片渕須直監督が『この世界の片隅に』で意識した未来への継承
オーディオビジュアル作品の創作者である脚本家及び監督の権利の代表と管理を行う国際的連合体である国際オーディオビジュアル創作者連合(AVACI)と、AVACI発足の母体となったラテンアメリカオーディオビジュアル創作者団体連盟(FESAAL)の年次総会が10月20日(火)に日本で開催された。
さらに、本日21日には、片渕須直監督による特別講演「 映画監督と権利〜日本における アニメーション制作の現場から」が実施された。
年次総会は毎年異なる国で開催され、2022年に韓国・ソウルで開催された際には10カ国から66名の映画・メディアクリエイターに加え、映像著作者の権利に関する議論に関わる著作権利団体、法律専門家、公的機関の代表者が一堂に集結!
その後、2023年はリオデジャネイロ、2024年はメキシコシティ、2025年はザグレブで開催されました。今回の東京での開催は2022年以来のアジア開催となる。
世界でも有数の重要な映像産業を有しており、1899年以来ベルヌ条約の締約国でもある日本。しかし、日本のオーディオビジュアル創作者、特に監督の状況は他の多くの国とは異なっている。日本の著作権法では、映画作品の著作財産権(経済的著作権)は、一般的に監督ではなく製作者(プロデューサー)に帰属している。監督は著作者として認められ、著作者人格権を保持しているが、映画作品そのものの著作財産権は一般的に保有していません。今回、年次総会を開催することで、この問題への注目を高め、世界各地の映像作家や団体と経験を共有する機会として日本での開催を決定した。
片渕須直監督が日本における アニメ作りの現状と創作者の権利について語る特別講義も開催!
総会2日目となる21日には各国によるトークセッションが開催され、その中で映画『この世界の片隅に』を手掛けた片渕須直監督も登壇。日本のアニメの現状から、昨今盛んに作られている4Kリマスター版と創作者の意図との乖離という現象を踏まえ、「アニメーションの未来に向けて、オリジナルの芸術的ビジョンをいかに守るか」というテーマを主軸に特別講義が行われた。
開催日時:10月21日(水) 9:00~
会場:ハイアット リージェンシー 東京 センチュリールーム (東京都新宿区西新宿2丁目7−2)
登壇者:片渕須直監督 /聞き手:藤津亮太(アニメ評論家)
昨日の総会に続き、2日目には片渕須直監督による特別講演「映画監督と権利〜日本におけるアニメーション制作の現場から」が行われた。日本では監督は著作者ではあるが、著作権者を持っていない。そんな現状の中で、アニメの仕事に携わって45年となり、「自分の人生がアニメと繋がっている」という片淵監督が今回フォーカスするのは、「アニメーションの未来に向けて、オリジナルの芸術的ビジョンをいかに守るか」というテーマ。
1000年前の日本を舞台にした新作『つるばみ色のなぎ子たち』の制作を続けている片淵監督は、色や動きの根拠について重要性を力説する。「この映画には根拠があって、実際に1000年程度前の手記をベースに物語を作っています。ただ、1000年前の情報は写本(書き写したもの)しかないため、オリジナルのものは残っていません。写本は書き写すことによって少しずつ内容が変わっていって、本来の著作者の意図は伝わりにくくなっています。それを自分自身で1000年前に立ち返って、汲み取りながら映画に反映しようとしています」とこだわりを明かし、登場人物が着ている服の色についても「何を材料にして染色したかということを確かめたうえで、実際に木を貰ってきて本当にその色になるのかという実験もしています」と、色だけでなくサイズや着ている時の動きなど考古学との共同研究をするほどの根拠へのこだわりを明かした。
「映画は文化財的な価値があると思うんです。その文化財的な価値というのはストーリーが持つ社会性が重視されていますが、動きだったり色だったりといったものが芸術性の源であるはずなので、すべてを現代の感性にあわせるのではなく、その時代が形式的に時系列的に記録されるべきではないかなと思います。そういう意識を多くの人たちと共有できるかどうかにかかっていると思います。アニメーションが数十年の歴史を持って、ちゃんとした一つの芸術性のあるジャンルとして認めてもらいたいですね」と、考古学的なアプローチで保存されるべきものとして意識してほしいと考えを明かす。













