スイスの映画監督アラン・タネールの『光年のかなた』と『白い町で』が、7月19日より渋谷ユーロスペースにて2週間限定上映されることが決定した。
1960年代末から70年代にかけて、ヌーヴォーシネマスイスと呼ばれる新たな映画の潮流をもたらし、ヨーロッパをはじめ世界の映画史の変革をもたらしたタネール。ジャン=リュック・ゴダールやフランソワ・トリュフォーなどヌーヴェルヴァーグ作家と同世代のタネールは、ロンドンでブリティッシュニューウェーブ」、そしてパリでヌーヴェルヴァーグなど新時代の映画運動に強烈な刺激を受け、映画製作を開始。初長編作『どうなってもシャルル』で世界的な注目を集めるようになる。1981年にカンヌ国際映画祭コンペティション部門で審査員特別賞を受賞した『光年のかなた』はタネールの代表作となり、日本では1985年に「アラン・タネール映画祭」が開催され、評論家の蓮實重彦、梅本洋一らの手によって積極的に紹介された。『白い町で』は1986年に全国劇場公開され、ミニシアター文化の草創期を担う作家として大きな人気を博した。
『光年のかなた』はアイルランドの田舎を舞台に、青年ジョナスと大空を夢見る風変わりな老人の交流をファンタジックに描いたタネールの長編第7作。スイスの作家ダニエル・オディエの小説『野性の道』を原作としたタネール初の英語作品だ。
“ここではないどこか”を希求する老人と、彼に心惹かれ手助けをする青年を描いた本作。タネール自身はインタビューで「この物語の登場人物は私のものだと自覚した」と語っている一方で、ファンタジー要素を多く含んだ世界観は、ヌーヴェルヴァーグの遺伝子を受け継いだ以前の作品とは異質の感触を持ち、よりエンタメ性の高い作品となっている。撮影を担当したのは『ベディ・ブルー』で知られるジャン=フランソワ・ロバン。『逢びき』や『第三の男』のトレヴァー・ハワードが主演を務め、変わり者の老人ヨシュカを演じた。1981年のカンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞するなど高い評価を獲得した。今回の上映は、2021年8月にリマスターされた4Kレストア版となる。
『白い町で』は、晩夏のリスボンを舞台に、迷路のような町をあてどなく放浪する一人の男を描く。自己に深く潜り込み、日常と時の流れから離脱しようとする男の旅路を切り取ったタネールの長編第8作。
タネールは詳細な脚本は執筆せず、頭に浮かんだ風景、言葉、感情、記憶を自由に連想させ、俳優たちも即興的な演技を披露して撮影されたという。『エクソシスト』などで知られるウィリアム・フリードキン監督をはじめ、第97回アカデミー国際長編映画賞を受賞した『アイム・スティル・ヒア』のウォルター・サレス監督も「お気に入りの映画」とコメントしている。ブルーノ・ガンツが主演を務め、人生の倦怠から逃れようとする主人公ポールを演じた。今回の上映は、2019年8月にリマスターされた4Kレストア版となる。
なお、『光年のかなた』と『白い町で』の4Kレストア版Blu-ray BOXが、7月25日に発売されることも決定した。
コメント
アルフォンソ・キュアロン(映画監督)
タネールの映画からは大きな影響を受けた。
彼の作品に登場する人物の複雑さには計り知れないものがある。
彼は映画のキャラクターの内に秘めた矛盾が、いかに観客の心を揺り動かすかを信じていたのだ。
ウォルター・サレス(映画監督)
(『白い町で』は)大好きな映画のひとつ!
『光年のかなた 4Kレストア』
7月19日(土)より渋谷ユーロスペースにて2週間限定上映
出演:トレヴァー・ハワード、ミック・フォード
監督:アラン・タネール
1981年/スイス、フランス/カラー/108分/ビスタ/DCP
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『白い町で 4K レストア』
7月19日(土)より渋谷ユーロスペースにて2週間限定上映
出演:ブルーノ・ガンツ、テレーザ・マドルーガ
監督:アラン・タネール
1983年/スイス、ポルトガル/カラー/109分/ビスタ/DCP
©Filmograph – Alain Tanner. Collection Cinémathèque suisse.
配給:アート・アンサンブル
後援:在日スイス大使館
公式サイト:https://ivc-tokyo.co.jp/tanner_2025
公式X(旧Twitter):@Tanner_2025