公開記念挨拶
日程：11月29日（土）
会場：TOHOシネマズ 新宿
登壇：岸井ゆきの、宮沢氷魚、藤原さくら、三浦獠太、中島歩、天野千尋監督
11月29日（土）にW主演の岸井ゆきのと宮沢氷魚と共演の藤原さくらと三浦獠太と中島歩と本作の監督の天野千尋が登壇する公開記念舞台挨拶を行った。撮影秘話やそれぞれ本作を通して感じたことなどを語りました。
上映後、登壇者たちは来場者から温かい拍手に迎えられてステージに登場した。天野監督は、「5年ほど前に脚本の熊谷まどかさんと、まったく白紙の状態から考え始めた物語がこうして映画になり、多彩な皆さんと舞台挨拶ができているのは、とてもありがたいことだと感じています」と述べ、感慨深い表情を見せた。
本作は、鑑賞後に「身に覚えがある」「共感できた」といった声が多く寄せられている。脚本を初めて読んだ当時を振り返り、岸井は「夫婦生活の経験がなかったため、些細なことから大きなけんかに発展する様子がとてもドラマチックに感じられた」と述べた。一方で、観客からは「これくらいは日常的なこと」「まるで自分の家庭の話のようだ」といった感想も多く届いているという。
岸井はそれらの反応を受け、「人と人が共に生活することがどれほど大変なのかを改めて感じさせられる作品になった」と語り、穏やかな笑みを見せた。
宮沢も「強く共感できる部分があった」と振り返り。自身について「タモツに似たところがあり、言いたいことをうまく言葉にできず、気づかないうちに気持ちを抱え込み、限界を超えてしまうことがある」と述べ、演じたキャラクターに親しみを感じた様子を見せた。また、「岸井ゆきのさんと演じることで、どのような化学反応が生まれるのか楽しみだった」と当時の思いを語った。
撮影現場の雰囲気は「とても穏やかだった」と2人は口をそろえる。宮沢は「ケンカのシーンが多いが、カットがかかったあとは互いに気を配り、すぐ普段の自分たちに戻っていた」と語り、岸井も「現場ではよく雑談をしていた」と穏やかな様子を振り返った。
藤原は、本作が自身にとって初めての母親役だったと振り返る。役作りについて思案していたというが、撮影が始まると赤ちゃんを抱いて演じる場面が多く、新鮮な体験になったと語った。特に、赤ちゃんを抱えたままサチに離婚を相談しに行くシーンでは、自身の感情だけでなく、腕の中に伝わる体温を感じながら「この子はこれからどうなるのだろう」と考えることもあったという。藤原は、こうした体験を通して初めて味わう感覚が多く、役に向き合う上で大きな学びになったと穏やかな表情で述べた。
作中では、タモツが「男性なのに十分に稼げていない」という視線にさらされたり、サチが「母親なのに仕事を優先している」と見られたりと、社会に残る価値観が人物たちに影響を与える様子が描かれている。監督は「こうした価値観に悩む人は今も多いのではないかと感じている。作品では、その部分と丁寧に向き合いたかった」と語った。
岸井は「夜の海に行ってみたい」と願望を口にし、中島が「危ないですよ」と軽く注意しながら、会場を和ませた。一方、中島自身は「領収書を整理したい。確定申告が始まる前に、今年分は年内に片付けたい」と、現実的な目標を挙げていた。
上映後の熱気に包まれた会場では、作品の魅力について語り合う時間が続いた。宮沢は「昨日、ネットでさまざまな感想を拝見した。サチに共感する人、タモツに共感する人、どちらの気持ちも分かるという人など、多様な意見や体験談が寄せられており、作品がしっかり届いていると感じた」と話した。岸井も「多くの感想が届いていて、人に話したくなるような映画になったと感じている。観た方同士で語り合ってもらえたらうれしい」と思いを述べた。
天野監督は、オリジナル脚本で映画を制作できたことについて「いまはオリジナル作品をつくる機会が貴重であり、有名な原作があるほうが企画として成立しやすい。そんな中で上映に至ったことをとてもありがたく思っている」と改めて感慨を語った。その一方で、「原作の知名度がある作品と比べると、広がりにくい面もある」と率直に触れつつ、観客の力で作品が広まっていくことに期待を寄せていた。
藤原は作品を観て、「人生には明確な正解があるわけではなく、それぞれが選んだ道の先に景色が広がっていくのだと感じた」と述べ、静かにうなずいた。三浦は、脚本を読んだ際には「つらい場面が多い」と感じたものの、完成した映画では、けんかのシーンが客観的に見るとどこか可笑しさを帯びて見える部分もあったとし、「人が一生懸命に生きた結果として起こる出来事は、外から見ると少しユーモラスに見えることもあると気づいた」と笑顔を見せた。
中島は、「タモツのようにはなりたくないと思いながらも、ふと自分もそうなる瞬間があるかもしれないと感じ、リアリティに圧倒されながら観ていた」と率直な気持ちを語った。
また、岸井と宮沢は撮影現場での子どもとの共演について尋ねられると、ともに「とてもかわいかった」と表情を和らげた。宮沢は「子どもの成長を間近で見られるのが毎日の楽しみだったし、一緒に過ごす時間が現場の癒しになっていた」と話し、岸井も「泣いてしまうこともあったが、それも含めて“生きている”という実感があって、良い時間だった」と笑顔で振り返った。
物語
佐藤サチ(22)は、ダンス好きの活発なアウトドア派。佐藤タモツ(22)は、正義感の強い真面目なインドア派 。正反対な性格だがなぜか気が合い、程なくして付き合い同棲を始める。そして5年後。弁護士を夢見るタモツは、司法試験を受けるが不合格が続く。しかし諦めずまた挑戦したいというタモツを応援するサチは、一人孤独に頑張るタモツを助けようと、一緒に勉強をはじめると、相変わらず不合格だったタモツとは反対に、サチが司法試験に受かってしまう・・・！！
申し訳ない気持ちのサチと、プライドがズタズタのタモツ。そんな中、サチの妊娠が発覚！ふたりは結婚することになるが・・・！？
岸井ゆきの 宮沢氷魚
藤原さくら 三浦獠太 田村健太郎 前原 滉 山本浩司 八木亜希子 中島 歩
佐々木希 田島令子 ベンガル
監督：天野千尋
脚本：熊谷まどか 天野千尋 音楽：Ryu Matsuyama Koki Moriyama（odol）
主題歌：優河「あわい」（ポニーキャニオン）
配給：ポニーキャニオン 製作プロダクション：ダブ 2025年／日本／カラー／アメリカンビスタ／DCP／5.1ch／114分
（C）2025『佐藤さんと佐藤さん』製作委員会
