前田旺志郎、窪塚愛流、井浦新が出演する映画『こんな事があった』が、9月13日(土)より全国順次公開決定。2021年夏の福島を描く本作からティザービジュアルが解禁となった。
2021年、夏の福島。17歳のアキラは、母親を原発事故の被曝で亡くし、父親は除染作業員として働きに出、家族はバラバラに。
拠りどころを失ったアキラを心配する友人の真一も、孤独を抱えていた。ある日、アキラはサーフショップを営む小池夫婦と店員のユウジに出会い、閉ざしていた心を徐々に開いていく。しかし、癒えることのない傷痕が、彼らを静かに蝕んでいく――。
舞台は、東日本大震災から10年後の福島県。震災と原発事故をきっかけに離散した家族と、青春を奪われた青年たちを描く。

監督は、1979年のデビューから監督作は5本と寡作ながらも、代表作『追悼のざわめき』(88年)などいまも国内外の映画ファンから支持されている松井良彦。
モスクワ国際映画祭に出品された前作『どこに行くの?』(07年)から18年ぶりの待望の最新作となる。構想から13年、震災や原発事故の記憶が薄れゆく現代に、痛烈な怒りと切なる祈りを込め、観る者の心を揺さぶる魂の映画を完成させた。
主人公のアキラを演じるのは、是枝裕和監督『奇跡』で映画デビューにして主演を飾り、映画やドラマ、舞台を中心に着々とキャリアを積む前田旺志郎。
真一役には、篠原哲雄監督『ハピネス』で映画初主演を果たし、映画やドラマ、CMなど活躍の場を広げる窪塚愛流。
真一の父親・篤人役には、日本映像界で欠かすことのできない俳優、井浦新。窪塚と井浦は、ドラマ「あのときキスしておけば」、映画『麻希のいる世界』に続く親子役での3度目の共演となる。
この度解禁となったティザービジュアルは、撮影地でもある福島の風景写真を使用したもの。
津波の塩害による枯れ木が並び、左側にはブルーシートに覆われた放射能汚染土や瓦礫、右側には震災と放射能被曝によって廃校となった小学校が映し出されている。タイトル『こんな事があった』に対して「何があったのか」考えさせられる示唆に富んだビジュアルとなった。
「事実に我々日本人は目を向けていかなければ」キャストらのコメントが到着

また公開決定に寄せて、前田、窪塚、井浦、松井監督からの本人コメントが到着。
撮影に入る前に福島を訪れた前田は、震災や原発事故の被害を目の当たりにし、衝撃を受けたといい、「同じ日本で生まれ育った人達が今もまだ震災、原発の被害に苦しんでいる事実に我々日本人は目を向けていかなければなりません。到底、当事者の方達に及びませんが、僕はこの作品を通してその痛みを、どこにぶつけたら良いかわからない怒りを少し体感しました」と思いを綴っている。
窪塚は、「震災や原発事故があって、当時の事は自分でもとてもよく覚えていて、悲しい出来事だったり、憎しみの感情を呼び起こすことだけど、松井監督は、そういう事だけではなく、あの出来事を、これだけは知っておいてほしいという意味で、映画を通して僕に教えてくれました」とコメント。
そして、かねてより松井監督のファンで『追悼のざわめき』を「人生の1本」に選んでいる井浦は、松井監督について「お世辞や嘘を言わない真っ直ぐでとても不器用な方。だからこそ信頼ができて、とことんついてゆき全身で監督の世界観に浸りながら学び感じ演じたいと思わせてくれる」と語り、松井組に初参加できた喜びの声を寄せている。
一方、松井監督は、本作の制作に携わったキャストやスタッフ、関係者への感謝の言葉を述べ、本作に込めた思いについて「ほとんどの日本人の記憶の中で原発事故は、希薄なものとなっています」「そんな今、この現状だからこそ、一人でも多くの皆さんに本作を観て、考えていただきたいと思います。それがこの映画の存在価値であり、存在意義でもあるからです」と決意のコメントを寄せた。
なお、松井監督の代表作『追悼のざわめき』は1988年、現在は廃館となった中野武蔵野ホールで初公開され、同館開設以来の観客動員を記録。世界中の映画ファンや映画人に熱狂的なファンを生んだことから「伝説の映画」として日本インディーズ映画界にその名を刻む。
そして『追悼のざわめき』から37年、当時、中野武蔵野ホールで勤務していた新宿K’s cinemaの支配人と番組編成担当のもとで上映したいという監督たっての思いによって、今回「インディーズ映画の聖地」とも称される新宿K’s cinemaでの上映が決定した。
『こんな事があった』は9月13日(土)より新宿K’s cinemaほか全国にて順次公開。