第77回カンヌ国際映画祭でインド映画史上初となるグランプリを受賞した『私たちが光と想うすべて』のパヤル・カパーリヤー監督の初長編デビュー作『何も知らない夜』の日本版予告編とポスタービジュアル、新場面写真9点、監督コメントが解禁されました。
カパーリヤー監督がインド映画テレビ技術研究所の学生であった自身の体験を元に映画化したドキュメンタリー。映画大学の寮から学生L(エル)の恋文が入った小箱が発見され、Lの手紙が語るカースト制度によって阻まれた恋人たちの苦難を背景に、2016年に実際に起こった政府への抗議運動、極右政党とヒンドゥー至上主義者による学生運動の弾圧事件の真実を描き出します。
到着した予告編では、ダンスを踊り、ベッドに横たわりうたた寝をする大学生の若者たち、家族との食事会や婚礼などの日常の映像が、次第に学生たちの路上デモや警官たちとの緊迫した衝突シーンなどリアルな闘争の様子へ変化し、モノクロームと淡いカラーの映像が混ざり合い、フィクションと現実の境界線が失われていく様子が描かれています。
カパーリヤー監督は2017年頃から自分たちの身の回りや友人たちを撮影し、大学で友人たちが撮影した映像や古い家族のアーカイブ、ネット上の投稿画像などを収集。記憶のアーカイブともいえる映像群からイメージを発見し、そこに架空のラブストーリーを加え、映像を再構築し本作を作り上げました。叶わぬ愛の物語と記録映像を通じて、インドの社会の問題を炙り出す。
『何も知らない夜』は第74回カンヌ国際映画祭では監督週間に選出され、ドキュメンタリー賞にあたるルイユドールを受賞、2023年の山形国際ドキュメンタリー映画祭でも大賞を受賞しました。
以下、コメントが到着しています。
パヤル・カパーリヤー(監督)
『何も知らない夜』は、インドの公立大学制度への讃歌です。何世紀もの間、社会の特定の層は教育を受けることを否定されてきました。インドの公立大学制度は、こうした歴史的な過ちを正すために作られたのです。いまだにカーストやその他の差別がその固有の構造の中に存在しているため、必ずしも成功しているとは言えないかもしれません。それでも公立大学は今もなお、物理的にも知的にも真の自由──何ものも神聖視することなく、どんなことでも疑うことのできる自由──をもたらす空間になりうるでしょう。これこそが、私たちが目指すべき未来の世代の自由であり、この自由を手にした若者たちが、自分たちを縛り付ける社会から自由になれるようにするためのものです。
この映画は、優しく女性的な声という視点から語られる、長い夢なのです。
『何も知らない夜』(原題:A Night of Knowing Nothing)
監督・脚本:パヤル・カパーリヤー
撮影・編集:ラナビル・ダス
音楽:ドリティマン・ダス(Topshe)
声の朗読:ブーミシュタ・ダス
2021 年/フランス、インド/ヒンディー語、ベンガル語/103分/1.33:1/パートカラー
/字幕:藤井美佳
2025年8月8日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか限定公開
配給:セテラ・インターナショナル
©Petit Chaos – 2021
『私たちが光と想うすべて』(原題:All We Imagine as Light)
監督・脚本:パヤル・カパーリヤー
出演:カニ・クスルティ、ディヴィヤ・プラバ、チャヤ・カダム
2024年/フランス、インド、オランダ、ルクセンブルク/マラヤーラム語、ヒンディー語/118分/1.66:1/字幕:藤井美佳/PG12
日本公開:2025年7月25日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほかロードショー
配給:セテラ・インターナショナル
公式サイト
© PETIT CHAOS – CHALK & CHEESE FILMS – BALDR FILM – LES FILMS FAUVES – ARTE FRANCE CINÉMA – 2024