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「第34回日本映画批評家大賞授賞式」監督賞に入江悠監督が受賞

第34回日本映画批評家大賞の授賞式が本日6月9日に東京・東京国際フォーラムで行われ、「あんのこと」で監督賞を獲得した入江悠が出席した。

その中で、映画『あんのこと』は監督賞と主演女優賞の2部門を受賞する栄誉に輝いた。本作は、機能不全の家庭に育ち、薬物依存に陥った少女・香川杏の姿を通して、光と影が交錯する現代の社会を描き出す。主人公・杏を演じた河合優実の演技には高い評価が集まり、共演には佐藤二朗や稲垣吾郎らが名を連ねている。

監督の入江悠氏は、受賞に際し、「撮影現場では自分は何もしていなかったように感じる」と謙遜しつつも、脚本執筆の背景に触れた。2020年に友人を亡くした経験が物語の出発点となっており、「なぜあのとき、たった一本の電話をしなかったのか」という後悔を胸に作品を構想したという。その思いを軸に、脚本の芯を見失わずに制作を進めたと語った。

また、「家庭環境に関わらず、個人が簡単に孤立してしまうことがある」と述べ、このテーマについて今なお思索を続けていると話す。「観客の感想を聞きながら、答えを探し続けているような感覚です」と語る姿には、作品に込めた誠実な思いがにじんでいた。

■『第33回日本映画批評家大賞』結果
・作品賞:『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(呉美保監督)
・監督賞:入江悠監督『あんのこと』
・主演男優賞:吉沢亮『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
・主演女優賞:河合優実『あんのこと』
・助演男優賞:綾野剛『まる』、森優作『ミッシング』
・助演女優賞:忍足亜希子『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
・ドキュメンタリー賞:『大きな家』(竹林亮監督)
・アニメーション作品賞:『ルックバック』(押山清高監督)
・新人監督賞:山中瑶子監督『ナミビアの砂漠』
・新人男優賞(南俊子賞):齋藤潤『カラオケ行こ!』、本山力『十一人の賊軍』
・新人女優賞(小森和子賞):長澤樹『愛のゆくえ』
・脚本賞:甲斐さやか『徒花 -ADABANA-』
・編集賞(浦岡敬一賞):田端華子『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
・松永文庫賞(特別賞):東映剣会
・ゴールデン・グローリー賞(水野晴郎賞):根岸季衣『サユリ』
・ダイヤモンド大賞(淀川長治賞):草笛光子『九十歳。何がめでたい』

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