毎年11~4月、メニュー開発のため休業する、スペインの有名店<ムガリッツ>。世界屈指の“異端の名門”との呼び声も高い<ムガリッツ>の革新的な料理の誕生プロセスを追ったガストロノミック・ドキュメンタリーで、第72回サン・セバスティアン国際映画祭カリナリーシネマ部門・ベストフィルム受賞をした映画『ムガリッツ』が2025年9月19日(金) より公開される。
スペイン・バスク地方、ガストロノミーの中心地。ミシュランガイドに「レストランを超えた存在」と評され、2つ星を獲得した名門<ムガリッツ>の名前は、21世紀に入る頃から、業界で大きな注目を浴び始めた。グラスなどを並べずアーティスティックなオブジェだけを載せたテーブル、カトラリーを排して手や舌を直接使って味わう料理…。『ムガリッツ』の革新的な厨房に潜入したカメラは、研究開発チームやシェフたちが実験的な料理を作り上げるメニュー開発の様子に密着する。
この度、石をナイフがわりに使う料理や、火も食材も味も存在しない?<煙>料理を考案するスタッフの様子を捉えた本編映像が解禁された。
映像は、ムガリッツの厨房で繰り広げられるメニュー試作の真っ只中――まるで実験室さながらの光景が映し出される。骨を模した<器>を石で叩き割ると、中から現れるのは、仔羊のスープ、牛筋、卵黄を使った、“何か”。「料理はカトラリーで食べるもの」という常識が、ムガリッツでは見事に覆される。
続いて登場するのは、<煙>の料理。「試作品は電池と液体が入ったボウルだけで、煙しか出ません」――火も食材も味も存在せず、そこにあるのは“煙”のみ。にもかかわらず、スタッフたちは真剣な表情で順に煙を吸い込み、その可能性を見極めようとする。
残された人生をどう生きるか。すべてをやり遂げたのか?親友はすでにここにいるのか?あなたの好きな食べ物はもうここにある?お気に入りの歌や本は見つかったのか?もう(出会ってないものは)何もないのだろうか?(既知のものですべてを固めて生きるのは)私には、まったくもって悲しく思える」「もしかしたら、私の好きな料理はまだ登場していないかもしれないし、私の親友もまだ登場していないかもしれない」「何かしよう。人々が、自分では決して経験できないようなことを経験する、その手助けをするために、知性をすべて注ぎ込もう。新たな選択肢を明らかにする扉が開くかもしれないから。ムガリッツはまさに反アルゴリズムであり、他の人々は時として扱わないものだが、私たちはここで取り上げている。
<食べる>という行為を、人間の五感を巻き込んだアート体験へと昇華させるために――ムガリッツの飽くなき探究心と情熱が映し出された、象徴的なシーンとなっている。
従来のレストランコードをこともなげに崩し、ゲストの好奇心を誘い、五感を研ぎ澄まさせ、独自の世界観で今までになかった食空間を生み出した<ムガリッツ>。ムガリッツは、毎年11~4月の6か月間は休業し、この期間はスタッフ総出で、メニュー開発に専念する。その年に誕生した料理が翌年以降に提供されることはなく、革新的なメニューはつねに更新され続けるー。そんな異端の名門ムガリッツの研究開発チームに密着、メニュー開発の舞台裏を追ったドキュメンタリーが誕生した。
監督をつとめたのは、『REC』シリーズなどのホラー作品で知られるパコ・プラサ氏。もともと<ムガリッツ>の熱心なファンだった彼が、その創造の秘密を解き明かすべく厨房に潜入、ついにその全貌が明かされる。
<ムガリッツ>のオーナーシェフはアンドニ・L・アドゥリス。革新的な料理法や「分子ガストロノミー」を先駆けて取り入れ、世界中の料理界に大きな影響を与えた有名な三つ星レストラン<エル・ブジ>など、名だたるレストランで修行後、1998年3月にムガリッツを開店。今や世界中の料理人から熱い羨望の眼差しを受ける<ムガリッツ>を育てあげた。
レストランとは従来、美味しいものを食べる場所であったかもしれない。だが、ここは、レストランの定義を超えた、ガストロノミーのフロンティアであり、口にするのは、“世界をひらく鍵”。
映画『ムガリッツ』は2025年9月19日(金) よりシネスイッチ銀座ほか順次ロードショー。
【作品情報】
ムガリッツ
2025年9月19日(金)よりシネスイッチ銀座ほか順次ロードショー
配給:ギャガ
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