第34回日本映画批評家大賞の授賞式が本日6月9日に東京・東京国際フォーラムで開催され、作品賞に選ばれた「ぼくが生きてる、ふたつの世界」の監督・呉美保、キャストの吉沢亮、忍足亜希子らが登壇した。
『ぼくが生きてる、ふたつの世界』は、耳の聞こえない両親のもとに生まれた青年が、コーダ(CODA:Children of Deaf Adults)として育つ中で抱える葛藤や家族との絆を描いた作品です。本作は作品賞をはじめ、吉沢が主演男優賞、忍足が助演女優賞、田端華子が編集賞(浦岡敬一賞)を受賞するなど、高い評価を得ました。
監督を務めた呉は、2015年にも『そこのみにて光輝く』で第24回日本映画批評家大賞の監督賞を受賞しており、その際には主演男優賞(綾野剛)、助演男優賞(菅田将暉)、助演女優賞(池脇千鶴)とあわせて複数の部門での受賞を果たしています。今回の授賞式では、「当時は出産を控えて入院中で、病院で受賞のニュースを知りました。翌日に長男が生まれたこともあり、非常に思い入れのある映画賞です」と当時を振り返りました。そして、「この数年間は私生活が忙しく、もう映画を撮れないかもしれないと感じていた時期もありましたが、本作で再び評価をいただけたことに感謝しています」と語り、受賞の喜びをあらわにしました。
授賞式では、主人公の父親役を演じた今井彰人がサプライズで登壇しました。今井は、「マイノリティの存在を映画で取り上げていただいたことで、コーダという見えづらい立場について多くの方に知っていただけました。また、役者を目指す方々にも良い影響があったのではないかと思います」と述べ、作品の意義について語りました。
主演の吉沢は、「家族がそろいましたね」と笑顔を見せ、「現場では今井さんや忍足さんの手話から、言葉を超えた愛情を感じました」とコメント。さらに、「今井さんは撮影中は堂々とした父親役でしたが、実は僕と3歳しか年が離れていないんです」と明かし、撮影現場で感じた親しみやすさや信頼関係についても触れました。登壇者たちのやり取りからは、作品を通じて築かれた強い絆が感じられました。

監督:呉美保
脚本:港岳彦
主演:吉沢亮
出演:忍足亜希子 今井彰人 ユースケ・サンタマリア 烏丸せつこ でんでん
原作:五十嵐大「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」(幻冬舎刊)
企画・プロデュース:山国秀幸 手話監修協力:全日本ろうあ連盟
製作:「ぼくが生きてる、ふたつの世界」製作委員会(ワンダーラボラトリー/博報堂DYミュージック&ピクチャーズ/ギャガ/JR西日本コミュニケーションズ/アイ・ピー・アイ/アミューズ/河北新報社/東日本放送/シネマとうほく)
SPEC:2024/日本/カラー/ビスタ/5.1Chデジタル/105分/映倫:G
配給:ギャガ
©五十嵐大/幻冬舎 ©2024「ぼくが生きてる、ふたつの世界」製作委員会
■『第33回日本映画批評家大賞』結果
・作品賞:『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(呉美保監督)
・監督賞:入江悠監督『あんのこと』
・主演男優賞:吉沢亮『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
・主演女優賞:河合優実『あんのこと』
・助演男優賞:綾野剛『まる』、森優作『ミッシング』
・助演女優賞:忍足亜希子『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
・ドキュメンタリー賞:『大きな家』(竹林亮監督)
・アニメーション作品賞:『ルックバック』(押山清高監督)
・新人監督賞:山中瑶子監督『ナミビアの砂漠』
・新人男優賞(南俊子賞):齋藤潤『カラオケ行こ!』、本山力『十一人の賊軍』
・新人女優賞(小森和子賞):長澤樹『愛のゆくえ』
・脚本賞:甲斐さやか『徒花 -ADABANA-』
・編集賞(浦岡敬一賞):田端華子『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
・松永文庫賞(特別賞):東映剣会
・ゴールデン・グローリー賞(水野晴郎賞):根岸季衣『サユリ』
・ダイヤモンド大賞(淀川長治賞):草笛光子『九十歳。何がめでたい』