映画

『木の上の軍隊』小中学校試写会ティーチインイベント

小中学校試写会ティーチインイベント
日時:7月23日(水)
場所:豊島区立千登世橋中学校 体育館
登壇:平一紘監督
MC:伊藤さとり

1945年、沖縄県伊江島で激しい攻防戦が展開される中、2人の日本兵が木の上に身を潜め、終戦を知らずに2年もの間生き延びた――そんな衝撃の実話から着想を得た作家・井上ひさしが原案を遺し、こまつ座にて上演された舞台「木の上の軍隊」が映画化。
現在、沖縄にて先行大ヒット上映中、いよいよ7月25日(金)より全国公開いたします。
宮崎から派兵された厳格な少尉を演じるのは、確かな演技力で日本の映画界を牽引してきた名優・堤 真一。沖縄出身の新兵に抜擢されたのは、数々の話題作で存在感を示す山田裕貴。ダブル主演を務める堤と山田は初の共演ながら、阿吽の呼吸で極限状態の兵士たちを、繊細かつ力強く、そして人間らしい可笑しみをもって表現。監督と脚本を手掛けたのは、『ミラクルシティコザ』のスマッシュヒットが記憶に新しい、沖縄出身の新進気鋭・平 一紘。全編沖縄ロケ、伊江島では実際に生い茂るガジュマルの木の上で撮影が敢行されました。

7月23日(水)、小中学生と平一紘監督が平和について語り合う、Q&Aイベントを行いました。
猛暑にも関わらず、120人もの小中学生やその保護者が訪れ、本編を観たばかりの児童・生徒たちからは、本作の感想や疑問・質問が活発に上がりました。

今回、沖縄県伊江島(伊江村)と東京都豊島区が交流都市であることから、豊島区の小中学生を対象にした試写会がが実現し、猛暑にも関わらず、120人もの小中学生やその保護者が訪れた。6月に伊江村立伊江中学校でも特別試写会を経験している平監督。東京で多くの子供たちに観てもらえることがとても楽しみだったという。上映後、生徒たちからは、本作への質問や感想の手が活発に上がっていた。
『木の上の軍隊』
撮影の主な舞台となった巨大な1本のガジュマルの木には生徒たちも驚いたようで、「沖縄にガジュマルの木はいっぱいあると思うが、なぜこの木を選んだのか?」という質問に、「実は、ふたりの兵士が逃げ隠れできそうなガジュマルの木はそんなに無いんです。なので、撮影に使うガジュマル探しの旅をずっとしていました。最終的には、伊江島の公園で見つけたガジュマルの木にもう一本の木を合わせ、地元の造園業の方と映画の美術さんが植樹しました。今でもその公園にはそのガジュマルがあるので、いつでも逃げ込めますよ!」と優しく答えた。

他にも、「今まで観た戦争映画はフィクションが多かったので、実話を基にしている作品を見て素晴らしいなと思いました」と語る男子中学生や、「木に逃げ込んで生き抜いたという新たな実話を知れて、勉強になりました」と元気に答える女子中学生、「僕は力が強くないし2年も隠れている自信がないです」と素直に自分ごととして捉える男子小学生など、それぞれの年齢なりの様々な感想が寄せられた。

中でも、平監督が「今日聞いた中で一番印象に残っている感想」と語ったのは、女子中学生のひとりが「戦争が終わったら、それでみんなハッピーになれると思っていたが、そうじゃなかった」と感想を述べたこと。「戦争は、起きてしまっただけで良くないことなんだということに、この映画を観て気付き、そのような感想を持ってくれたというのが嬉しかったです。戦争がいかに悲惨なものなのかということは、今まで語り尽くされてきたけれど、この作品が知るきっかけになって嬉しいと、今日改めて感じました」と感慨深げだった。

Q&Aが終わると、伊江島で生まれ育ったシンガーソングライターで、本作の主題歌を歌うAnlyから生徒たちに向けたメッセージ映像が上映された。「私のこれまでのキャリアは『木の上の軍隊』の主題歌を書くという使命に繋がっていたのだと思う」と、並々ならぬ想いで主題歌を書き下ろしたAnly。
『木の上の軍隊』
「私は平和な伊江島で生まれ育ったのですが、この映画に関わるということで、私自身も“戦争のときはどんな気持ちだったのか”“どんな大変なことがあったのか”など色々なことを学びました。主題歌のタイトル『ニヌファブシ』というのは、沖縄の言葉で『北極星』という意味です。一年中、空に輝き続ける星のように、平和への想いを、私も揺るがない気持ちで、そして皆さんも揺るがない気持ちで心に持ってほしいという想いを込めてタイトルにしました。皆さんもこの映画を通して、“自分にとっての平和って何だろう”ということを考えてもらえたらと思います」と、撮影で使用された伊江島の大きなガジュマルの木の前から、熱いメッセージを寄せた。

平監督は以前インタビューで、「小学生の頃、おじいやおばあが学校に来て、戦争当時の話をしてくれたことを思い出しました。涙ながらに語ってくれたあの証言は、殺人事件の被害者であり、さらに言うなら加害者かもしれない。そういう人たちが、死ぬ気で勇気を振り絞って話してくれていたんだということに、改めて気づかされました」と語っていた。平監督は35歳と若く、戦争体験者ではないけれど、本作を鑑賞した小中学生たちにとって、その平監督と話したこの時間はきっと一生記憶に残るはず。イベントを終えた平監督も「戦争の語り部はいずれ居なくなってしまう。でも映画はいろいろな形で子供たちの目や耳に届くことができる。映画としてたくさんの人の心に残るものが作れるとすれば、語り部がこの先居なくなってしまっても、映画として語り継ぐことができる」と、本イベントを通して、監督自身も学んだ貴重な機会となったようだ。

木の上の軍隊
【原作:「木の上の軍隊」(株式会社こまつ座・原案井上ひさし】
作家・井上ひさしが生前やりたい事として記していたオキナワを舞台にした物語。タイトルは「木の上の軍隊」。
井上が遺した1枚のメモを基に、井上ひさし没後、こまつ座&ホリプロ公演として2013年、藤原竜也、山西惇、片平なぎさを迎え初演された。その後、「父と暮せば」「母と暮せば」と並ぶこまつ座「戦後“命”の三部作」位置づけられ、16年、19年にはこまつ座公演として山西惇、松下洸平、普天間かおりが出演し、再演、再々演され、19年には沖縄でも上演。世界からも注目され様々な国から上演依頼がある作品である。2023年6月より韓国公演がスタートし8月の終演までソールドアウトの人気を博した。

出演:堤 真一  山田裕貴
津波竜斗 玉代㔟圭司 尚玄 岸本尚泰 城間やよい 川田広樹(ガレッジセール)/山西 惇
監督・脚本:平 一紘
原作:「木の上の軍隊」(株式会社こまつ座・原案井上ひさし)
主題歌:Anly「ニヌファブシ」
企画:横澤匡広  プロデューサー:横澤匡広 小西啓介 井上麻矢 大城賢吾
企画製作プロダクション:エコーズ  企画協力:こまつ座  制作プロダクション:キリシマ一九四五 PROJECT9
後援:沖縄県  特別協力:伊江村
製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ
©️2025「木の上の軍隊」製作委員会