聴こえない世界に生きるアンヘラ“幸せな出来事”が、日常を静かに壊し始める……。“疎外の世界”で揺れながら、懸命に生きる人に贈る“本当の幸せ”の見つけ方『幸せの、忘れもの。』が、5月1日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国公開となる。
この度、エバ・リベルタ監督のオフィシャル・インタビューが解禁となった。

第75回ベルリン国際映画祭にて観客賞とアート・シネマ賞を、第28回スペイン・マラガ映画祭では観客賞ほか計3部門、第40回ゴヤ賞でも最優秀新人監督賞ほか計3部門もの受賞を果たした本作。新進気鋭監督の作品が、観る者の心を深く揺さぶり、静かなる熱狂を巻き起こした。原型となったのは、18分の短編映画『Sorda』。各国の映画祭でノミネート、受賞をあわせ110を超える評価を獲得し、本作へと繋がった。監督を務めるのはエバ・リベルタ。劇作家、社会学者の顔も持ち、そのキャリアは本作にも多大な影響を及ぼしている。
主演のミリアム・ガルロは、ろう者の俳優で監督の実の妹。監督が「きっと私たちは、一生をかけてこの映画を準備してきた」と語るように、本作には監督と妹自身の長年の実体験が色濃く反映され、研ぎ澄まされたリアリティが宿っている。
ろう者と聴者との僅かなすれ違い、それぞれが感じる異なる疎外感、いままでの 映画作品には決して無かった繊細で絶妙な演出が冴えわたる。ろう者と聴者が象徴的な主人公としながらも、母として、子として、夫婦として、そして生きる全ての人々が感じるふとした切なさ、些細な疎外感、そして必死にもがいた先の小さな幸せを見事に映し出す。
がんばってがんばって懸命に日々を過ごしている全ての人に贈る、本当の幸せへの道しるべ。

第75回ベルリン国際映画祭では、観客賞とアート・シネマ賞の2冠、第28回スペイン・マラガ映画祭では、観客賞、主演女優賞、主演男優賞の3冠、第40回ゴヤ賞では最優秀新人監督賞、最優秀新人女優賞、最優秀助演男優賞の3冠を受賞するなど、世界の映画祭で賞賛されている本作。
「透明で美しく、心が大きく動かされる」(エル・ムンド紙)、「2人の名優を揃えた感動的なデビュー作」(SER)、「心を大いに揺さぶる感動的な映画」(スクリーン・デイリー誌)など、海外のレビューでも絶賛の声が相次ぎ、日本での公開前から期待地が高まる。

監督を務めたのは、エバ・リベルタ。マドリード・コンプルテンセ大学で社会学の学位も取得しているスペインの映画監督。劇作家として、独立系の劇団やマドリード・コンプルテンセ大学、メキシコのケレタロ自治大学、メキシコの国立研究所や社会開発省などの機関に向けて、性暴力、人身売買、移民の性の権利などのテーマに関連する舞台作品も執筆・演出してきた経歴を持つ。

本作の元となった短編映画『Sorda』を監督した経緯と、そこから本作の製作に至った経緯については、「この長編の元になった短編『Sorda』は、妹が「子どもを持とうかな」と考えていたときに生まれました。そのとき、ろう者としての不安を私に話してくれて、私はそこで初めて気づいたんです。“聞こえる人が中心の社会で、母親になろうとするろうの女性って、こんなことを考えるんだ”って。女性としての不安に加えて、“ろうであること”から来る不安があることに、それまで思い至っていませんでした。そこで妹に、その不安を書き出してもらったんです。数日後に送られてきたリストが、すごく印象的で、そのリストから短編が生まれて、最終的にこの長編につながりました。現実に基づいてはいますが、物語としては完全にフィクションです」と語る。

© 2025. Distinto Films SLU, Nexus Creafilms SL, A Contracorriente Films SL, Diverso Films AIE

母性というテーマに真正面から向き合うため、本作ではろう者の女性たちへの丹念なインタビューを実施。妊娠、出産、育児に至るまでの実体験を丁寧にすくい上げ、その声を作品に反映させている。結果として、ろう者が抱える苦悩や葛藤は、表層的な描写にとどまらない確かなリアリティをもって立ち上がる。細部にまで行き届いたディテールは、聴者の視点からでも直感的に理解しやすく、自然と深い感情移入へと導いていく。

実の妹をキャスティングした点については、「一番の理由は、元になった短編での演技が本当に素晴らしかったからです。スクリーンでの存在感や、繊細な表現がすごく印象的で、私の思い描いていた役にぴったりでした。それに主人公のアンヘラという役は、ろう者が演じる必要があったんです。ミリアム自身がろう者ですし、もともと彼女の経験が着想になっている部分もあるので、これ以上ないキャスティングでした」と評価した。

© 2025. Distinto Films SLU, Nexus Creafilms SL, A Contracorriente Films SL, Diverso Films AIE

異なる感覚世界を生きる人々が、どのようにして互いの世界を共有しようとするのか、その試みの尊さと難しさを描いた作品だが、それぞれの立場でどのように接することが理想であるかという問いに対しては、「理想を言えば、聞こえる人が手話を学ぶのが一番いいと思います。すごく豊かで表現力のある言語ですし、実は赤ちゃんにも覚えやすいんです。ただ、全員がそれをできるわけではないので、主演のミリアムがよく言っているのは“とにかくコミュニケーションを取ろうとしてほしい”ということです。はっきり話す、顔を見て話す、順番に話す。それだけでも全然違うんです。大事なのは方法よりも“姿勢”です。尊重や優しさ、つながろうとする気持ち。同時に、制度的なサポートも必要です。通訳などを通じて、文化や教育にアクセスできるようにするのは社会の責任です。一方で、ろう者はすでにすごく努力しているんです。今必要なのは、聞こえる側もその努力に応えることだと思います」とした。

本国以外では当然字幕が付いての上映だが、本国スペインでも、ろう者の方のためにすべて字幕付きで上映している。「手話は聞こえる人に必要だし、音声はろう者に必要なので、両方に対応するためです。そのおかげで、ろうの母親と一緒に初めて 映画を観られた、という話もあって、とても嬉しかったですね」と喜びを口にした。

個人的に影響を受けた作品や、好きな映画に関しては、「観客として好きな映画と、監督として影響を受けた作品はほぼ同じです。若い頃に観た『ピアノ・レッスン』は大きかったですね。女性監督がいると初めて意識しました。その後はセリーヌ・シアマやアンドレア・アーノルド。イングマール・ベルイマンやイタリア・ネオレアリズモも好きです。日本映画だと、小津安二郎、是枝裕和、宮崎 駿が好きです」と日本の映画監督への言及も。

今後制作したいテーマは、「人間関係をこれからも描いていきたいです。特に家族や恋愛関係ですね。衝突や不安、そしてつながる瞬間。それが人をどう変えるのかに興味があります」と答えた。

最後に、本作を通して伝えたいこととして「多様性は障害ではなく、豊かさだということです。違いを恐れるのではなく、学ぶ機会として捉えてほしい。そして実際に、この映画がきっかけで医療現場の改善が起きた例もあります。最終的には、感動だけで終わらず、社会が動くことを願っています」とし、日本の観客に向けて「日本で上映されることを本当に嬉しく思っています。ろうの方には“自分の物語だ”と感じてもらえたら嬉しいですし、聞こえる方には新しい視点を持ってもらえたら。私たちは思っているより、ずっと近い存在なんだと思います」とメッセージを伝えた。

エバ監督が丹念に紡ぎ出した、ろう者の女性の日常に差し込むささやかな揺らぎ。その静謐な変化が、観る者の心を深く震わせる『幸せの、忘れもの。』は、5月1日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国公開。

「幸せの、忘れもの。」ポスタービジュアル© 2025. Distinto Films SLU, Nexus Creafilms SL, A Contracorriente Films SL, Diverso Films AIE