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舞台『醉いどれ天使』記者会見とゲネプロ場面

『醉いどれ天使』は、名匠・黒澤明監督と、その後多くの作品で主演を務めることとなる三船敏郎が初めてタッグを組んだ、1948年公開の映画です。映画史に残る名作として、今なお世界各地で親しまれています。公開と同じ年には舞台版も上演されており、その台本をもとに蓬莱竜太が脚本を手がけた新たな舞台『醉いどれ天使』が、2021年に上演されました。今回は、スタッフ・キャストを新たに迎え、さらに新しい作品として上演されます。

本作は、2021年に上演された舞台版をもとにしたもので、脚本は前回に続いて蓬莱竜太さんが担当し、深作健太さんが演出を手がける。主演は北山宏光さんで、6年ぶりの主演舞台として、闇市を支配する若いやくざ・松永を演じる。女性キャストには、元AKB48の横山由依さんとタレントの岡田結実さんがWキャストとして出演する。さらに、乃木坂46の阪口珠美さんや、俳優の佐藤仁美さんも重要な役どころで登場し、作品に深みを添える。

戦後の混乱期を背景に、登場人物たちの不器用ながらも人間味あふれる姿を通して、現代にも通じる人間ドラマが描かれている。

演出を担当する深作健太さんは、本作が初めての舞台化ではないものの、今回は「エンターテインメント性とロックな要素」にこだわったと語った。舞台セットの一つひとつにもメッセージを込め、キャストがそこに立つことで作品の世界観がより深まるよう工夫しているという。また、原作が当時“現代劇”として描かれたことに触れ、約40年が経った今も時代劇として風化させることなく、現代社会の課題や平和への思いを重ねて表現することを意識したと話した。

Wキャストでヒロイン・ぎん役を演じる横山由依さんは、稽古場での演出が本番の照明や音響と重なることで新たな発見があったとし、「お客さまに届けるのが楽しみ」と語った。明治座の客席との距離感についても触れ、「最前列がとても近いと聞いているので、3階席まで思いが届くように演じたい」と意気込みを見せた。深作さんの演出については「細やかで丁寧」と評し、「通し稽古のたびに新しい要素が加わるようで、毎日変化していく舞台を楽しみにしている」と話した。

同じくぎん役を務める岡田結実さんは、深作さんや北山宏光さんが作り上げる世界を「とても魅力的で力強い」と表現し、「その世界に自分も自然に溶け込めるように演じている」と語った。初舞台で緊張もあったというが、「この座組の皆さんと一緒に舞台をつくれることが何よりうれしい」と稽古場の雰囲気を振り返った。また、深作さんから「自分の思うぎんを自由に表現していい」と言われたことで気持ちが楽になり、自分らしいぎん像をのびやかに演じられるようになったと話した。

七重役を務める阪口珠美さんは、名作への出演と歴史ある明治座での公演を「大きな挑戦」と捉えていると語った。闇市の様子など、当時の資料を丁寧に読み込みながら役作りに取り組んだといい、「七重の“生きたい”“強くありたい”という思いを、女性らしい力強さで表現したい」と意気込みを見せた。

佐藤仁美さんは、「男性キャストが醸し出す哀愁や色気にも注目してほしい」とコメント。自身の役どころについては、北山宏光さんが「佐藤さんの役はお酒を飲まないから」と提案したことをきっかけに、新たな“酔いどれ”のシーンが加わったことを明かし、そのユニークな演出にも触れた。

主演の北山宏光さんは、「この作品は、このキャストでなければ成立しない」と話し、チーム全体の結束力を強調した。ロックな演出でありながらも芝居としての重みを大切にしており、「観てくださる方に楽しんでもらうと同時に、何か感じ取ってもらえたらうれしい」と思いを語った。自身が演じる松永という人物を通して、「当時の人々がどのように生き、何を思い、どう人生を終えたのかを伝えたい」とし、その背景にある人間の尊さや切なさを感じていると述べた。結核の症状を表現する“咳”の演技についても、「私たちがパンデミックを経験した今だからこそ、当時の苦しみや生き様をよりリアルに感じてほしい」と語った。

ゲネプロ

公演は11月7日から23日まで東京・明治座、28日から30日まで名古屋・御園座、12月5日から14日まで大阪・新歌舞伎座で行われる。

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舞台『醉いどれ天使』

原作:黒澤明 植草圭之助
脚本:蓬莱竜太
演出:深作健太
出演:北山宏光
渡辺 大 横山由依・岡田結実(Wキャスト) 阪口珠美 / 佐藤仁美 大鶴義丹
堀野内 智 神農直隆 生津 徹 宮地大介 葉山 昴 松井朝海 桑畑亨成 / 荒井洸子 片岡正二郎
西川裕一 八木橋華月 浅倉智尋 奥富夕渚 夕希奈

公式サイト:https://www.yoidoretenshi-stage.jp

<東京公演>
2025年11月7日(金)~23日(日) 明治座

<名古屋公演>
2025年11月28日(金)~30日(日) 御園座

<大阪公演>
2025年12月5日(金)~14日(日) 新歌舞伎座

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