テンビート映画祭 2025プロジェクト発表 記者会見概要
◯タイトル:ラテンビート映画祭2025 プロジェクト発表記者会見ースペインと日本、舞台芸術が紡ぐ未来ー
◯日程:2025年7月8日(火)
◯会場:駐日スペイン大使館(東京都港区六本木1丁目3-29)
◯ステージ登壇者(敬称略):
・坂東 玉三郎(歌舞伎俳優)
・イグナシオ・ガルシア=ベレンゲル・ライタ(マドリード王立劇場 ジェネラルマネージャー/CEO)
・ミゲル・ゴメス・デ・アランダ(駐日スペイン大使館臨時代理大使)
・アルベルト・カレロ・ルゴ(ラテンビート映画祭 プロデューサー)
ラテンビート映画祭は、長年にわたりスペイン語圏の映像文化を日本に紹介し続けてきた歩みの中で築かれた国際的なネットワークと信頼関係をもとに、スペインを代表する歌劇場「マドリード王立劇場(テアトロ・レアル)」との特別な文化交流プロジェクトを実現する運びとなった。本記者会見では、同劇場で上演された珠玉のオペラ作品を、日本で初めてスクリーン上映として紹介すること、さらに、日本の伝統芸能である歌舞伎を映像化した「シネマ歌舞伎」が、2026年にスペインで正式上映されることを発表した。映画と舞台芸術を架け橋に、スペインと日本――それぞれの国が誇る芸術文化を相互に紹介しあうこのプロジェクトは、まさにラテンビート映画祭の理念と挑戦の積み重ねから生まれた、未来へとつながる文化交流の新たな一歩となるものだ。特別ゲストとして歌舞伎俳優・坂東玉三郎氏を迎え、マドリード王立劇場ジェネラルマネージャーのイグナシオ・ガルシア=ベレンゲル・ライタと共に、本企画の意義と展望について発表した。
冒頭、挨拶に立ったミゲル・ゴメス・デ・アランダ駐日スペイン大使館臨時代理大使は、玉三郎さんをはじめとするシネマ歌舞伎の関係者、およびマドリード王立劇場、ラテンビート映画祭の関係者ら来賓への感謝を口にし、今回のプロジェクトについて「東洋と西洋が一緒になって、オペラと歌舞伎という伝統的な芸術を推進していこうというプロジェクトであり、TOHOシネマズさまのご協力を得て、スペインの王立劇場で開催してきたオペラを日本の映画館のスクリーンで上映させていただけることになりました。他方で、日本の素晴らしい伝統的な歌舞伎の美学を、映像を通してスペインにお届けいただくこととなりました。世界的に名声を得ているオペラ、そして、ユネスコ無形文化遺産に登録されている日本の伝統芸能である歌舞伎が、今回のプロジェクトを通して皆さんにお披露目できるというのは本当に素晴らしいことだと思います。各国の芸術の双方向による文化的交流というのは非常に素晴らしいものです。さまざまな国、そして全く異なる文化をつないでいく、紡いでいくことができる、こうした文化的な貴重で希少な経験をぜひ皆様にご堪能していただければと思っております」とその意義を強調した。
続いて、壇上に立ったラテンビート映画祭のプロデューサーを務めるアルベルト・カレロ・ルゴは、改めてラテンビート映画祭のここまでの歩みを紹介。当初、バスク地方の映画を紹介するための試みであったが、回数を重ねる中でスペインにとどまらず、中南米を含めたスペイン語圏の映画作品をも扱うようになり、年を経るごとに扱うジャンル、そして映画祭の規模を拡大させてきたと語る。そして改めて「今年2025年は我々にとってさらなる躍進の年となります」と語り、日本の映画館のスクリーンで初めてマドリード王立劇場の作品が上映されることへの喜びを口にした。
カレロ・ルゴの紹介で壇上に上がったマドリード王立劇場のジェネラルマネージャー/CEOのイグナシオ・ガルシア=ベレンゲル・ライタ氏は、同劇場がフェルディナンド7世の治世の1818年に建設されて以来、約200年にわたる活動の中で「世界有数の劇場としての地位を確立しております」と語り、オペラのみならず、コンサート、クラシックバレエなど多彩なジャンルを網羅していることに加えて、オーディオビジュアルの分野でも国際的な活動を行なっていると強調。「またアメリカ全土、ヨーロッパの各都市、そして日本の新国立劇場など各国での共同プロジェクトも積極的に推進しており、これまで様々なコラボレーションを実現してきました」と語る。
また、上演作品のアーカイヴにも尽力してきたとのことで、これまで300を超える作品が映像として所蔵されており「こうしたオーディオビジュアル分野にも私たちが力を入れているということで、アルベルトさんとお話をして、ラテンビート映画祭とのコラボレーションが実現することになりました」と今回の日本の映画館での上映実現の経緯を説明する。
さらに、近年ではフラメンコの分野にも力を入れており、“オーセンティック・フラメンコ”として数々の海外公演を敢行。開催中の万博(EXPO 2025 大阪・関西万博)においても公演を行なっており「1日3公演ほどを実施していますので、皆様、ぜひ万博開催中にスペインのパビリオンにいらして堪能いただければと思います」と呼びかけた。
今回の日本での「マドリード王立劇場 シネマ・ステージ」では、報われない愛を描いたチャイコフスキーの傑作『エフゲニ・オネーギン』と実在した女優アドリアーナ・ルクヴルールの華麗で苛烈な愛と人生を描いた悲劇『アドリアーナ・ルクヴルール』の2作品が上映されるがイグナシオ・ガルシア=ベレンゲル・ライタ氏は「『オネーギン』ではドイツ人の演出家クリストフ・ロイが演出を、グスターボ・ヒメノが音楽監督を務める。『アドリアーナ・ルクヴルール』では英国出身の演出家(デイヴィッド・マクヴィカー)の下、世界的な名声を誇るニコラ・ルイゾッティが音楽監督を務め、皆様にお届けいたします」と語った。
そして、本日のスペシャルゲストである玉三郎さんが大きな拍手に迎えられて登壇。2026年にシネマ歌舞伎がスペインで上映されることへの感想を求められた玉三郎さんは「感想というよりも、嬉しいですね」とほほ笑む。『鷺娘』、『京鹿子娘二人道成寺』などの作品が上映されることになるが、玉三郎さんは「約20年ほど前からシネマ歌舞伎というものが収録され始めましたが、はじめの頃は実演を映像にして皆さんに見ていただくことに気乗りがせず、賛成できなかったんですけど、いまとなってはこうして王立劇場や、僕が行けないところでも上映されることになり大変喜ばしく思っております」と感慨深げに語る。
さらに玉三郎さんは「王立劇場やオペラハウスで、作品が映像化されるにあたって、素晴らしいディレクターによって映像化がされていることを羨ましく思い憧れていました」と本音を吐露。「なんとなく始まってしまったシネマ歌舞伎だったので、映像的な質の高さというものが、最初は求められなかったんです。オペラであればアリアや視覚的な美しさもありますが、(歌舞伎は)芝居であるので、繊細なカット割も必要になってきました。なので、きちんとしたポストプロダクション、いわゆる“仕上げ”が大事だと考えてきたので、ほとんどの作品で自分が編集に携わってきました」と明かし「世界の人たちが喜んで観てくださるかまだ分かりませんが、こうしてマドリードの王立劇場で上映されることが本当に嬉しく、皆様が楽しんでくださって、未来につながることを望んでおります」と思いを語った。
ちなみに、玉三郎さんはオペラ作品への造詣も深く「僕が観始めたのは1970年代で、本当に素晴らしい演出家、豪華な舞台装置、素晴らしいソリストがいる時代だったので、日本に来たものほとんど観ましたし海外に行っても観ました」とのこと。今回の日本とスペインの伝統的な舞台芸術を通しての文化交流の意義について「その意味というのは、これから出てくると思います。とにかく互いの作品を見ることが大事だと思っています」と語り「ここから交流が深まっていくと思います。王立劇場が招いてくれるなんてありえないと思っていたので本当に嬉しく思っています」と改めて喜びと感謝の思いを口にした。
1957年に初舞台を踏む。1964年に十四代目守田勘弥の養子となり、歌舞伎座「心中刃は氷の朔日」のおたまほかで五代目坂東玉三郎を襲名。桜姫のほか、「助六由縁江戸桜」の揚巻、「伽羅先代萩」の政岡、「壇浦兜軍記」の阿古屋など当り役は多い。2012年、重要無形文化財(人間国宝)に認定。2013年仏芸術文化勲章最高賞コマンドゥール章受章、2014年紫綬褒章、2016年日本芸術院賞・恩賜賞、2019年高松宮殿下記念世界文化賞を受賞、文化功労者に選出。

ラテンビート映画祭公式サイト:https://lbff.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/LatinBeatFilmFestival?locale=ja_JP
X(旧:Twitter):https://twitter.com/LATINBEAT_FF