公開記念舞台挨拶
日程:7月11日(金)
会場:東宝スクリーン1
登壇:三谷幸喜、田中圭、小池栄子、宮澤エマ、梶原善、松山ケンイチ
物語の主人公は、太宰治を敬愛するごく普通の男性・小室健作(田中)。彼が太宰治(松山ケンイチ)の恋人・トミ子(小池栄子)に一目惚れしたことをきっかけに、心中を止めようと奮闘するという、タイムスリップを取り入れたコメディです。
本作の監督・脚本を務めた三谷幸喜氏は、「昨年の秋に撮影した時点では、まさか映画になるとは思っていなかったので、こうして映画館で上映されるのは不思議な感覚です」と率直な思いを語っています。そのうえで、「劇場という場で作品を観ていただけるのはとても嬉しいこと。集中力も高まりますし、観客全員で笑いを共有できるという意味でも、映画館での上映にふさわしい作品だと感じています」と、映画としての魅力に自信をのぞかせました。
田中は撮影を振り返り、「スタジオでの台本読みやリハーサルとは違い、実際のロケ地では潮位や天候によって状況が日々変わり、撮影場所も微妙にずれることがありました。そうした中でも集中を切らさないよう意識して臨みました」と語っています。また、真夏の海辺での撮影ということもあり、「とにかく汗が噴き出した」とも話していました。
共演の小池も「汗が尋常じゃなかった」と苦笑い。これに対し三谷監督は「それなら汗がかかるような仕掛けを作ればよかった」と冗談を交え、現場の和やかな雰囲気が伝わる一幕もありました。
主演として作品を引っ張る立場にあった田中は、「自分が主軸なので、できるだけ感情の起伏を抑えてフラットに演じることを心がけた」と真摯な姿勢を見せました。
また、三谷監督は撮影時のエピソードとして、「本当はカメラマンのすぐ後ろで様子を見たかったのですが、自分が映り込んでしまう可能性があるため、浜辺の奥にある森の中の小屋に待機していました。電波も届かず、音だけを頼りに様子をうかがっていました」と語りました。過去にはシリーズ第1作でカメラに映り込んでしまった経験もあり、共演者の梶原から「その時のこと、覚えてますか?」と話を振られると、「40分ほど経ったところで映ってしまい、中井貴一さんにすごく叱られました」と、当時の苦い思い出を笑い交じりに明かしています。
この作品は、1日1テイクという形式で6日間にわたり撮影されました。宮澤は「毎日の撮影後、皆で映像を一緒に見返していました。自分の演技を客観的に確認する機会はあまりないので、非常に貴重な時間でした。『もっと強く出してもいいかな』『少し抑えたほうがいいかな』といった微調整ができました」と、作品づくりにおける丁寧なプロセスを振り返ります。
また、1人3役を演じた梶原は、早着替えの大変さを明かしつつも、「実際に完成した映像を見てみると、そんな苦労はまったく見えなかった。それがまた良かったですね」と、作品の仕上がりに満足げな様子を見せていました。
太宰治と同じ青森県出身の松山ケンイチは、今回の役作りについて「東京での生活が長くなり、すっかり“シティボーイ”になってしまったので、地元のRAB(青森放送)の内山千早アナウンサーにお願いして、青森駅近くの喫茶店で方言の練習を重ねました」と振り返ります。「もともと自分が話すのは津軽弁ではなく下北弁で、今回は津軽弁と下北弁が混ざったような話し方になっています」と、方言の細かな違いにも触れ、役作りへのこだわりをうかがわせました。
これについて三谷幸喜監督は、「脚本は標準語で書かれていましたが、松山さんの提案で方言を取り入れることになりました。青森弁で太宰治を演じるのはこれまでになかったことだと思いますし、とても新鮮で印象的な挑戦だったと思います」と語りました。
また、「もし他の役を演じるとしたら?」という質問に対して、小池栄子は「チャレンジするならエマの役(美代子)かな」と回答。田中は「どの役も大変そうなので、できれば遠慮したいです」と率直な思いを明かしました。特に梶原が映り込まないように移動タイミングを計る場面を見ていたことから、「タイミングの調整などを考えると、自分には難しいと感じました」と語りました。さらに「圭さん(田中)とエマの夫婦関係は、物語の冒頭と後半で大きく変化していて、その演じ分けが本当に素晴らしかった。もともと彼女(宮澤美保)のお芝居のファンでしたが、今回改めて“やっぱり素敵な女優さんだな”と実感しました」と称賛の言葉を贈りました。コメントのあとには、2人がハグを交わす和やかな場面も見られました。
イベントの最後には、三谷監督が「劇場版では、本編のあとに“もうひとつのエンディング”が特別企画として上映されます。実はこれが当初のエンディングだったのですが、編集作業を進めるうちに新たに考えたものが実際の結末として採用されました」と明かし、「これから始まる100分間、ぜひ皆さんも浜辺にいるかのような臨場感を楽しんでください」と来場者に語りかけて、イベントを締めくくりました。
物語
小室健作(田中圭)は太宰治を敬愛する平凡な男。
妻の美代子(宮澤エマ)と出席した結婚披露宴の帰り道、偶然太宰が心中未遂を起こした海辺に迷い込む。太宰ゆかりの地に興奮した健作は暗い洞窟を進んでいく。その先に現われたのは太宰治(松山ケンイチ)と恋人のトミ子(小池栄子)。タイムスリップしてしまった健作はトミ子に一目惚れをする。しかし、史実では2人はもうすぐ心中してしまう。トミ子を助けたい健作は奔走する!脚本・監督:三谷幸喜
出演:田中圭・小池栄子・宮澤エマ・梶原善・松山ケンイチ撮影:山本英夫
録音:瀬川徹夫
美術:坪井一春
衣裳統括:宇都宮いく子
音楽:荻野清子 VFXスーパーバイザー:田中貴志 カラーグレーダー:齋藤精二
音響効果 :倉橋静男 スクリプター:山縣有希子 助監督:是安祐 制作担当:斉藤大和
企画:徳田雄久 アソシエイトプロデューサー:大瀧亮 配給統括:鈴木一成
プロデューサー:山田雅樹 村松亜樹 石塚紘太 森賢正
制作協力 :エピスコープ
製作著作 : WOWOW
配給: WOWOW
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