ブラザーズ・クエイが監督を務めたアニメーション映画『砂時計サナトリウム』が、7月12日よりシアター・イメージフォーラムにて公開されることが決定した。
本作は、クリストファー・ノーランも彼らの短編映画を制作するほど心酔しており、多くのアーティストに影響を与え続けているアニメーション作家ブラザーズ・クエイによる19年ぶりの新作長編。
時間と記憶、幻想と現実が交錯する、夢のような映像世界を旅する本作。緻密に造形された美術セットと、独自のライティングによる“動く静物画”とも言える映像美、クラシックから現代音楽まで幅広い楽曲によって織り上げられるサウンドスケープが特徴だ。観客は主人公ヨゼフと共に、父を求めて過去と夢の断片を辿りながら、やがて“自分という存在”の多層性に向き合うことになる。
青年ヨゼフは、忘れられた支線を走る幽霊のような列車に揺られ、死の床にある父を見舞おうと遠く離れたガリシア地方にあるサナトリウムを訪れる。到着したサナトリウムは、既に活気を失い、怪しげな医師ゴッタルダによって仕切られていた。彼はヨゼフにこう告げる。「あなたの国から見ればお父様は亡くなったが、ここではまだ死んでいません。ここでは、一定の間隔で常に時間が遅れているのです。その間隔の長さは定義できません」。やがてヨゼフは、そのサナトリウムが現実と夢の狭間に漂う世界であることに気づき、そこでは時間も出来事も、目に見える形をとって存在することができないと知る。
ヨゼフ役を『JOIKA 美と狂気のバレリーナ』『プライムタイム』などに出演したアンドジェイ・クワクが演じたほか、競売人役およびナレーションをタデウシュ・ヤニシェフスキが担当。さらに、競売人の助手、女中、アデラII役をヴィオレッタ・コパンスカが務めた。
あわせて予告編と場面写真が公開。ブラザーズ・クエイの真骨頂ともいえる美術と精緻な人形アニメーションが垣間見える。
ブラザーズ・クエイ(監督)コメント
本作は、ブルーノ・シュルツの神話的かつ詩的な著作群から着想を得た映像作品です。人形と実写を織り交ぜながら、「大いなる異端の領域に存在する13番目の偽りの月」という、シュルツが描いた幻想的世界の“創造の神経網”を視覚化しています。
物語の幕開けは、荒廃した時代の競売場。そして舞台を仕切るのは、その瞬間において最も輝いている競売人。「さあ、公売です。ロット番号47、「死した網膜の霊廟の模写」。これは7つのレンズが配された木箱で、隠された引き出しには前所有者の死んだ網膜が入っているといいます。年に一度、日光が正確な角度で箱を照らすと、光の差し込んだ網膜は液化し7つのイメージが聖別されて動き出す……」。
サナトリウムにある迷宮のような廊下では、物や出来事が独自の力を持ち、自由にさまよいます。不気味な“半現実”が支配する中で、主人公ヨゼフは記憶・幻想・幻視が絡み合う不可解な世界にのみ込まれていきます。彼は父と再会し、夢の中でその姿を見失い、いくつもの「父」を発見し、そして永遠に失うことになります。そしてヨゼフ自身の存在さえも多重化し、ひとりは死に、もうひとりは永遠にサナトリウムの廊下をさまよい、最後のひとりは、かつて自らが乗ってきた列車に再び乗り込むのです。
『砂時計サナトリウム』
7月12日(土)シアター・イメージフォーラムにて公開
監督・脚本・演出:ブラザーズ・クエイ
原作:ブルーノ・シュルツ
ライン・プロデューサー:マウゴジャータ・マウィサ
プロデューサー:ルーシー・コンラッド、イザベラ・キシュカ=ホフリク
エグゼクティブ・プロデューサー:キース・グリフィス、ミア・ベイズ
共同プロデューサー:ヴィオラ・フューゲン、ミヒャエル・ヴェーバー、トビアス・パウジンガー
アソシエイト・プロデューサー:マルレナ・ウカシアク、マルタ・デ・スニガ
提供:JAIHO
配給:グッチーズ・フリースクール
2024年/ポーランド語/イギリス、ポーランド、ドイツ/76分/1.85:1/24fps/5.1ch