、屋外に作られた特設ステージだったりするので時間のない中で、いろいろなことを判断されるのをそばで目にしました。みなさん、本当によく乗り越えたなと思います。翌日、屋外にある絶景のお風呂に行けたのは、楽しかったです。

中村七之助

 

――今回の「錦秋歌舞伎特別公演2025」の見どころを教えてください。

中村勘九郎:2011年の公演では津軽三味線の髙橋竹童さんとご一緒しましたが、今回は長唄の囃子方の皆さんが入り、三味線も変わります。そして、上田さんが太鼓ソロで演奏される。つまり『芯』そのものが、まったく新しい作品になります。

中村七之助:私は女方の白塗り・扮装で『元禄花見踊』を披露させていただきます。とても華やかで、歌舞伎舞踊の入門編としてもぴったりの演目です。観たことがない方にも、楽しんでいただけると思います。

上田秀一郎:太鼓ソロで演奏する『光の道標』は、2011年の東日本大震災の支援活動の中で生まれた曲です。太鼓が持つ“祈り”の力を信じて、観客の皆さんの心にしっかりと響く音をお届けしたいと思っています。

――全国巡業という形での公演について、どのような意義を感じていらっしゃいますか?

中村勘九郎:歌舞伎をまだ観たことがない方に“最初の出会い”を届けること、それがこの巡業の一番の意義だと思っています。劇場まで足を運ぶのが難しい方の元へ、私たちが出向く。今回で20年目を迎えますが、こうした活動はこれからも大切に続けていきたいですね。

上田秀一郎

 

――巡業で、特に楽しみにしていることはありますか?

上田秀一郎:やっぱりサウナです(笑)。お二人とも本当にサウナがお好きで、公演先ごとに「サウナ巡業」と言っていいくらい、探しに行ってますね。

中村七之助:以前はお酒の時間が楽しみでしたが、今は「整ってからの一杯」という感じです(笑)。体にも心にもいい時間です。

――最後に、公演を楽しみにしている皆様にメッセージをお願いします。

中村勘九郎:「歌舞伎 × 太鼓」という異ジャンルの融合から生まれる、新しいエネルギーをぜひ感じてください。しゅうちゃん(上田さん)の背中の筋肉も、密かな見どころですよ(笑)。

中村七之助:『元禄花見踊』は絵的にも非常に華やかで、歌舞伎初心者の方にもおすすめです。トークコーナーも含めて、舞台と客席が一体になるような時間を過ごしていただけたら嬉しいです。

上田秀一郎:太鼓の響きで、皆さんの心に小さな火が灯るような舞台を目指して、全身全霊で演奏いたします。どうぞご期待ください。

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