公開初日舞台挨拶
日時:4月10日(金)
場所:TOHOシネマズ日比谷
登壇:高橋一生、蒼戸虹子、黒崎煌代、渡辺一貴(監督)

荒木飛呂彦の人気コミックを実写化した『岸辺露伴は動かない』シリーズを大ヒットに導いた監督・渡辺一貴が手掛ける初のオリジナル作品で、主演に高橋一生を迎えた映画『脛擦りの森』(読み:すねこすりのもり)が、全国公開中。

4月10日(金)の公開初日舞台挨拶に主演の高橋一生、共演の蒼戸虹子、黒崎煌代、そして監督の渡辺一貴が登壇。映画を観終えたばかりの観客に高橋が「いかがでしたでしょうか?」と問いかけると、客席からは温かい拍手がわき上がる。渡辺監督はあいにくの天気の中で、劇場に足を運んだ観客に感謝の言葉を口にしつつ「どんよりとした曇りだったり、晴れ間がさしたり、雨が降ったり、皆さんにとっては大変な時においでいただきましたが、この映画にとってはふさわしい天気なんじゃないかと思っております」と笑みを浮かべる。

岡山県に伝承される妖怪すねこすりを題材にした、この不思議な物語の脚本を最初に読んだ際の印象について、高橋は「セリフも少なくて、淡々とお話が進んでいくように見えますが、実際にロケ地での撮影を経験すると、台本の世界がなぜ端的だったのかというのが分かる。僕らで膨らませるための台本であり、現場の世界観を吸収して、さらに膨らんでいく台本なんだと感じました」と岡山のロケ地に実際に立つことで雄弁さを増していく脚本だったと振り返る。

高橋一生

蒼戸は「ひとつ気になり出すと、全部が怖く見えてくるというか、台本を読んでいままで感じたことのない感覚になりました。でも、違う世界の話ではなく、本当にありそうだなと感じるのもすごく面白いなと思いました」と印象を口にする。

蒼戸虹子

黒崎も「じんわりと怖いというか、背中が寒くなる――でも、そこに愛があるんですね。そこが余計に寒くなるような…。妖怪をテーマにした作品で、ここまで“愛”をテーマにした作品は見たことがなかったので、撮影が楽しみになりました」と本作の不思議な魅力を語った。

黒崎煌代

渡辺監督はそもそも、なぜすねこすりという妖怪を題材にしたのか?という問いに対し、NHKの局員時代に最初に4年ほど赴任したのが岡山であったことを明かし「岡山県北部で牛飼いの老夫婦を取材した時に、周りの方から昔話や子どもの頃に経験したお話をお聞きして、すごく記憶に残っていました。岡山を舞台にした 映画を……という話になり、そのことを思い出して、伝承や古いお話を取材していく中で、いろんな妖怪の話が出てきて、スネコスリと出合いました。すごく面白いというか、人に対して悪意があるわけでなく、ただ転ばせる存在というのに惹かれて、この物語を掘っていったらどうなるかなと思いました」と本作が生まれたきっかけを明かしてくれた。

渡辺一貴(監督)

劇中で高橋は、若い男と老人の両方を演じている。特殊メイクを施してまで、老人の役を高橋に演じてもらおうと考えたのはなぜなのかを尋ねると、渡辺監督は「一生さんが、NHKのトーク番組にゲストで出られた時、最後に一生さんが『すねこすりが好きです』と言って終わったっていうことがありました(笑)。そのことは覚えていたんですが、スネコスリを題材に脚本を書いている時は忘れていて、でも『スネコスリってどこかで聞いたことあるな……?』ということだけが残っていたんです。脚本を書き終わって、スタッフと話してる時に、そういえば一生さんが言ってたのが、スネコスリだと。そこで、『老人役を一生さんにやっていただいたら、さらに深みのある話になるんじゃないか?』ということでオファーさせていただきました」とすねこすりと高橋さん、そして渡辺監督を結んだ奇妙な縁を明かした。

高橋は、当時の番組での発言について「はっきり覚えています」とうなずき「通行人の邪魔をして、人を転ばせる存在ってどういう存在意義なのか、ちょっと謎ですよね。そこには何か理由があったり、そういうことを想像するだけの余白がある妖怪だったんですね。すねこすりはなぜ脛なのか? なぜ擦るのか? 僕の脳みそはいつもそういうところに引っ掛かるんです(笑)。なんだか気になってしまってしょうがなかったっていうのが子どもの頃からずっとありました」と自身の興味の源泉を振り返る。

ちなみに、トーク番組で高橋が言及した、“湯本鈍器”と呼ばれる、明治、大正、昭和時代の怪奇事件などを集めた「怪異妖怪記事資料集成」シリーズの著者である湯本豪一氏が、この日の会場に足を運んでおり、舞台挨拶前に直接話すことができたという高橋は「人生で5本の指に入るくらい、緊張しております。いずれ弟子入りしたいと思っていた湯本さんにお会いできるなんて、思ってもいなくて……。今日はたぶん、眠れなくなると思います!」と子どものように興奮した面持ちで、妖怪愛を炸裂させた。

撮影中は老人役の特殊メイクのため「朝2時に起きて、4時間メイクをして、6時に出発する」という生活を毎日送っていたという高橋。特殊メイクのために先に現場入りした高橋について黒崎は「半分、あの(老人役の)顔になっていて『すごい』と思っていました。撮影中、我々は老人姿を見ているので、ホテルとかですれ違うと『若くなった!』とびっくりしていました(笑)」と驚きを口にする。そんな黒崎に対して高橋は、「あと2年もすればあの形になります」と飄々と返し、会場は笑いに包まれた。

蒼戸は「老人の姿の高橋さんの周りから出ている空気の重みに、圧倒されたのを覚えています。その後で、老人じゃない姿で撮影があったんですが、すごく軽やかで、その姿にも衝撃を受けました」と明かした。

一方の高橋は、蒼戸、黒崎の印象を“新しい楽器のよう”と独特の言葉で表現していたが、その真意について改めて「声もそうですし、そこに存在している在り方みたいなものを、『若い』と一括りにしたらすごく失礼ですが、とても美しい楽器なんだなと思いました。この年代特有のまっすぐさがお芝居ににじみ出ていると思います。きっと、僕や他の俳優も、最初に夢だったことをやり始めた時の輝きみたいなものがあって、それは永遠に戻ってこないものだと思いますが、お二人からほとばしるものとして、静かに常に感じていました。あの風景の中でお二人を見ていると感慨、学びがすごくありました」と語り、2人を称えた。蒼戸は「嬉しいです」と笑みを浮かべながら「 映画の現場を経験するのが2作目で、何も知らない状態だったので、高橋さんや渡辺監督、黒崎さんに、演じている姿で見せていただくことが多くあったなと思います」と感謝の思いを口にした。
黒崎は「本当に光栄です」と語りつつ、高橋にならって「楽器に例えると、高橋さんは、新しくはないというか……、いや! すごい一流の方に使われて、愛用されている“なんちゃらバリウス”みたいな(笑)!」と語り、高橋さんからすかさず「ストラディバリウスだね」と照れたようなフォローが入り、会場はほほえましいやり取りに笑いに包まれていた。

 最後に高橋は本作について「昨今、あまりない映画の体験なんじゃないか」と語り「観にきてくださった方たちは、まさか映画館に迷い込むとは思わずに、“妖し(あやし)”と出合ってしまうような感覚になれる映画だと思っております」とアピール。
渡辺監督は「静かで、小さな作品で、セリフは20あるかないかくらいの物語ですが、3人の歩く姿、座る、立つ、あるいは何もしないでそこにいるだけでも雄弁にいろんなメッセージが伝わってくるし、想像力を膨らませられる、とても贅沢な作品をつくらせていただいたと思います。たまにはこういう映画を観るのもいいのではないかと思いますので、さらに応援をしていただけると嬉しいです」と呼びかけ、劇場は再び温かい拍手に包まれた。
©『脛擦りの森』プロジェクト
『脛擦りの森』は2026年4月10日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国で公開
監督・脚本:渡辺一貴
出演:高橋一生、蒼戸虹子、黒崎煌代
配給:シンカ
エグゼクティブプロデューサー:川村岬 平賀督基 スージュン 伊藤義彦  北原豪 中村高志
プロデューサー:岡本英之 土橋圭介
人物デザイン監修・衣裳デザイン:柘植伊佐夫
ヴァイオリン演奏:福田廉之介
製作:『脛擦りの森』プロジェクト(Roadstead・モルフォ・シンカ・JR西日本コミュニケーションズ・Sunborn・NHKエンタープライズ)
製作幹事:Roadstead
制作プロダクション:CULTBLAN© 『脛擦りの森』プロジェクト『脛擦りの森』