完成披露舞台挨拶
日時:9月15日(月)
会場:イイノホール
登壇:杉咲 花、南 琴奈、板垣李光人、渋川清彦、くるま(令和ロマン)、松居大悟監督
本作は、芥川賞作家・金原ひとみによる歌舞伎町を舞台とした同名小説を映画化したもの。第35回柴田錬三郎賞を受賞した原作をもとに、杉咲花を主演に迎え、擬人化焼き肉漫画『ミート・イズ・マイン』を愛読する一方で、自分自身を好きになれない27歳の女性が、新たな世界と出会う姿を描いている。
出演を決めた理由について、杉咲は「今は共感や共通点をきっかけに人と人がつながることが大切にされているように感じます。でもこの作品は、それとは逆に“わかり合えなさ”を強く描いている。それでもなお、人は寄り添い、近くにいられるのではないかという祈りのような想いが込められていて、そこがとても素敵だと感じました」と語った。
松居監督は、映画化を決めた理由についてこう振り返った。
「世の中にはいろいろな考え方があるのに、自分と違う意見に出会うとすぐに『それは違う』と否定してしまうような、少し息苦しい空気を感じていました。そんな中で金原さんの原作を読んだときに、『考え方が違ってもいい、それぞれのままで歩んでいけばいい』という感覚になったんです。その想いは今の時代にこそ映画として届けるべきだと感じ、映画化を決意しました」
キャバ嬢・ライ役をオーディションで射止めた南は、上映前の舞台あいさつに登壇し「緊張しています」と初々しい笑みを見せた。
オーディションを振り返り、「台本をいただき、作品の概要を伺ったときに、一瞬でこの世界に惹かれました。『自分もこの世界に入りたい』と強く思ったんです」と語る南。実際の審査では杉咲と共演する形で芝居を披露し、「オーディションであることを忘れてしまうくらい、楽しくてのびのびと演じられました」と充実した時間だったことを明かした。
役が決まったときの心境については「すぐには実感がわかなくて、私よりもマネージャーさんがとても喜んでくれました。その姿もすごく嬉しかったです」と笑顔で回想。さらに撮影中について「自分がこの場に立っていることが不思議で、夢のような時間でした」と振り返り、感慨深げな表情を浮かべていた。
この日の舞台あいさつでは、主人公・由嘉里が『ミート・イズ・マイン』を推していることにちなみ、キャスト陣がそれぞれの“推し”について語る場面があった。杉咲は「私はガールズグループのHANAにすごく夢中です。『No No Girls』をずっと見ていて応援していますし、ファンクラブにも入りました」と告白。自身にとって初めてのファンクラブ加入だといい、その熱意を明かした。
HANAの魅力について杉咲は「努力を惜しまずに内側から輝いていく姿が本当に素晴らしい」と語り、さらに「あるメンバーの方が『一番大事なのは頑張ることではなく、自分を大事にすること』と言っていて。人一倍努力してきた彼女たちだからこそ、その言葉に重みがあると感じました。そんなふうにファンに向けて発信できるのが本当に素晴らしいと思って、すごく応援しています」と熱く思いを伝えていた。
南の“推し”は意外にも「蕎麦」。この夏は「1日に1食は食べていたくらいで、今日のお昼も蕎麦を食べました」と笑顔で明かし、日常に欠かせない存在になっていることを語った。
同じく食べ物を挙げた板垣李光人は「アスパラガス」を推しとして紹介。「ごはんを食べに行くと、アスパラガスのメニューはだいたい頼んでいます。小さい頃は、近所に自生していたアスパラガスを持ち帰ったりしていました」と、幼い頃から続く“アスパラ愛”を披露した。
一方、渋川清彦は女性ロックバンド「おとぼけビ~バ~」、筒井真理子はピン芸人の「ほいけんた」を推しに挙げ、それぞれ熱のこもった魅力紹介で会場を盛り上げた。
さらに、くるまは「区」と書かれたフリップを掲げ、思わぬ回答で笑いを誘う。「アイドルや野球も好きでグッズを買ったりするのですが、一番課金しているのは区民税だと気づきました。税金が上がると区の道や図書館、保育園などへの愛着が増して『我が道』『我が図書館』という感覚になるんです。公園で写真を撮ったり、映画『PERFECT DAYS』のような過ごし方をしています」と独自の視点で“推し”を語った。
舞台あいさつの終盤には、杉咲花が「実は今日、自分の同級生が4人も初めて舞台あいさつを見に来てくれて」と告白。さらに「そのうちの一人が、中学に入ったばかりの頃、遠くの席からジッとこちらを見ていて『なんだろう』と思っていたら、授業後に『友達になりたいです』という手紙をくれて、すごくびっくりしたんです」と思い出を振り返り、客席を温かい雰囲気に包んだ。
杉咲は、中学時代の友人との出会いを振り返り「その時は少し怖いなとも思ったのですが、積極的に関わろうとしてくれたからこそ、14年経った今でもこうして友人でいられるのだと思います」と語った。
さらに「世界にはさまざまな特徴やルーツを持った人たちがいて、出会った時に怖さやドキドキを感じるのは、ただその人を知らないから。自分が無知なだけであって、本当は怖いことではないのだと思います」と、自身の考えを丁寧に伝えた。
最後に「人と人との間には、分かり合えないことがたくさんあると思います。でも、相手を知ろうとすることで、その人の愛らしい部分や、嫌いになれない部分が見えてくるのかもしれません。そうしたことを考えさせてくれる、エールのような映画になっていたら嬉しいです」と締めくくり、舞台あいさつを終えた。
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キャスト:杉咲 花
南 琴奈 板垣李光人
くるま(令和ロマン) 加藤千尋 和田光沙 安藤裕子 中山祐一朗 佐藤寛太
渋川清彦 筒井真理子 / 蒼井 優
(劇中アニメ「ミート・イズ・マイン」) 村瀬 歩 坂田将吾 阿座上洋平 田丸篤志
監督:松居大悟
原作:金原ひとみ『ミーツ・ザ・ワールド』(集英社文庫 刊)
脚本:國吉咲貴 松居大悟
音楽:クリープハイプ
主題歌:クリープハイプ「だからなんだって話」(ユニバーサルシグマ)
製作:藤本 款 和田佳恵 津嶋敬介 大好 誠
プロデューサー:深瀬和美 白石裕菜
撮影:塩谷大樹
アニメーション制作:UWAN Pictures
キャラクターデザイン:あおいれびん
©金原ひとみ/集英社・映画「ミーツ・ザ・ワールド」製作委員会
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(日本映画製作支援事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会
2025年/日本/カラー/アカデミー(1.37:1)/5.1ch/126分/G