映画『TSUSHIMA』ポスタービジュアル
2023年JIFF(Japan Indies Film Festival/英国レインダンス映画祭ジャパン)にて観客賞を受賞した異色SFサスペンス映画『TSUSHIMA』が、9月5日より公開されることが決定。予告編、ポスタービジュアル、新場面写真20点が解禁された。


本作は、AIと再生医療が結びついて起こり得る問題に、独自目線で切り込んだ意欲作。2023年当時、世の中のAIに対する認識は浅く、多くの人々は漠然とした違和感を抱くものの、具体的に何が起きようとしているのかまったく分からない状況だった。そんな中、医工学研究者であり記者・ディレクターであった山根高文監督が、AIと再生医療技術が結びついた時、女性の社会進出(政治)、美と若さへの欲求、妊娠出産、認知症と介護という分野で起き得る事態に焦点を当て、映画『TSUSHIMA』を生み出した。
この先進的で独自性に富んだ視点が高い評価を受け、英国映画アカデミー公認の、英国最大のインデペンデント映画祭・レインダンス映画祭の姉妹映画祭JIFF(Japan Indies Film Festival)において観客賞を受賞。そして英国レインダンス映画祭でオフプログラム上映、宮古島チャリティー国際映画祭で観客賞を受賞、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭での招待上映へと広がっていった。
1990年代。神宿る島、長崎県の離島・対馬で選挙活動を始めた佐藤由里子。新聞記者の田島圭介は、由里子を追って訪れた対馬で恐ろしい光景を目にする。カギとなるのは「緑の物質」。時は1960年代に遡(さかのぼ)り、なぜかこの時代に一人で生きる由里子の姿が。巷で若い女性の無残な遺体が次々に見つかるが、被害者はみんな若返りの薬として「緑の物質」を服用していた。張本人は、AIの導きに盲従するだけの「自ら考えない」人類だった。
AIが密かに人間社会に忍び込み、あたかも神のようにコントロールしようとしていることに気づく田島。時が過ぎ、認知症が進んだ80代の由里子。家族となった田島に、医師はAIを利用した新しい治療法を勧める。「緑色」の治療薬を目にしたとき、田島の頭に昔の記憶がよみがえる――。
主人公の田島圭介役を山田純大、ヒロインの佐藤由里子役を中西悠綺が演じる。そのほか、由里子を傍で支える姉・佳織役に二宮芽生。由里子に寄り添う小向絵里役には浜浦彩乃。由里子の元夫・小林修二役にケニー大倉。事件を解明していく土志田教授役に星田英利(ほっしゃん。)。さらに、圭介の70代を勝野洋が演じ、作詞家の売野雅勇が謎の研究者・平野役を務める。
メガホンをとった山根高文監督は、大学院で医工学を研究。テレビ朝日では報道記者として、政治部で総理官邸や自民党などを担当、政府与党訪朝団に同行し北朝鮮を取材した。社会部では日本初の臓器移植、介護保険導入などのほか、三宅島の噴火で現地災害、雅子皇后(当時妃殿下)の出産などを取材。その後早朝の情報番組で番組ディレクターを長年務めた。また、国政選挙を15年以上にわたり取材。2022年テレビ朝日を退社。取材経験や自らの研究を元に執筆した原作をストーリー化し、映画初監督となる『TSUSHIMA』を完成させた。この監督自身の経歴が、独自の視点で描いたこの異色作を生み出す原動力となった。
テーマソングは、80年代にアイドル歌手として一世を風靡し、その後アーティストに転身した河合奈保子が、自ら作詞作曲を手掛けたバラード曲「Wings Of My Heart」。人を愛する気持ち、人にとってもっとも大切なものは何かを、素直にそしてストレートに伝える隠れた名曲だ。
CG製作を担当したのは、米ロサンゼルス在住で「スタートレック」などハリウッド映画を手掛けるCGデザイナー、佐野和信。シリンダーの中で人体実験の材料となった女性たちなど、実写とCGを巧みに融合した映像を作り上げた。
劇中に登場する謎の「緑色の物質」は、若さや美へ導く麻薬のようなものとして登場。AIにつけ込まれそれに飛びついた女性たちは、ゾンビのような醜い姿になってしまう。本作では1人のゾンビメイクを仕上げるのに1時間以上を要するなど、細部に強くこだわった。
予告編には、神宿る島・対馬にやってきた田島圭介が、取材を進める姿やおそろしい光景を目撃してしまう様子、多彩な登場人物たちの姿などが、河合奈保子のテーマソング「Wings Of My Heart」と共に映し出されている。
ポスタービジュアルは、「AIと、どう向き合う?」というコピーと共に、主人公の田島やヒロインの由里子をはじめとするキャラクター陣が配置された。
なお本作は、8月21日に新宿ピカデリーで完成披露上映会を開催する予定。
映画『TSUSHIMA』は、9月5日より代官山シアターギルドほかにて全国順次公開。
※主演の山田純大、山根高文監督のコメント全文は以下の通り。
<コメント全文>
■山田純大(田島圭介役)
「TSUSHIMA」では山根監督から、取材対象の話しを淡々と聞き、悩み、戸惑い、冷静に分析し、記事にする事が「本来の新聞記者の姿」であるため、その姿勢を持って記者を演じてもらいたいとのお話がありました。しかし想像を遥かに超えた現象を目撃してしまう記者の田島は、果たして正気を保ち、淡々と取材を続けていくことが出来るのだろうか。
対馬の美しい景色の中で繰り広げられる不思議な物語。そして翻弄されていく人々の姿。この物語を通して、自から考える事の大切さを感じていただけたらと思います。
■山根高文(監督・脚本・編集)
作品の最後の場面を描きながら、老いて弱くなっていく親を前に、科学技術の力で元に戻すことができるのではないかと思うことがありました。人類共通の夢・欲望でもある不老不死は、再生医療とAIが結びついて現実のものとなりつつあります。しかし、死の恐怖がなくなったとき、人は大きな何かを失うのではないかと感じてしまいます。弱くなっていく人を前にするからこそ、その人を慈しむ心が生まれます。慈しむからこそ愛情が深まります。慈しむ心を失うと、人は人でなくなってしまうのではないか。
AIは人智の及ばない速さで発展し、人の心はそれに追いついていません。今一度立ち止まって考える、この映画がそんなきっかけになればと思います。