映画

『みんな、おしゃべり!』TIFFでワールドプレミア上映

日付:10月30日(木)
場所:角川シネマ有楽町
登壇:長澤樹、毛塚和義、那須英彰
ユードゥルム・フラット、ムラット・チチェック
河合健監督、小澤秀平プロデューサー

この度、河合健監督のオリジナル最新作『みんな、おしゃべり!』を、11月29日(土)よりユーロスペース、 シネマ・チュプキ・タバタほか全国順次公開となります。

本作は、現在開催中の第38回東京国際映画祭(10月27日(月)~ 11月5日(水))のアジアの未来部門に公式出品されており、10月30日(木)にワールドプレミア上映を迎えました。上映前には、主演を務める長澤樹をはじめ、キャスト、河合健監督、小澤プロデューサーらが登壇し、舞台挨拶を行いました。

監督を務めたのは、挑戦的なオリジナル作品に定評がある河合健(「なんのちゃんの第二次世界大戦」(21))。CODA(Children of Deaf Adults/ろうの親を持つ聴者の子どもの意)である河合監督が、日本手話とクルド語を題材にしたオリジナル脚本で、消滅危機言語、コミュニケーションの問題に取り組んだ。主人公のCODAの夏海役は映画『愛のゆくえ』の長澤樹、父の友人役にはドラマ「デフ・ヴォイス」の那須英彰、同じく父の友人役として映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』の今井彰人、街おこしを計画する団体職員役に板橋駿谷、ろう学校の先生役として小野花梨が参加している。また、夏海の父・和彦役で演技に初挑戦するのは、西日暮里でラーメン屋を営む「麺屋義」の店長でろう者の毛塚和義。その他にも演技初挑戦となる、ろう者・クルド人が多数出演しており、登場人物たちと同じ第一言語に属する方々がキャスティングされている。

河合健監督、新作で観客との「交信」を追求!
現在開催中の第38回東京国際映画祭で「アジアの未来部門」に公式出品されている、映画『みんな、おしゃべり!』が10月30日(木)にワールドプレミア上映を行い、キャストらが舞台挨拶に登壇した。
上映前に行われた舞台挨拶では、主演を務めた長澤樹が「短い時間ですが、楽しんでいただけたら幸いです」と笑顔を見せ、

映画デビューを飾った毛塚和義は「今回が映画初デビューです。ぜひ楽しんでください」と出演の喜びを伝えた。また、那須英彰は「コメディとして笑えるだけでなく、“言語”という大切なテーマも描かれています」と作品をアピールし、会場は温かな拍手に包まれた。

映画上映後、河合健監督が登壇し、観客とのティーチインを実施。河合監督は、映画制作の目的は「何かのメッセージを伝えるためではなく、観客とのコミュニケーション」にあるといい、そのために本作で採用したユニークな演出手法や、困難を極めた撮影の裏側を語った。
本作を制作した大きなきっかけの一つは、監督自身がCODAであることだと述べ、当初から、ろう者やCODAをテーマにした映画を撮りたいという思いはあったという。しかし、自分自身や身近な存在を描くことよりも、他者を描くことに面白さを感じていたため、企画は長らく進まなかった。転機となったのは、「6年ほど前から感じ始めた“他者を見つめる行為の喪失”に対する漠然とした怖さです。人々が、目の前の他者よりも「情報」を優先し、情報の方が信頼度が高いと感じている現状に違和感を抱きました」と振り返り、「この“見つめる”って何なんだろうという探求は、 “見つめる”表現である映画を通して行うのが最も適切であると考え、本作の制作に至りました」と明かした。
観客から、「ろう者家族と対面する外国人家族にクルド人を選んだ理由」について質問が挙がると、「脚本の構想段階で、ろう者家族と出会う外国人の家族という設定が生まれました。その際、日本手話が持つ歴史や背景と共通項のある言語を選ぼうと考えました。どの国においても第一言語になることのできないマイノリティ言語であること。かつて言語として認められていない、もしくは禁止されていた歴史があること。この二つの条件が共通しており、かつ日本で当事者に出演してもらい撮影が可能であるという現実的な理由から、クルド語に決めました」と回答。ロケーションは、クルド人が実際に多く住む埼玉県川口・蕨周辺を中心に選んだが、本作の重要な舞台となる夏海の父・和彦が営む電器店はロケ地の確保に苦労し、最終的に横浜市の店舗で撮影されたという。

本作の字幕について尋ねられると、東京国際映画祭用に字幕を付け直したと明かし、その意図として「観客の言語(日本語、日本手話、英語)によって受け取れる情報量が異なるため、字幕を緻密に調整しました。今日上映されたバージョンは、国内版と英語字幕版を組み合わせた特別なもの。それぞれのバージョンで“映画のストーリーの大枠は最低限わかるが、わからない部分をどこに残すか”という調整をしています」と説明。

映画の後半、ある場面からは、撮影技法が意図的に変更されているのでは?という質問には、「その通りです。前半の手持ちカメラに対し、後半では三脚で固定されたカメラでの撮影に切り替わっています。これは、物語を追うことよりも、“映画の持つ言語、表現における言語って何なんだろう”という問いに焦点を当て、観客とコミュニケーションを取りたいという演出意図に基づいています。後半ではレンズなど機材も一式変更し、意図的に撮影スタイルを分けました」という。

撮影現場は映画本編さながらのカオスな状況だったと振り返った河合監督。リハーサル通りに進まないことが常態化しており、特に日本語が話せないクルド人俳優のムラットや、演技初挑戦の俳優との間で、ワンシーンの説明に1時間近く費やした上で、リハーサルを行っていたという。「毎日、“もう撮りきれない”、“完成しない”と心では焦りながら、ゆっくりとしたペースの中で必死で撮影に臨んでいましたね。後半の天候の変化(雨)なども含め、カオスな状況そのものを面白く使うしかない、という方針でなんとか乗り切りました」と壮絶な裏話を明かし、意地と執念で完成させた映画『みんな、おしゃべり!』の劇場公開に向けて、観客へ想いを託した。
出演:長澤樹、毛塚和義、福田凰希、ユードゥルム・フラット、Murat Çiçek、那須英彰、
今井彰人、板橋駿谷、小野花梨
監督:河合健
脚本:河合健、乙黒恭平、竹浪春花
プロデューサー:小澤秀平
ろうドラマトゥルク・演技コーチング:牧原依里 /手話指導:江副悟史 /ろう俳優コーディネート:廣川麻子/ クルド表現監修:Vakkas Colak
企画・配給・製作プロダクション:GUM株式会社
配給協力:Mou Pro.  助成:文化庁文化芸術振興費補助金(日本映画製作支援事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会
©2025映画『みんな、 おしゃべり!』製作委員会

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