新海 誠監督の名作アニメを松村北斗(SixTONES)の単独主演で実写化した『秒速5センチメートル』の公開が今年10月10日に控える気鋭の映画監督/写真家の奥山由之。2024年11月15日より公開され、奥山監督の自主制作ながら興収1億円を超える大ヒットとなったオムニバス長編『アット・ザ・ベンチ』。その舞台となった<あのベンチ>で、5月31日(土)・6月1日(日)の2日間、入場無料の屋外上映イベントが開催! 2日間で約3000人が来場する大盛況となり、上映後には奥山由之監督、本上映に協力したキノ・イグルーの有坂塁氏と渡辺順也氏のトークも実施された。
<奥山由之(おくやま・よしゆき)プロフィール>
1991年、東京生まれ。映画監督 / 写真家。映画・MV・CMなど、映像の監督業を行っている。また、これまでに多数の写真集出版や展覧会を開催。2011年『Girl』で第34回写真新世紀優秀賞受賞。2016年には『BACON ICE CREAM』で第47回講談社出版文化賞写真賞受賞。
<Kino Iglu(キノ・イグルー) プロフィール>
2003年に中学校時代の同級生、有坂 塁と渡辺順也によって設立された移動映画館。
東京を拠点に全国各地のカフェ、雑貨屋、書店、パン屋、美術館など様々な空間で、 世界各国の映画を上映している。 多彩なアーティストとのコラボレーションを始め、夏の野外上映会、クリスマスパーティー SHOPのAnniversary Party、こどもえいがかい、全国ツアー。 さらには映画祭のディレクションや、ライブラリー向けのDVDセレクトまで、 既存の枠にとらわれることなく、自由な発想で映画の楽しさを伝えている。縁とつながりを大切に。
映画『アット・ザ・ベンチ』が生まれた、多摩川沿いの小さなベンチのすぐ側(そば)で、本作の屋外上映イベントが開催された。本イベントは、撮影に協力した地域の方と、映画を応援しているファンの方々への感謝の思いを込めて企画され、5月31日、6月1日の2日間にわたって入場無料で実施。全国各地で屋外上映イベントの企画運営を行うキノ・イグルーの協力のもと、映画の全編が撮影されたその場所で作品を鑑賞できる、非常に貴重な機会となった。5月31日の初日は雨も心配されていたが、夕方には雨もあがり、大勢の観客とともに映画を楽しむことができた。そして2日目となる6月1日、初日を上回る多くの観客が来場。16時開場、19時半上映というスケジュールだったが、すでに開場前から続々と集まる観客の姿が見られた。会場内にはキッチンカーも並び、祝祭感あふれる空間となっていた。

映画上映前は、奥山監督が挨拶。スクリーン正面の最前列には、撮影に使われたベンチがあることから、「ここにあのベンチがいます。僕が小さい頃から散歩の途中などに座っていたベンチなので、とても愛着があって。だからいつかこのベンチがなくなる前に作品として残しておきたいなと思って、信頼する仲間たちと、1年半くらいの期間をかけて、みんなでたまに集まって5編のオムニバス作品をつくりました。とてもミニマルなチームでつくった自主制作映画ではあるのですが、その分、愛情が詰まった作品になっています。今日は皆さんとこの場所で、同じ時間を過ごせることをとてもうれしく思います」と呼びかけた。
そして映画の上映が開始。物語の舞台となった多摩川沿いのベンチを、皆で囲むようにしながらスクリーンを見つめていた観客。屋外上映ということで、寝転んだり、座ったり、時に笑ったり、食事をとったりと、それぞれが思い思いのスタイルで映画を楽しんでいた。中には劇中の第2編の物語にちなんで、スーパーで買ってきたお寿司を持参する人の姿もちらほら。五つの物語が終わり、エンドクレジットに入ると自然と拍手がわき起こる。そうやって映画の余韻を楽しんでいる様子の観客だったが、映画の上映が終わるとさらに大きな拍手が鳴り響いた。




映画上映後は、奥山監督と、この日の屋外上映をプロデュースしたキノ・イグルーの有坂 塁氏、渡辺順也氏によるトークショーが行われた。奥山監督は屋外上映会を終えて、「端の方で皆さんの様子を見ていたんですが、本当に感無量というか。愛にあふれる時間でした。こういう経験をさせていただいて本当にありがとうございます」と奥山監督が語ると、会場からも拍手が。有坂氏が「東京だけでなくて、愛知とか、秋田とか、大分などからここに来ましたという方もいらっしゃったんですよ」と明かし、「やはり屋外上映の醍醐味(だいごみ)というのは風を感じたり、雨が降ってきたり、映画館でいうところの4D上映みたいなところも魅力だと思います」と語る。

奥山監督は、あらためてスクリーン正面に立つベンチの方を見やり、「きっとこのベンチもすごく喜んでくれているんだろうなと思います。ビックリしているかもしれないですね。この状況はどういうことなんだろうと思っているのかもしれない」と笑顔を見せた。「本当にここに座って、友だちに悩みを打ち明けたり、家族で話したり。いつの間にか設備としてのベンチを超えて、ひとりの人格のようなものを感じているので。今は(イベント用の強いライトの)逆光であまりよく見えないんですが、今日は皆さんに出会えてきっと幸せに感じているだろうと思います」としみじみと付け加えた。
トークイベント後は、ベンチのまわりに大勢の人が集まり、次々と写真撮影をしていた。2日間の屋外上映イベントは大盛況のうちに幕を下ろした。
監督:奥山由之
出演:広瀬すず(第1編・第5編)、仲野太賀(第1編・第5編)、岸井ゆきの(第2編)、岡山天音(第2編)、荒川良々(第2編)、今田美桜(第3編)、森七菜(第3編)、草彅剛(第4編)、吉岡里帆(第4編)、神木隆之介(第4編) 脚本:生方美久(第1編・第5編)、蓮見翔(第2編)、根本宗子(第3編)、奥山由之(第4編)
音楽:安部勇磨
企画・製作:奥山由之
プロデューサー:佐野大
撮影:今村圭佑
録音:佐藤雅之
美術:野田花子 衣裳:伊賀大介 ヘアメイク:小西神士/くどうあき 編集:平井健一/奥山由之 助監督:鈴木雄太 制作担当:神谷諒 カラリスト:小林千乃
オンライン編集:土屋瀬莉
グラフィックデザイン:矢後直規
配給宣伝協力:池田彩乃
制作・配給:SPOON
2024年、日本、86分、カラー、ビスタ、5.1ch、英題:AT THE BENCH
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