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映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』第45回台北金馬映画祭、クロージングステージ舞台挨拶

台湾の首都・台北市で開催中の、台湾最大かつ最古の国際映画祭「第45回台北金馬映画祭」にて、映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』が閉幕作品に選出。クロージングステージ&舞台挨拶に、主演の西島秀俊、共演のグイ・ルンメイ、監督の真利子哲也が登壇した!

舞台挨拶に登壇した西島は、「大家好,我是西島秀俊」と中国語で挨拶し「真利子監督とはずっと仕事をしたいと思っていました。その監督がアメリカで撮る、そしてグイ・ルンメイさんとご一緒できるということで、きっとすごく大きなチャレンジになる作品だろう、きっと素晴らしい体験ができるだろうと思いました」とオファーを受けた際の心境を語り、ルンメイも「真利子監督からお声がけいただけたことは、本当に光栄でした。監督の作品を拝見して以来、『こんな監督の指導のもとで演じることができたら、私の演技は今までとは違うものになって、これまで見せたことのない力を引き出せるんじゃないか』とずっと思っていました」と振り返り笑顔を見せた。

監督である真利子も「『Dear Stranger』が台湾で公開されることをとても嬉しく思います。ニューヨークでの撮影は大きなチャレンジではありました。英語の劇ですとか、アメリカのスタッフと一緒に撮影するなど、いろいろ挑戦がありました。でもその分出来上がった後には、二つとないような映画になったと思っております」と自信を覗かせ、出演の2人についても「西島さんは自分が10代の時から見ている俳優さんで、普段から映画を愛していらっしゃる方というのは知っていたので、いつかご一緒したいと思っていました。ルンメイさんは『藍色夏恋』で知って、これまでいろんな映画に出られている中で、一つのドラマを背負って、すごく繊細なお芝居からミステリアスなお芝居までされる方だと知っていたので、今回ご一緒できて夢のようでした」と語り、作品への確かな手ごたえを述べた。

さらに本作について西島は「賢治は海外で暮らしていて、仕事のタイムリミットもあり、奥さんとは母国語ではない言葉でコミュニケーションを取っている。そんな中で“ある秘密”を抱えているという特殊な状況ですが、僕は皆さんにも何か共感を持って観ていただけたらと願いながら演技をしていました。家族のためにと思って仕事をしていても、それが結果的に家族にマイナスになってしまったり、真実に直面しないことで、人生がより難しくなったりということは誰にでもあると思います。そういう部分に共感してもらって、そして最終的に何か一つ、希望みたいなものや、真実に正面から向き合うことで、それがどんな辛い未来であっても、新しい未来を選択できるということを感じていただけたら幸せです」と作品に込めた思いを述べた。

ルンメイも「不安もありましたが、『女性が家庭と仕事をどう両立するのか』など多くの現代的なテーマを内包した哲学的な脚本だったので、ぜひ出演したいと思いました」と作品の魅力とともに出演の決め手を明かした。

さらに、本作のひとつの鍵となる人形劇のシーンについてルンメイは、「人形劇は、この役にとってすごく大切な要素なんです。あれは彼女の『情熱』の一部でもあり、言葉だけでは表現しきれない思いを伝える手段でもある。だからこそ、あの表現を大事にしたいと思いました。撮影の準備では、シカゴの人形劇の先生に一対一で教わりましたが、正直ものすごく不安でした。練習中も、演出的にどう組み立てれば『この人形劇が主人公にとってどれほど大切なのか』を観客に瞬時に伝えられるのか、試行錯誤の連続で……心身ともにボロボロになりました。でも、その過程がすごく爽快でもありました。新しい芸術の扉が開いたようで、とても多彩で美しい世界だと感じました。それに、私自身にとっては『自分の身体そのもので表現しなくてもいい』という別の芸術的な拠り所を見つけた感覚があって、人形という存在の後ろに身を置きながら、自由に遊べるような喜びがありました。」と当時の苦労を振り返った。

真利子監督は自身の作品でよく描かれる「暴力」というテーマの今作での捉え方について、「今回の映画は、賢治とジェーンの関係性を描こうと思って始めました。なので、いわゆる暴力というバイオレンスなシーンは少ないかもしれないけれど、少なくとも賢治の生きづらさ、不安定さみたいなことと、ジェーンの葛藤、その心理的なものを描こうと思って作りました」と語った。

舞台挨拶では観客からのQ&Aも実施。西島は「西島さんは本来アクションが得意なのに、あえて不器用に見える動きを、どうやって演技で作られたのでしょうか?」という質問について、「あの格闘のシーンは、監督から二人ともケンカには慣れていない。だから、すごくカッコ悪く、でもすごくリアルに、生っぽく格闘をしてくれという演出がありました。相手のドニー役のジュリアンもアクションが上手そうでしたが、(それに応えて)ああいう形のアクションをしてくれて。それが素晴らしかったです」と答え、監督も「あの格闘のシーンは、派手に見せて、エンターテインメントとして見せるカット割である必要はなくて。やっぱり賢治とドニーの二人を見せたかったので、リアリティを大事にするために、長回しで撮影させてもらいました」と演出について明かした。

ルンメイには「ルンメイさんの人形とのシーンがとても美しく感じました。人形の目に涙も見えました。すごく感動的で、どうやって役作りや会話、魅力的なダンスに至ったのか、知りたいです」という質問が。これに対しルンメイは、「あのシーンは、実は撮影初日に撮ったものなんです。その時、シカゴの人形劇のアート・ディレクターと一緒に、どう振付を作るかを10日ほどずっと考え続けました。そしてあのシーンでは、人形と私が絶えず交差し続けなければならないんです。あのシーンの中には、私が本当は口に出したいのに出せなかった、怒りや恨み、非難など、複雑な気持ちを全部表現したいと思っていたので、かなり時間をかけました。それを感じ取ってくれてとても嬉しいです。そして私自身は、その演技が終わった瞬間、アート・ディレクターを抱きしめて号泣しました。演じている間ずっと感情を抑え込まなければならなかったので、終わった途端に抑えきれなくなって、崩れてしまいました」と人形劇に込めた思いと覚悟を吐露した。他にもさまざまな質問を受け、大盛況の中舞台挨拶は幕を閉じた。

さらに本映画祭では、「その年最も注目されるべき一人の映画人」として、西島秀俊が“焦点映画人”に選出。『ドライブ・マイ・カー』や『CUT』など西島の出演作の特集上映が組まれるほか、『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』の上映後舞台挨拶に加え、21日には映画業界向け特別講座「マスタークラス」に登壇し台湾の映画人と対談、さらに『ドライブ・マイ・カー』の上映後イベントにも出席。“焦点映画人”として、映画祭を盛り上げる西島の様子も必見だ。
そして、本映画祭に合わせ、台湾での『Dear Stranger』の公開が2026年1月16日(金)に決定したことが発表された! 海外でも注目を浴びる本作に、まだまだご注目いただきたい。

『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』出演:西島秀俊 グイ・ルンメイ
監督・脚本:真利子哲也
配給:東映
©Roji Films, TOEI COMPANY, LTD.

『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』

公式サイト:https://d-stranger.jp/

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