『ハムネット』俳優河内大和(『8番出口』) 登壇トークイベント
映画『ハムネット』トークイベント
日時:3月19日(木)21:00~21:30
場所:ユーロライブ(渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F)
登壇:河内大和
『ノマドランド』のクロエ・ジャオ監督の最新作で第98回アカデミー賞®最優秀主演女優賞(ジェシー・バックリー)に輝いた『ハムネット』の上映会が3月19日(木)に都内劇場で行われ、上映後のトークイベントには、映画『8番出口』の“おじさん”役などで注目を集める河内大和が登壇! シェイクスピアを題材にした本作にちなんで、これまで数多くのシェイクスピアの舞台に出演した河内が、本作、およびシェイクスピア作品の魅力をたっぷりと語ってくれた。
先日、開催された日本アカデミー賞にて河内は新人俳優賞を受賞しており、今回の上映に足を運んだ観客は拍手で受賞を祝福! NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」をはじめ、今クールだけでも複数のドラマに出演、映像作品でも引っ張りだこの河内だが、これまでに80作品を超えるシェイクスピア作品の舞台に出演している筋金入りの“シェイクスピア俳優”であり、本作のトークゲストにふさわしい俳優と言える。
映画『ハムネット』を観ての感想を問われると、河内さんは「泣きましたねぇ……途中から最後までずっと泣いていました。僕は10回以上、『ハムレット』に出ていて、いろんな役をやりまして、『ハムレット』への思い入れもありましたし、どんな経緯で『ハムレット』が描かれたというのはなんとなく分かっていたことなんですが、ここまで明確に描かれると……。ちょっと観ていて、いてもたってもいられなくなって、とめどなく涙が流れてきました。ここまでの体験は初めてでした」と興奮気味に感動を口にした。
この日の上映の様子もそっと見ていたそうで「(シェイクスピア)夫婦が何も言わないで、沈黙のまま見つめ合っている瞬間が、あまりにも素敵で愛おしくて……。『あぁ、この夫婦はつながっているんだな』とまた泣いてしまいました」としみじみと語り「『ハムレット』で現実と虚構がつながるところ、人間と人間がつながるところが本当に丁寧に描かれていて、見事でした」と称える。
アカデミー賞®主演女優賞を受賞したジェシー・バックリーの演技については「僕が語れるようなもんじゃないですね(笑)、あまりにすご過ぎて……。どうやったらこんな芝居ができるのか? ムチャクチャ聞きたい! シェイクスピアの奥さんが、ここまでフィーチャーされたことはなかったし、どういう人物なのかは想像するしかないんですが、でもやはり、シェイクスピアは、この奥さんがいたから作品を描くことできたし、あそこまでの言葉を生み出すことができたんだなというのを『現実でもきっとそうだったんだろうな』と思わせてくれる、本当に生きた人物を演じていました。『あぁ、そうか。この奥さんがいて、シェイクスピアがいたんだな……』と感じました」と称賛を贈る。
さらに、ポール・メスカルが演じたシェイクスピアについても言及。「シェイクスピアがどんな人だったのかはいまだに謎なんですが、僕は愉快な人だったんじゃないかと思っているんです。あれだけの言葉で悲劇から喜劇、史劇まで何でも書けるなんて、ちょっとお気楽さがないとできないんじゃないかと……」と独自の見解を語り、その上で本作におけるシェイクスピアについて「ここまでリアルなシェイクスピアを見たのは初めてで、『こういう人だったんだろうな』と思ったし、間違いなく言えるのは、誰よりも愛の強い人だったんだろうということです」と語った。
そして、80作品を超えるシェイクスピア作品に出演してきた俳優として、この 映画で描かれる『ハムレット』誕生の解釈について「なにより驚いたのは、『ハムレット』がどうやって立ち上がったのか?というのを、これが事実かどうかは別として、ここまで丁寧に、言葉が生まれる前の、まだ何も言葉にできない、なんとも言えない人間と人間の間のことを丁寧に描いていること。心の深淵、人間の中にある宇宙みたいなものを描いていて、まさにそれがシェイクスピアの根源なんだなというのがよく分かりました。特徴的なところとして、いろんな“声”が聴こえてくるんですね。大自然の音もそうだし、しゃべってない時の人物たちの心の声がすごく聴こえてきて、こんなに豊かな沈黙はないなと感じました」と熱く語った。
河内自身は、どのようにしてシェイクスピアの“沼”にハマったのか?という問いに対しては「僕は、ずっと新潟にいて、演劇を始めて、ちょうどその時期にりゅーとぴあ(新潟市民芸術文化会館)という劇場ができて、初めての俳優養成講座で『真夏の夜の夢』をやることになり、そこでパック(いたずら好きの妖精の役)をやったんです。それを見ていたプロデューサーさんから、僕の俳優デビュー作となる『リチャード三世』に呼んでいただき、そこで吉田鋼太郎さんとも会いまして、沼から抜け出せなくなりました(笑)」とふり返る。そして、改めてシェイクスピア作品の魅力について「こんなに突き落されることもないし、こんなに有頂天にさせてくれる戯曲もないと思います。振れ幅がすご過ぎて、稽古、本番の期間中は浮き沈みが激しくて、タガが外れちゃうし、そうしないと演じ切ることできない。終わった後のヘトヘトさと言ったら……(苦笑)。その度に『もう二度とやりたくない!』と思うくらい、あまりにしんどいけど、ちょっと経つとまたやりたくなるんです。その“謎”なところがやめられない原因だと思います」と苦笑まじりに“中毒性”を口にする。
『ハムレット』には、「To be, or not to be」などの名言、名ゼリフも多いが、シェイクスピアが紡ぎ出す言葉の力についても、河内さんは「言葉って人を絶望に陥れることもあるし、希望に向かわせることもできる、とても危険なものだと思います。伝え方、捉える側の精神状態もあるし、すごくセンシティブなものであり、だからこそ、ここまで言葉に執着し続けたシェイクの言葉はいつまでも残り続ける。僕も同じ作品でも、出合う時期によって感じ方が全然違います。シェイクスピアの言葉には、詩の偉大さを感じます」とその美しさ、強さに言及。
そして日本でも常にシェイクスピアの作品がどこかの劇場で上演されており、今年も複数の劇場で『リア王』が上演されていることについて河内は、日本人のシェイクスピア好きについて「シェイクスピアは本当に、ただただ、人間のことを描いている――家族のこと、恋人のこと、親子のこと、友達のことを描いているだけ。“人情もの”であり、歌舞伎にも通じるところがたくさんあるので、日本の皆さんが好きなんじゃないかと思います」と人間を真っ向から描き続ける普遍性を強調した。
最後に改めて、本作『ハムネット』について河内は「この 映画は、絶対に劇場で観たほうがいいです。劇場の閉ざされた空間で集中して、真っ暗な中で見ると、いろんな音、他の劇場にはない音もいっぱい聴こえてきます。それは劇場でしか体験できないし、僕もこんなに没入したことがなくて、最終的に魂がバーッと持って行かれて、終わった後は空っぽの世界にストーンと落されたみたいな稀有な体験をさせてもらいました。ぜひぜひ劇場で観るべき作品だと思います!」と力強くアピールし、会場は温かい拍手に包まれた。







