染谷将太が主演を務める映画『廃用身』(はいようしん)が2026年5月に公開されることが決定し、ティザービジュアルが解禁された。

原作は、出版当時あまりに強烈な設定から「映像化、絶対不可能!」と話題を呼んだ久坂部羊の同名小説。外務省医務官を経て在宅訪問医として終末医療の最前線に立ち続けてきた著者の経験から生まれた物語で、超高齢社会に突入した今の日本社会と地続きのテーマを孕み、半歩先の未来を想起させるヒューマンサスペンスが描かれる。

主演を務める染谷将太は映画『ヒミズ』で第68回ヴェネツィア国際映画祭のマルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人俳優賞)を受賞したほか、今年も『爆弾』『新解釈・幕末伝』『イクサガミ』やNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』など話題作に続けて出演。本作では、理想を追い求めるあまり合理性と狂気の危うい狭間へと踏み込んでいく主人公の医師・漆原糾役を演じる。そして監督と脚本を務めるのは、諏訪敦彦に師事し塚本晋也作品での現場経験を経て世界で注目を集めてきた𠮷田光希。本映画はそんな𠮷田が学生時代に原作と出会って衝撃を受けて以来20年にわたり温め続けてきた渾身の企画となる。

物語の舞台は、とある町のデイケア「異人坂クリニック」。そこでは漆原院長(染谷将太)が考案した「廃用身」(麻痺などにより、回復見込みがない手足のこと)を切断するという“画期的な”治療が密かに広まっており「身体も心も軽くなった」「厳しい性格が柔らかくなった」などの予想外の“好ましい副作用”が現れたという。噂を聞きつけた編集者・矢倉が漆原に本の出版を持ちかけるが、やがてデイケアに関する内部告発が週刊誌に流出。さらに患者宅で起きた衝撃の事件をきっかけに、すべてが暗転していく。

解禁されたティザービジュアルは、森に囲まれた芝生の上で車椅子の老人たちが輪になり風船遊びをする光景を俯瞰で捉えた一枚。手前には偶然カメラの前を横切ったかのような蝶がブレた姿で大きく映り込み、遠近感のズレが穏やかな風景に微かなめまいを与える。そして「この楽園は異常ですか?」というキャッチコピーに導かれるように細部へ目を凝らすと、人物の表情はぼかされ手足を欠いた老人の姿や意図的に画数を欠いたタイトルロゴが確認できる。さらに「<画期的な>デイケアを行う『異人坂クリニック』。“身体のリストラ”をされた老人たちは、今日も元気に笑っている」と記されたボディコピーには穏やかな光景の裏に潜む異質さや淡々とした不気味さが漂い、ここで“何かが起こる”ことを予感させるビジュアルとなっている。

コメント一覧

染谷将太(漆原糾役)
自分が𠮷田監督と出会ったのは高校生の頃でした、素敵な作品と素敵なお人柄に惚れてから長い年月が経ち、この度お話を頂いた時、驚きと喜びに溢れました。そして頂いた台本の題名が『廃用身』でした。久坂部先生の衝撃作を𠮷田監督が実写化、
もはやある種の恐怖を感じました。とんでもない作品になるなと。
それと同時に漆原糺という主人公を演じる恐怖にも襲われました。
正義と悪は曖昧なものだという事は様々な作品で語られてきました。しかしこのような切り口から描かれ、世に投げかける作品は無かったのではないでしょうか?社会的な意味も大いに含むこの作品を映画芸術として𠮷田監督は正々堂々と描き切りました。
1人の医師の、1つの症例のような人生を、皆様に目撃して欲しいです。

𠮷田光希(監督)
原作を初めて読んだときの感触は、今も消えずに残っています。
心がどこにも置けなくなる不安と同時に、自分の未来が冷たく、正確に切り取られた気がしました。 あの読後に立ち上がった名付けがたい気配を、映画という形で問い直したい──その思いが、長いあいだ自分を突き動かしてきました。
自由な映画表現を受け止め、原作を託してくれた久坂部羊さんに、心から感謝いたします。
この作品は、誰もが自身の未来を映し出し、息を潜めて向き合わざるを得ない問いを、優しく、しかし容赦なく投げかけます。
超高齢化社会の現実に直面したとき、ひとりの医師が下す選択を、観る人の皮膚の下まで、静かに届けたいと思いました。
どうか、目を背けないでください。
ここに映るのは、誰かの母でもあり、父でもあり、
やがてあなた自身でもある、避けられない現実です。
この問いが、それぞれの場所に残ることを願っています。

久坂部羊(原作者)
まさか映画化されるとは思いませんでした。
なにしろ『廃用身』が出版されたときの宣伝文句が「映画化、絶対不可能!」でしたから。
「切って楽になれるなら切ってほしい」は、私が現場で実際に聞いた言葉です。
介護に関わる方、介護に悩む方、すべての人に、常識の枠を取っ払ってこの映画を観ていただきたいです。