芥川賞作家・村田沙耶香氏のベストセラー小説「消滅世界」が著者初の実写映画化。
今春、英語版が刊行され、アメリカのニューヨーカー誌でも映画化が報じられるなど、世界的注目を浴びる原作を、気鋭の映像ディレクターである川村誠が初監督・初脚本を手掛け、NAKACHIKA PICTURES配給により、2025年11月28日(金)に全国公開いたします。
本作品の原作「消滅世界」は、現在累計170万部を超える芥川賞受賞作「コンビニ人間」直前の2015年12月に刊行された長編小説。超少子化の先-「性」が消えゆく世界で激動する「恋愛」「結婚」「家族」のあり方に翻弄される若者たちを描いた本作は、「常識」という枠の中でもがく現代の私たち自身を映し出した合わせ鏡のような作品です。
この「日本の未来を予言する小説」と各メディアで大きな話題となった圧倒的衝撃作を、MTV出身、RADIOHEAD、OASISなど国内外様々なアーティストのライブやミュージックビデオ、CM、ショートフィルム、大河ドラマのドキュメンタリーなど多岐にわたるフィールドで活躍する映像ディレクター・川村誠が脚本とともに映像化に挑みます。
主人公・雨音には蒔田彩珠。ドラマ「ゴーイング マイ ホーム」(2012)をきっかけに、映画『三度目の殺人』(2017)、第71回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作品『万引き家族』(2018)など是枝裕和作品の常連に。河瀨直美監督の『朝が来る』(2020)では中学生で母となった難役も熱演し、「第44回日本アカデミー賞」新人俳優賞受賞、「2020年第94回キネマ旬報ベスト・テン表彰式」助演女優賞、「第45回報知映画賞」助演女優賞を受賞など数々の賞を獲得しました。さらに、NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」(2021)や、日曜劇場「御上先生」(2025)に出演。現在放送中の日本テレビ系列日曜ドラマ『DOCTOR PRICE』ではヒロイン役を熱演。岩田剛典演じる主人公のアシスタントとして、知的かつコミカルな役柄をキュートに演じ、幅広い演技力を発揮しています。 数々の名監督から熱視線を浴び、その確かな実力で業界の注目を集める最旬女優が圧倒的衝撃作の実写化に挑みます。
雨音の夫・朔には栁俊太郎が出演。2009年「第24回MEN’S NON-NOモデルグランプリ」を受賞し、モデルデビュー。2021年4月発売の同誌で卒業するまで、約12年にわたり専属モデルを務めました。2012年5月に公開された『ヴァージン「ふかくこの性を愛すべし」』で俳優デビューを飾り、その後、『クローズEXPLODE』(2014)や『東京喰種トーキョーグール』(2017)、近年では『ゴールデンカムイ』や『バジーノイズ』(共に2024)など劇場公開映画への出演が年々増え、現在公開中の映画 『九龍ジェネリックロマンス』への出演でも話題沸騰中。毎作品で様々な表情を魅せる栁は、令和を代表するカメレオン俳優の一人として数多くのクリエイターから絶大なる信頼を得ています。
さらに、雨音の良き理解者として学生時代から雨音と親交を深める親友の樹里役を、話題のヴィレッジ・サイコスリラー『ガンニバル』での怪演が記憶に新しい、確かな演技力でファンを魅了し続ける恒松祐里が演じます。また、雨音と同じ高校の同級生・水内を、ドラマ『教場』や『パーセント』『ダブルチート』などで着実にキャリアを積み、話題作への出演へが続く結木滉星が務め、恋愛対象として二次元のキャラクターに好意を抱く難役に挑みます。また、樹里の夫・水人役に初主演映画『i ai』で強烈な印象を残した富田健太郎、雨音の元夫・正信役に『若武者』『フィクショナル』などに出演、映画ファンの心を掴んで離さない個性派・清水尚弥が、それぞれ雨音の感情を揺さぶり翻弄するキャラクターを体現しています。
また、雨音の母・雫を『ドライブ・マイ・カー』の霧島れいかが務め、夫婦間の性行為はタブーとされる世界で「愛し合った末」に雨音を生んだ母親に狂気のオーラを纏わせ、正常と異常の境界の不確かさを観るものに突きつけます。また、朔の彼女である深雪を、主演作『赦し』で難役を見事に演じ切った松浦りょう、実験都市エデンで生殖を司る医師を名バイプレーヤー・山中崇が演じ、さらにエデンの管理人を、常に作品の要としての存在感を放つ眞島秀和、謎の少年を岩田奏がそれぞれ務め、眞島と岩田はエデンという異世界の住人として独特な存在感を放ち、物語を更なる高みへと誘います。
結婚生活に性愛が入ることを禁じられた世界で、愛し合った夫婦から生まれた少女が、自分の周りにある“普通”と自分から湧き出る欲情に向き合っていく物語。SFの空気をまとい、“普通”や“正しさ”という問題に独自の視点で切り込んでいく村田沙耶香ならではの世界観。そのエッセンスを鋭く抽出した予告編が完成した。
予告編では、観る者の「正常」を試すような世界設定と物語、性が消えつつある日本の衝撃的未来が鮮烈なビジュアルで提示され、アニメーション作家Wabokuデザインによるストーリーを牽引するアニメキャラクターの造形や、世界で注目のバンドD.A.N.による本作のために書き下ろされた主題歌「Perfect Blue」も公開されている。
舞台は、人工授精で子どもを産むことが定着した近未来の日本。夫婦間の性行為はタブーとされ、恋や性愛の対象は“家庭の外”の恋人か、二次元キャラが常識になっていた。それは“両親が愛し合った末”に生まれた子は異常とされる世界。主人公の雨音(蒔田彩珠)は、「お前、人工授精じゃないの? 気持ち悪い」と学校で虐められ、「お母さんは、なんで普通じゃない方法で私を妊娠したの?」と母親の雫(霧島れいか)に嫌悪を抱き、「私はお母さんとは違う。みんなと同じなんだ」と自分に言い聞かせていた。
雨音の性愛の対象は二次元キャラのラピス。自分がラピスに恋をしていると実感する時、自分は母とは違うのだ、周囲と同じく正常だとわかって喜びを感じる雨音。「初めて恋をすることを教えてくれた」ラピスを同じく愛する同級生の水内(結木滉星)と特異な性関係を持つようになる雨音は、水内との身体のつながりに心が満たされていく。
大人に成長した雨音は、性愛を持ち込まない清潔な結婚生活を望み、夫以外の男性やキャラクターと恋愛を重ねていた。“普通”であるはずの夫と結婚したものの、その夫は「身体が反応してしまって…」と“妻”である雨音に性行為を求める。それは、この世界では“近親相姦”と非難される行為。夫が許せなかった雨音は離婚を選択する。
間もなく、元夫とは正反対の朔(栁俊太郎)と出会う。元夫から非常識な行為を受けた雨音に心からの同情を寄せる朔。その朔も、雨音との結婚を意識しながらも他の恋人がいる。そんな今の世界の常識を「あぁ嫌だ。汚らわしい。ちゃんと愛し合って子供を作りなさい」と叱責する雫だが、雨音は朔と結婚。性愛とは無縁の穏やかな結婚生活を楽しんでいた。
その頃、住民全体で計画的に人工授精、出産、管理を行い、住民みんなで子育てをする実験都市「エデン」が千葉に作られていた。そこは恋愛も性も完全に無い世界。雨音と朔にとってまさに“理想の楽園”に居を移す二人。朔から「二人の遺伝子を受け継いだ健全な子を産むんです。もちろん人工授精で」と持ちかけられた雨音は「朔くんとの子なら作りたい」と同意。だが、その人工授精による妊娠が、二人の関係を狂わせていく。「私ね、怖いの。どこまでも“正常”が追いかけてくる」と困惑を見せはじめる雨音。果たして“エデン”は、本当にユートピアなのか。それとも、ディストピアなのか ⎯⎯⎯⎯
同時に解禁された本ビジュアルは、雨音と朔が結婚生活を送るエデンで、住民全員が着衣している白い装束をまとった二人が、背景に広がる無機的な空間の中で無表情に佇む姿が記憶に残る。それらが、正常/異常の境界線の曖昧さを示している。正しさとは何なのか。今、正しいと言われることは本当に正しいのか。それは自分にとっては正しいことなのか。村田沙耶香の視点が、少子高齢化真っ只中の現代社会に突き刺さる。キャッチコピーである「あなたの正常が試される」が視覚化されたビジュアルは、観る者の判断そのものが問われる映画であることを指し示している。
ずとまよやEveのMVで知られるアニメ作家・Wabokuの退廃美が“二次元の恋”にリアリティを与える本予告にも登場する、主人公・雨音が恋をするアニメキャラクターの少年“ラピス”のキャラクターデザインを手掛けたのは、ずっと真夜中でいいのに。や、Eve、ポーター・ロビンソンなど数々のMVで知られるアニメーション作家のWaboku。
本作が描く映像世界と、Wabokuが描くキャラクターが高い親和性を示し、物語の中核のひとつとなる“二次元の恋”にリアリティを与えている。自身の作品について「共通するキーワードは“退廃”と“寂しさ”」と語るWabokuと、「その退廃的な世界観が本作に非常に合う気がした」と語る川村監督。二人の才能が、視覚的ケミストリーを結実させている。
今年作家活動10周年を迎え、記念個展『10-COUNT』が12月9日から開催されることでも注目を集めるWabokuは、ラピスの「デザインに取り掛かる前に、宙を見つめて小一時間思案していた」という。「普通のアニメキャラにはない奥行きが少しでも生まれ、誰かの心に届く事を願っています」とコメントを寄せた。
川村監督も「作品のコンセプト、物語に強く共感いただいて作画いただけたことが何よりの喜び」と語り、「次第に漂白されていく人間の世界とは裏腹に、色彩が失われた世界で色を取り戻していくラピスの造形は、主人公の葛藤と希望を象徴するものとなりました」と雨音が愛するラピスに息を吹き込んだWabokuへ賛辞を贈った。
原作:「消滅世界」(村田沙耶香著/河出文庫)
監督・脚本:川村誠
出演:蒔田彩珠 栁俊太郎
恒松祐里 結木滉星 富田健太郎 清水尚弥 松浦りょう 岩田奏
山中崇 / 眞島秀和 / 霧島れいか
撮影時期:2024.6.8~6.23
劇場公開:2025年11月28日(金)
配給会社:NAKACHIKA PICTURES
©2025「消滅世界」製作委員会