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『愛はステロイド』「ババヤガの夜」の著者・王谷晶 スペシャルトーク映像解禁!

『ミッドサマー』(19)、『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(24)や『関心領域』(23)などを手がけたスタジオA24が新たに贈る、規格外のクィア・ロマンス・スリラー『愛はステロイド』(公開中)。一部の映画館では連日満席の回が続出しており、SNSでも絶賛の声が多く寄せられている本作。このたび、世界最高峰のミステリー文学賞であるダガー賞を日本人作家として初受賞した、「ババヤガの夜」の作家、王谷晶が登壇したトークイベントの映像が解禁された。

『愛はステロイド』は、大胆で示唆に富んだストーリーテリング、刺激的な演出、そして俳優陣の化学反応が各所から絶賛され、映画批評サイト「Rotten Tomatoes」では94%フレッシュ(6月3日時点)という高評価を獲得。ゴッサム・インディペンデント映画賞をはじめとする世界各国の映画賞に44ノミネートを果たし、第74回ベルリン国際映画祭にも出品され、『ピンク・フラミンゴ』(72)などで知られる鬼才ジョン・ウォーターズが「2024年最高の映画」として挙げた一作だ。

メガホンをとったのは、狂信の末に暴走するカトリック信者の看護師を描いたホラー『セイント・モード/狂信』(19)で長編映画デビューを果たし、映画の常識を打ち砕いて世界に衝撃を与えた新鋭ローズ・グラス。官能的なクィア・ロマンスに退廃的なフィルム・ノワール、デヴィッド・クローネンバーグを想起させるボディ・ホラー、そしてデヴィッド・リンチが愛するシュールレアリズムまで、あらゆるジャンルを横断しながら、映画そのものに中指を突き立てる衝撃作を完成させた。父親を嫌悪しながらもその影響下から逃れられない女性ルーに扮するのは、名優クリステン・スチュワート、ボディビルダーのジャッキーには、ケイティ・オブライアン。さらに、エド・ハリスをはじめ、ジェナ・マローンやアンナ・バリシニコフなど、これまでのイメージを打ち砕く役に挑戦している実力派キャストの名演からも目が離せない一作となっている。

先日、本作の一般試写が行われ、「ババヤガの夜」の著者、王谷晶が登壇。解禁されたのは、その模様を収めたスペシャルトーク映像だ。まず、王谷が本作を初めて観た感想として、「ついにこういう映画が出てきてくれたという驚きと喜びがあった」と述べ、「主人公がはっきりレズビアンであることが明確になっていたり、父親とのいさかいのなかに、主人公のセクシュアルマイノリティは関係ないところが現代の話だなと思いました」と話し、本作の新しい角度を賞賛した。

「存在感とフィジカルの説得力が圧倒的!」と称えられたケイティ・オブライアン

主演のオブライアンについては、「存在感とフィジカルの説得力が圧倒的で、ボディービルダーで格闘家、警察官をしていたという納得の経歴があって、本作のためにあの体に仕上げるのはいろんな苦労があったと思いますが、あの肉体でなければこんな映画にならない」と絶賛。またスチュワートについても、「幾つになっても若者感があって、なにをやっていても寄る辺(よるべ)ない感じがします。繊細かつ太々しいところがある演技をされる役者さんだと思います。クリステンは暗い目がすごく魅力的な俳優さんだと思います」と語り、それぞれの魅力に深く言及した。

また、映画『サブスタンス』(24)との共通点にも触れ、「注射というアイテムやボディホラー的な側面もそうですし、アメリカ出身ではない女性監督がアメリカを舞台にした作品を撮っている、という共通点もあると思います。『サブスタンス』も全体的に1980〜90年代のカルチャーを思わせるギラギラした質感があり、80年代の勢いはあったけど“最もアメリカがお下品だった時代”の揺り戻しを、いまのアメリカに見ているのかなと思いました」と話した。

『愛はステロイド』は公開中

本作の結末については、「100%は納得させないことはどのジャンルのアーティストにも大切なことだと思います。真剣にやっていると納得させる方向に行ってしまうが、それをしてしまうと納得させて終わってしまう。この映画は最後に納得を放り投げたところが本当にすばらしいと思います」と語った。さらに、「映画雑誌やサイトでLGBTQ特集を組んでも、レズビアン作品が紹介されることは少ないですし、そもそも作品数自体が少ないのは、やはり制作現場に女性が少なかったからだと思います。『愛はステロイド』の宣伝映像では監督とキャスト2人が積極的にクィアであることをオープンにしていて、羨ましいなと思いました」とも語った。

自身の小説「ババヤガの夜」との共通点について問われると、「映画の舞台、アルバカーキの人口を調べたら宇都宮くらいで、ちょうど自分が舞台にした規模感と同じでした。場所をピンポイントにすることで、描きたかったことが純粋に描けたのかなと思います」と振り返った。

さらに「もしローズ・グラス監督から「ババヤガの夜」を映画化したいと言われたら?」との問いには、「めちゃめちゃうれしい。もし映像化の話が来たら、全部お任せすると決めているんで、好きにやっていただきたい」と即答。「ババヤガの夜」の主人公、新道依子の配役については、「本作を観てしまうとケイティ・オブライアンのようにフィジカルに説得力のある俳優にやってほしい」と話し、新道が守る暴力団会長の一人娘、尚子役については「クリステン・スチュワートはやれると思います。元々『トワイライト』シリーズを美少女役でやってきているので、演じられるのではないかなと思います」とイメージを膨らませた。

監督・脚本:ローズ・グラス(『セイント・モード/狂信』)
共同脚本:ヴェロニカ・トフィウスカキャスト
出演:クリステン・スチュワート(『スペンサーダイアナの決意』)、ケイティ・オブライアン(『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』)、エド・ハリス(『トップガンマーヴェリック』)、ジェナ・マローン(『メッセンジャー』)
配給:ハピネットファントム・スタジオ

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