公開記念舞台挨拶
日時:7月12日(土)
場所:シネスイッチ銀座
登壇:鹿賀丈史、常盤貴子、宮本亞門監督
企画・脚本・監督を務める宮本亞門は30年ぶりにメガホンをとった本作。実際に現地での声がきっかけになっていることを語り、「この作品が、皆さんが「生きがい」を見つめ、心にそっと寄り添えますように。」と本作に込められた願いに近い思いを明かしている。
ショートフィルム『生きがい IKIGAI』と併映されるのは、映画の撮影のメイキングをきっかけに訪れた能登で、人々の声を収めるうちにドキュメンタリー作品として生まれた『能登の声 The Voice of NOTO』(監督・編集:手塚旬⼦)。フィクションとノンフィクションを同時に体感することで、二度の災害に苦しむ【能登の今】を知り、想いを馳せることが、【能登の未来】への一歩に繋がってほしい・・・願いから生まれたプロジェクトです。
宮本は、能登半島地震の後、現地でボランティアとして物資を運ぶ活動に参加していた際、地元の方から「あなたのような立場の人には、現地の状況を伝えて、能登が忘れられないようにしてほしい」と声をかけられたことを振り返りました。当初は「報道でも映画でも、自分にはできない」と思い東京に戻ったものの、その数週間後に土砂災害が発生。現地の姿を伝えることの大切さを改めて感じ、映画制作に向けて動き出すことを決意したといいます。友人であるプロデューサーに相談し、困難もあった中で「ありのままの風景を記録し、人々の生き方を共に考えたい」という想いから、本作の製作が始まりました。
作品はすべて実際の被災地で撮影され、セットは使われていません。撮影中、スタッフは安全確保のためヘルメットを着用して臨みました。主演の鹿賀さんは、「全壊した家屋の前で演じるという、通常の映画とは異なる環境の中で、細かい演技よりも気持ちを大切にすることを意識しました。これまでで最もセリフの少ない作品でした」と当時の様子を語っています。
本作は、6月20日から石川県内で先行公開されており、宮本のもとにはすでに観客からの反響も届いているとのことです。「“おかげでまだ頑張れます”というお手紙をいただいたときには胸が熱くなり、映画を作って本当によかったと感じました」と語りました。
石川県出身の俳優・鹿賀さんは、「昨年の元日に大きな地震が起きた際、石川県に住むいとこに電話をかけました。海抜2メートルの場所に住んでいるため心配だったのですが、明るい声で『大丈夫』と言われて安心しました。長く石川を離れていますが、天気予報などで石川の天気が気になったり、自分の中に“石川県出身”という意識がしっかりと残っているのだと実感しました」と、故郷・石川への思いを語りました。そうした気持ちから、宮本監督が能登の現状を映し出そうとする本作への出演を決めたといいます。
また、能登で行われた先行上映会でのエピソードも披露し、「ご覧になった方が『号泣した』と話されていました。災害からの復興を描いた山本の姿に心を動かされたのではないかと思います」とコメント。撮影中の印象については、「全壊した家の前での撮影という特別な環境で、細かな演技よりも、気持ちを込めて演じることを大切にしました。これまでで一番セリフの少ない映画だったかもしれません」と、ユーモアも交えて振り返りました。
一方、女優の常盤は、2015年のNHK連続テレビ小説『まれ』の撮影で能登を訪れたことがきっかけで、現地とのつながりが生まれたと語ります。「元日の地震の後、3月に『まれ』で出会った方と一緒に能登を訪れました。その後も何度か足を運びましたが、この作品のお話をいただいた頃には、能登の方々も少しずつ“生きがい”を求め始めていたように感じました。そうした時期に映画の撮影が行われることが、地域の方々にとって希望につながるのではないかと思い、出演を決めました」と、当時の心境を明かしました。
また、映画を通じて社会に問題提起をすることの意義については、2017年の『花筐/HANAGATAMI』でともに作品を手がけた大林宣彦監督から多くを学んだと話し、「大林監督との出会いは、私にとって映画人生の転機でした。監督は“映画は記憶装置である”という考えを教えてくれました。今回も、能登の姿を映画という記憶装置に収め、多くの方に想いをつないでいけたらと感じています」と語り、映画を通して被災地を記録する意義について、熱意を込めて客席に伝えていました。
舞台挨拶の最後の挨拶で、常盤は「この作品を初めて観たとき、“能登魂”が描かれていると感じました。能登の方々の強さやたくましさがしっかりと表現されていて、それを宮本監督が丁寧に映像にしてくださったと思います」と語り、作品への思いを込めながら、「ぜひ多くの方にご覧いただきたいです」と観客に呼びかけました。
宮本は、「この映画を通して、ぜひ能登に足を運んでいただきたいですし、震災はどこででも突然起こりうるものだということも感じてほしいです。“家が無くなる”“未来が無くなる”という状況の中で、人はどう生きていくのかというテーマを込めました。また、年齢を重ねた人々がどれほど魅力的であるか、日本本来の素晴らしさを改めて思い出していただけたら」と、作品に込めた想いを語りました。
鹿賀は、「能登の珠洲という地域は、道が一本しか通っていない場所で、復興が思うように進まない現状があります。この映画をきっかけに、そうした地域にも少しでも支援の手が届くようになればという願いを込めました」と語り、「久しぶりに心に残る、素晴らしい作品に参加できたことをとても嬉しく思っています。ぜひ皆さんからも周囲の方々へこの映画を広めていただけたら」と呼びかけました。会場はその言葉に温かい拍手で包まれました。
■公開情報
『生きがい IKIGAI』
6月20日(金)より、ユナイテッド・シネマ金沢、イオンシネマ金沢、イオンシネマ白山、シネマサンシャインかほくにて先行公開
7月11日(金)より、東京シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
出演:鹿賀丈史、根岸季衣、小林虎之介、津田寛治、常盤貴子
脚本・監督・企画:宮本亞門
制作プロダクション:ザフール
企画協力・配給:スールキートス
配給協力:フリック
特別協力:輪島市
©︎「生きがい/能登の声」フィルムパートナーズ
公式サイト:https://ikigai-movie.com
公式X(旧Twitter):https://x.com/ikigai_movie