第78回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品されたウェス・アンダーソン監督の最新作「ザ・ザ・コルダのフェニキア計画」メイキングシーンと、本作の魅力を紹介する特別映像が公開された。
今作は、「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」(21)にも出演したベニチオ・デル・トロを主演に迎え、ケイト・ウィンスレットの娘で俳優のミア・スレアプレトン、「バービー」(23)でアランを演じたマイケル・セラ、アカデミー賞ノミネート俳優リズ・アーメッドらウェス組初参戦のキャスト、ウェス作品常連のトム・ハンクス、スカーレット・ヨハンソン、ブライアン・クランストン、マチュー・アマルリック、ジェフリー・ライト、ルパート・フレンド、ホープ・デイビス、そして物語の重要なカギを握る人物にベネディクト・カンバーバッチと超豪華キャストが競演し、ウェス・ワールドを盛り上げる。
ヨーロッパ屈指の大富豪ザ・ザ・コルダ(ベニチオ・デル・トロ)は、フェニキア全域に及ぶ陸海三つのインフラを整備するという大規模プロジェクト「フェニキア計画」の実現を目指していた。全大陸で最も引く手あまたのディールメーカーで、非情な資本家、実業家、事実上の外交官として、定住所なくして複数のパスポートを持ち、国境にもルールにもほとんど縛られることなく各国を飛び回っている。しかし、冷酷で手段を選ばないやり口から、幾度も暗殺を仕掛けられ、その度に奇跡的に生き延びてきた。そんなザ・ザの生涯をかけた一大プロジェクトのさなか、ライバル企業はもちろん、各国の政府までもがザ・ザの命を狙い始める。
はじめに登場するのはザ・ザの6度目となる墜落現場のシーンだ。ジャングルの奥地に墜落したザ・ザたちは、半壊した機体のなかでしばらく過ごすことになるが、ジャングルでの墜落の直後には、デル・トロとセラが体当たりで挑んだ“底なし沼シーン”も登場する。底なし沼にあやまって落ちたザ・ザを、ビョルンが沼に飛び込んで助けるというシーンは、CGやVFXを使用せず、実際にデル・トロとセラが底なし沼に入って撮影されている。
さらに、アンダーソン監督やスタッフ陣のこだわりを詰め込んだセットも紹介。ザ・ザ邸のいたるところに飾られている絵画や美術品は、実在の本物が使われている。アンダーソン監督が本作に着手した当初から、本物を使うことにこだわり、ルノワールやマグリットといった名匠の絵画たちがザ・ザ邸に集結し、彼の持つ莫大な資産を表現する。
ちなみに、欧州一の大富豪であるザ・ザの邸宅は、実際の屋敷をモデルにしているという。なかでも最も重要な着想源になったのは、ポルトガルの実業家で“ミスター5%”と呼ばれたカルースト・グルベンキアンのパリの屋敷。実在の実業家の屋敷にインスピレーションを得て作られたザ・ザ邸は圧巻の迫力。くわえて、ザ・ザ邸のエントランスギャラリーは、ベルリン一帯の城や邸宅でよく用いられているトロンプルイユ技法を駆使した大理石風の壁と円柱が再現されている。見た目だけを似せるのではなく、当時行われていた本来の工程と同じように手描きで製作するというこだわりぶり。数々のアンダーソン監督作品でタッグを組み、本作でも美術を担当してきたアダム・ストックハウゼンは、「ザ・ザの屋敷のデザインはまさに冒険だった」と話す。
そして、物語の最後の舞台であり、ザ・ザとヌバルおじさんの決戦の地となるホテル。ザ・ザの祖父が建築し、かつてはザ・ザの父が所有していたという設定のホテルは、エジプシャンリバイバル様式のスペースにヒエログリフをデザインしたエジプト風。ストックハウゼンにとっても、お気に入りのセットだという。
デル・トロはこれらのこだわりの詰まったセットで作られた本作を「重厚な世界」と表現し、「本当に素晴らしい体験」ができると絶賛。その世界観を評価するが、「最終的に心を満たしてくれるのは 人間らしさではないかな」と結ぶ。娘との長い旅のなかで、ザ・ザの“人間らしさ”が浮かび上がる瞬間をぜひ劇場で確かめてほしい。
「ザ・ザ・コルダのフェニキア計画」は9月19日からTOHOシネマズ シャンテ、渋谷ホワイトシネクイント他全国で公開。