レオス・カラックス監督の1991年の作品『ポンヌフの恋人』の4Kレストア版が12月20日(土)より公開されることが決定した。
ホームレスとなった大道芸人アレックス(ドニ・ラヴァン)と画学生ミシェル(ジュリエット・ビノシュ)の愛を描いた本作。パリの最も古い橋ポンヌフで出会った2人の感情の軌跡を、レオス・カラックスが独特のスタイルで描いた。
本作の製作は困難を極めた。パリ市からポンヌフ橋を借り切って撮影に入る直前、主演のドニ・ラヴァンの思わぬケガで撮影中止となった。再度の許可は下りず、モンプリエ郊外ランサルグにフランス映画史上最大のオープンセットを建設してポンヌフ橋を再現した。しかし底なしの資材と長期の人件費で2つのプロダクションが破産、製作は中断し強風でセットも倒壊、製作費は膨らみ続けた。
先行きが危ぶまれる中、レオス・カラックスは映画監督のスティーブン・スピルバーグやフィリップ・ガレルらを試写室に呼び、未編集のフィルムを上映した。スティーブン・スピルバーグは後に「この映画には激しさや美しさ、想像力があふれている!」と称賛。
フィリップ・ガレル(映画監督)は「ひとりの若者が今なお、大衆に向けて、映画愛によってかくも美しい映画を作ることを必要かつ急務と考えている事実を、私たちは喜ばなければならないだろう」とコメントした。
アンリ・アルカン(撮影監督)は「いつもはラッシュを見て感銘を受けることはないのだが、今回のラッシュからはとても強い印象を受けた。《造形的映画》の素晴らしいイメージは、とぎれることなく私を圧倒した」と語った。
ジャン・ルーシュ(映画監督)は「これは傷つけられた映画だ。光り輝くところから生まれようとし、未だに灰の温もりを残した映画なのだ。そして私たちの重要な仕事とは、この火を生き返らせることなのだ」と述べた(*出典「レオス・カラックス 映画の二十一世紀へ向けて」鈴木布美子著/筑摩書房刊)。
最終的に大物プロデューサー、クリスチャン・フェシュネール(1944-2008)が製作を引き受け、日本からもカラックスの友人・堀越謙三(ユーロスペース代表、1945-2025)が出資し映画は完成した。製作費はセットだけで6億近く、合計30億円を超えた。
今回の4Kレストア版はレオス・カラックスの協力のもとオリジナル35mmネガからデジタルレストアし、撮影監督キャロリーヌ・シャンプティエが修復と色彩補正を監修、トマ・ゴデールが音響を担当した。
この度解禁となったティザー動画は、革命記念日の夜セーヌ川の両岸から滝のように花火が流れる中、盗んだボートをアレックスが操縦し、ミシェルが水上スキーで疾走する圧巻の場面。水が凍える11月の夜、失敗すれば大金が消えてしまうプレッシャーと転倒の恐怖を抱きながら、ジュリエット・ビノシュはスタントなしで自らこのシーンに挑んだという。
『ポンヌフの恋人』4Kレストア版は12月20日(土)よりユーロスペースほかにて公開。
◼️公開情報
『ポンヌフの恋人』4Kリマスター版
12月20日(土)よりユーロスペースほか劇場公開
出演:ジュリエット・ビノシュ、ドニ・ラヴァン
監督・脚本:レオス・カラックス
撮影:ジャン=イヴ・エスコフィエ
配給:ユーロスペース
1991年/フランス映画/カラー/125分/DCP