公開記念舞台挨拶
日付:10月11日(土)
会場:新宿バルト9
登壇:小林 薫、戸塚純貴、満島ひかり、宮崎美子、ピエール瀧、木下 麦監督
俳優の小林薫、戸塚純貴、満島ひかり、宮崎美子、ピエール瀧、木下 麦監督が10月11日、アニメーション映画『ホウセンカ』の公開記念上映会の舞台あいさつに登壇しました。
『ホウセンカ』は、しがないヤクザが人生を懸けて挑む“大逆転劇”が描かれる作品。そのテーマに関連して、小林さんはかつてよく通っていたという渋谷の場外馬券場での出来事を語りました。
小林は舞台あいさつで、収録当時の心境について次のように語りました。「声を録ったのは2年ほど前になります。当時は、ヒットするアニメといえば若い男女の恋愛を描いた作品が多い印象で、『牢屋で死にかけたヤクザの大逆転の話なんて、誰が観るんだ?』と、現場で監督に少し失礼なことを言ってしまったんです」と振り返ります。しかし、完成した映像を初めて観た際には、「収録の時点では、どのような仕上がりになるか想像できなかったぶん、冒頭の花火のシーンには本当に驚かされて、大きな感動がありました」と述べ、「とても幸せな気持ちになり、アニメーションの持つ力を改めて感じました」と、作品への深い思い入れをうかがわせました。
戸塚は、その収録を振り返り、「感情の乗せ方や、会話の間の取り方が難しく、どう演じればよいか戸惑う部分もありました」と当時の心境を明かしました。その中で「隣に満島さんがいてくださったことで、とても心強く、救われた思いでした」と共演者への感謝の気持ちも語りました。
満島は、初めて脚本を読んだ際の印象について「とても渋いアニメだなと思って、監督に『パンクですね』とお伝えしたことを覚えています」とコメント。収録は、完成前の映像を使わずに先に音声を収録する“プレスコ”方式で行われたことから、「アニメーションなのに、まるで実写映画のような感覚でした」と振り返りました。
また、阿久津と那奈が共に過ごす場面について「二人のすれ違いが静かに描かれていますが、そこに温かい空気が流れていて、とても好きな映画です」と、作品に対する愛着を語りました。
宮崎は、「観客の皆さんの心の中にはさまざまな感想や思いが浮かんでいることと思います。たとえ言葉にならなくても、その気持ちの揺れ動きを持ち帰っていただけたら嬉しいです」と語り、作品を通じて何かを感じ取ってもらえることへの期待を込めた。
ホウセンカ役のピエール瀧も小林の意見に共感を示し、「小林さんと同じく、最初は非常に渋い作品だと感じて、正直、誰が観るんだろうと思っていました」と率直な感想を述べました。一方で、「今日、劇場に来てくださった観客の皆さんの顔を見ていると、世代や性別を問わず、幅広い方々がいらっしゃる。監督は今きっと『ほらね!』と思っていらっしゃるのではないでしょうか」と、作品が多くの人に届いていることへの喜びを笑顔で語りました。
木下麦監督は、本作の制作に込めた想いについて「日本のアニメーションは世界に誇れる文化だと思っています。そして、日本人にしか生み出せない表現もある。そうした土壌の中で、さらに新しい作品を生み出していくことに意味があると考えています」とコメント。「創造性を大切にしながら、丁寧に作り上げた映画です」と、作品への自信と誇りをにじませました。
印象に残っているシーンについて尋ねられると、戸塚は「引っ越し直後の家で、阿久津と那奈が“Stand By Me”を口ずさむシーンが好きです」と語った。このシーンは、共演の満島さんと共に収録され、遊びの延長のような自然な流れの中で本番が行われたという。
今回は、音声を先に収録する「プレスコアリング」という手法が採用されており、収録時には段ボールや電子レンジの音などの効果音はまだ入っておらず、“ボンッ”といった文字だけが表示されていたそう。その中で2人が息を合わせて作り上げたテンポが、シーンのリズムを生んだと振り返った。
宮崎は、手紙のシーンを挙げ「収録のときは、どんなふうになるのか想像がつかなかったんですが、完成した映像を見て『ああ、こうやって重なっていくんだな』と感じました。とても美しかったです」と印象を語った。
満島は、これまで憧れてきた“ヤクザ映画”の世界観に触れることができたことにも触れ、「菅原文太さんが出演されていた作品や、北野武さんの映画、岩下志麻さんが啖呵を切るような作品に憧れていました。今回の作品を通して、そのような世界観の一端に少しだけ関われた気がしてうれしかったです」と笑顔を見せました。作品についても「優しい愛情や柔らかさとともに、残酷さも描かれていて、とても良い作品だと感じました」と語りました。
実際に大逆転した経験についてトークについて。
W主演の小林と戸塚
小林は、「当時はなかなか馬券が当たらなくて、自分で買いに行く気力もなくなっていたんです。そこで、知り合いにお金を預けて代わりに買ってきてもらったところ、『お金が足りなかった』と言われたんです」と、少し戸惑った様子で当時を回想。「不思議に思って確認したら、自分が金額を3千円ではなく、誤って3万円と書いていたことに気づいたんです」と話しました。
その後、「知り合いに追加のお金を渡して馬券を購入したのですが、財布は空っぽになってしまって……」と笑い交じりに語りつつ、「ところが、来ないと思っていた馬がまさかの的中。オッズは30倍以上あり、結果的に3万円が108万円になったんです」と、偶然が招いた驚きの展開を明かしました。「その知り合いにお小遣いを渡したりもしましたが、これが“大逆転”と言えるのかは分かりません。ただ、間違えて買ったものなので…」と、あくまで控えめに語る姿が印象的でした。
戸塚は、小学生時代から続けていた野球での“逆転劇”について振り返った。体格に恵まれず、打球が遠くまで飛ばないことでレギュラーから外されることもあったというが、「どうにかしてレギュラーになりたい」という思いからバントの練習に力を注いだ結果、送りバントの技術を評価され、レギュラーの座をつかんだと語った。その表情には、自身の努力を実らせたことへの誇りがにじんでいた。
『ホウセンカ』は、TVアニメ『オッドタクシー』の制作陣が手がけるオリジナルアニメーションで、2025年の「アヌシー国際アニメーション映画祭」長編コンペティション部門にも選出されています。物語は、小林 薫演じる現在の阿久津と、戸塚純貴が演じる若き日の阿久津、2人がW主演を務め、愛と再生の物語が描かれます。
キャスト
小林 薫 戸塚純貴 満島ひかり 宮崎美子
安元洋貴 斎藤壮馬 村⽥秀亮(とろサーモン) 中⼭功太
ピエール瀧
監督・キャラクターデザイン:木下麦 原作・脚本:此元和津也 企画・制作:CLAP
音楽:cero / 髙城晶平 荒内佑 橋本翼
演出:木下麦 原⽥奈奈 コンセプトアート:ミチノク峠
レイアウト作画監督:寺英⼆ 作画監督:細越裕治 三好和也 島村秀⼀
色彩設計:のぼりはるこ 美術監督:佐藤歩 撮影監督:星名⼯ 本䑓貴宏
編集:後⽥良樹 音響演出:笠松広司 録音演出:清⽔洋史
制作プロデューサー:伊藤絹恵 松尾亮⼀郎
宣伝:ミラクルヴォイス
配給:ポニーキャニオン
製作:ホウセンカ製作委員会
(c)此元和津也/ホウセンカ製作委員会